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[挿話] 前途多難な恋
第三話 再びのダンジョン開発推進機構
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「ADDR(アメリカダンジョン開発機構)から出向して来た秋元です。宜しくお願いします」
ダンジョン開発推進機構ダンジョン開発部の部屋に入って来た、東京事務局長中林ツグムの横にいる、ひょろりとした眼鏡の男はそう挨拶をした。
その言葉に、開発部スタッフの何人かは口をあんぐりと開け、瓜生武にいたっては、わなわなとその体を震わせて言った。
「秋元!! お前は自衛隊に入ったんじゃなかったのか!!」
その言葉に、秋元恭史郎はニコニコと笑いながらこう言った。
「いやだなぁ、自衛隊に入隊するには国籍条項があることを知らないんですか。僕は、アメリカ国籍なんで、自衛隊員にはなれないんですよ。アドバイザーだったんです」
「屁理屈言うな!! 自衛隊の官舎に入って、自衛隊の勇者と一緒に活動していたのに、どういう風の吹き回しだ」
「まぁ、色々とあったんですよ。僕としては古巣のこのダン開の方が居心地がいいんで、宜しくお願いします」
「というわけで、また秋元君がダン開スタッフに加わることになった」
「中林事務局長も、何すんなり受け入れているんですか。自衛隊にはちゃんと礼を尽くして別れたんだろうな。そうしないと、ダン開があんたを引き抜いたことになって揉めるぞ」
それに一瞬、秋元は目を彷徨わせていた。そのことを、瓜生は見逃さなかった。
「おいおいおい、マジかよ。秋元」
「大丈夫、ただのアドバイザーだったから。うん、大丈夫」
「秋元おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
秋元の肩を掴んで、瓜生はグラグラと揺らしていたが、秋元は「大丈夫」「きっと大丈夫」「たぶん大丈夫」と言葉を連ねるだけで、信用ならなかった。
*
そしてその頃の、自衛隊基地の、ダンジョンモンスター討伐チームのメンバー達の待機する部屋の中は、まるでお通夜のような静けさであった。
椅子に座っている副隊長の佐久間柚彦は無表情である。一切の感情を浮かべていないのが、その不機嫌さを表していると言える。隊長である柳良太隊長は我関せずという様子で、デスクについて書類を読み耽っている。
室内のメンバー達は、内心(え、どうしたの。先日まであんなに機嫌が良かった副隊長が)と首を傾げている。ただ、その不機嫌さの原因については、皆、察していた。あれほど慕っていたアドバイザーの秋元恭史郎が突然、そのアドバイザーを辞任して、官舎の部屋から出ていってしまったからだ。辞任の手紙は、柳隊長の机に置かれていて、それには隊長も驚きを見せて、副隊長の柚彦に質問していた。
柚彦は、能面のように表情のない顔で答えていた。
「その手紙の文面通りです」とだけであった。
その言葉の冷ややかさに、部屋にいた者達は内心、震えあがっていた。
ダンジョン開発推進機構ダンジョン開発部の部屋に入って来た、東京事務局長中林ツグムの横にいる、ひょろりとした眼鏡の男はそう挨拶をした。
その言葉に、開発部スタッフの何人かは口をあんぐりと開け、瓜生武にいたっては、わなわなとその体を震わせて言った。
「秋元!! お前は自衛隊に入ったんじゃなかったのか!!」
その言葉に、秋元恭史郎はニコニコと笑いながらこう言った。
「いやだなぁ、自衛隊に入隊するには国籍条項があることを知らないんですか。僕は、アメリカ国籍なんで、自衛隊員にはなれないんですよ。アドバイザーだったんです」
「屁理屈言うな!! 自衛隊の官舎に入って、自衛隊の勇者と一緒に活動していたのに、どういう風の吹き回しだ」
「まぁ、色々とあったんですよ。僕としては古巣のこのダン開の方が居心地がいいんで、宜しくお願いします」
「というわけで、また秋元君がダン開スタッフに加わることになった」
「中林事務局長も、何すんなり受け入れているんですか。自衛隊にはちゃんと礼を尽くして別れたんだろうな。そうしないと、ダン開があんたを引き抜いたことになって揉めるぞ」
それに一瞬、秋元は目を彷徨わせていた。そのことを、瓜生は見逃さなかった。
「おいおいおい、マジかよ。秋元」
「大丈夫、ただのアドバイザーだったから。うん、大丈夫」
「秋元おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
秋元の肩を掴んで、瓜生はグラグラと揺らしていたが、秋元は「大丈夫」「きっと大丈夫」「たぶん大丈夫」と言葉を連ねるだけで、信用ならなかった。
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そしてその頃の、自衛隊基地の、ダンジョンモンスター討伐チームのメンバー達の待機する部屋の中は、まるでお通夜のような静けさであった。
椅子に座っている副隊長の佐久間柚彦は無表情である。一切の感情を浮かべていないのが、その不機嫌さを表していると言える。隊長である柳良太隊長は我関せずという様子で、デスクについて書類を読み耽っている。
室内のメンバー達は、内心(え、どうしたの。先日まであんなに機嫌が良かった副隊長が)と首を傾げている。ただ、その不機嫌さの原因については、皆、察していた。あれほど慕っていたアドバイザーの秋元恭史郎が突然、そのアドバイザーを辞任して、官舎の部屋から出ていってしまったからだ。辞任の手紙は、柳隊長の机に置かれていて、それには隊長も驚きを見せて、副隊長の柚彦に質問していた。
柚彦は、能面のように表情のない顔で答えていた。
「その手紙の文面通りです」とだけであった。
その言葉の冷ややかさに、部屋にいた者達は内心、震えあがっていた。
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