俺の大好きな聖女ちゃんが腐女子で、現世まで追いかけてきた竜騎士とくっつけようと画策しているらしい

曙なつき

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第三章 現世ダンジョン編 ~もう一人の勇者~

第十七話 竜族の番の徴(下)

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 秋元の説明が続く。

「竜族はね、番に自分の体液を注ぎ続けて、相手も“竜人化”させるんだ。でないと、番と寿命が釣り合わなくて悲惨なことになるからね。彼らにとって、“蜜月”はとても重要なことだ」

 体液と露骨に言われ、麗子は真っ赤になっている。
 光はそれどころではなく、自分の肩の鱗を触ったりしていた。

 秋元の説明はまだ続く。

「だから、ゼノン君は光君と“蜜月”でセックスを続けていたことにも意味があるんだ。君を自分の寿命と釣り合う“竜人”にしないといけなかったからね。どれくらいしてたの?」

「……三週間」

 光がぼそりと言うと、秋元はうんうんとうなずいた。

「それなら、大丈夫かな。ゼノン君のことだから、きっと朝から晩までしていたんだよね。たぶん君の“竜人化”も終わっていると思う」

 朝から晩までしているとか……
 ぶるぶると麗子は顔を真っ赤にさせて震えていた。

「その“竜人化”するとどういうことになるの」

 光が尋ねると、秋元が答えた。

「まず、寿命が延びる。君の寿命はゼノン君と並ぶようになるだろう。人と違って竜族の寿命は長い。エルフ並と言われている」

「……そうなんだ」

「たぶん、君は勇者としてのスペックも高いから、竜化もできる可能性がある。そうすると、君の今のステータスは上限までいっていたはずだけど、竜化によってその上限も突破するだろう」

 ますます、光君が人間離れした存在になるということですね。
 麗子は乾いた笑いを浮かべた。
 そもそも、光君は勇者として人間以上の力を持っていたけど、その上限突破って。
 ちょっとおかしい。
 いや、もう人間じゃないということなのか?

「詳しいことは、ゼノン君から聞くといい。君がゼノン君の番であるように、ゼノン君は君の番になる。君は竜人化してまだ少しだから、番の価値がわかっていないようだけど、そのうちわかるだろう。竜族にとって番は絶対だ」

 その言葉に、かつてゼノンが光に言った言葉を思い出した。




『僕にとって、番である光は特別な存在なんだよ。たとえ、光が僕を嫌いになっても、僕は光のことが何よりも大切で、愛し続けると思う』

『君とずっと一緒にいられて、僕は嬉しいし、すごく幸せだと思う。君を愛しているから』


 そう真っ直ぐ、彼は光に告げたのだ。
 その時は気恥ずかしくてたまらない言葉が、今は胸を貫く。




 光は思い出して、顔を赤く染め、片方の手で顔を覆った。

「あー……そうなるのか。あいつも俺の番という認識になるのか」

「そうだよ」

 秋元はどこか視線を和らげて言った。

「君達は幸運だと思うよ」

「どうして?」

「竜族の中には、残念なことにその生涯、自分の番に会わずに一生を終える者もいる。君達は出会えて、そして愛し合えたのだから」

「そう……なのか?」

「そうだよ。ゼノン君は番の君に夢中で、傍から見てもおかしなくらいだったけど、彼は、君をずっと求めていた。それは君もわかっているだろう?」

 こくりと光はうなずく。

「番は竜族にとって絶対だ。光君。そのうち、君にとってもゼノン君は絶対になる。それは間違いない」

 秋元の言葉に、光はしばらく考え込んでいた。
 それから迷うそぶりでこう言った。

「でも、あいつ……俺を閉じ込めようとするんだ」

「…………それはよく彼と話し合いたまえ!!」

 秋元はガシリと光の肩に手を置く。
 そのことに関しては、明確な解決策はないようだった。
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