俺の大好きな聖女ちゃんが腐女子で、現世まで追いかけてきた竜騎士とくっつけようと画策しているらしい

曙なつき

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第三章 現世ダンジョン編 ~もう一人の勇者~

第十話 六十階層階層主戦(上)

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 そして六十階層までやってきた。
 当然のように、そこには黒塗りの大きな扉が立ちはだかっていた。
 階層主の、ボス部屋である。

 ここで、一行のリーダーとして率いてきた自衛隊の板橋は、糧食を持つ後続部隊の到着を待つと告げた。
 後続部隊は、板橋ら先頭部隊のアドバイスを受け、可能な限りの速いペースで地上から降りてきている。
 地上部隊は、ダンジョンの拡張というこの異変を受けて、ダンジョンでのボスモンスター討伐を専門としているチームの投入を決めたらしい。

 秋元は内心口笛を吹いた。

(へー、自衛隊ダンジョンエリート様の投入か)

 その実力は、ダンジョン開発推進機構のSランク以上と言われている。
 自衛隊が優位にあるのは、自分達専用のダンジョンを三つも確保しているためだった。
 そこのモンスターを独占して倒すことができる。そのメリットは大きい。

(ランクアップも、そりゃガンガンできるわな。自衛隊がランクアップランキング独占しているのもよくわかるな)

 本当に強くなりたいなら、自衛隊のボスモンスター討伐チームに入った方がいいと言われているくらいであった。

「じゃあ、ボス戦は後続の人達がやってくれるんですか」

 秋元が尋ねると、板橋はうなずいた。

「はい。我々はここで合流した後、撤退になります」

(まぁ、倒してくれるなら助かるな)

 何事も他人任せな秋元である。
 
 そして翌日の夜には、彼らダンジョンの討伐専門チームと合流できたのであった。
 彼らは夜を徹して、この五十九階層まで駆け下りてきたらしい。

(何日で降りて来たんだ? ボス戦はしなくていいとしても、徹夜で降りてくるなんて相当だな)

 五時間の休憩をとった後、翌朝に大扉を開けてボス戦に挑むらしい。
 後続部隊は十人であった。
 通常の自衛隊員がまとう隊服と違うものをまとっている者が六人含まれていた。

(あれが、討伐専門チームか)

 思っていたよりも若いメンバーばかりである。
 二十代か。
 
 ダンジョンの魔素の受け入れは、若ければ若いほど良いといわれている。
 開発推進機構のSランクスタッフも二十代が多い。瓜生もそうだった。

(僕みたいなおじさんは肩身が狭いなー)




 後続でやってきた自衛隊の専門チームが、ボスを倒した後、ここまでやって来た板橋ら一行は地上へ引き返すことになっている。
 ボスを倒した後は、ダンジョン内でのモンスターの出没は緩やかになる。だからこそ、ボスモンスターが討伐された後の出発となっているのだ。
 仮に、ボスを倒した後、更に階下へ続く扉が現れた時には、その専門チームが継続して探索するという話であった。

(人海戦術でどんどん下へ行けるのはいいね)

 地上から追加で後続の自衛隊員がダンジョンへ入って行くのだろう。ダンジョン内で基地を作り、下へ下へと補給線も作られていくはずだ。

 瓜生が板橋自衛隊員と何やら交渉していた。
 
 何をやっているのだと見ていたら、瓜生は嬉しそうな顔をしてこちらへ向かってきて言った。

「秋元さん、俺とあんたは、ボス戦の扉内に入っていいってさ」

(…………)

「もちろん、自分の身は自分で守るって伝えたぜ」

「そうですか……」

 のんびり扉の前で待っていようと思っていたのだけど、仕方がなかった。
 しかし、瓜生はいわゆる“ダンジョン馬鹿”であるようだった。
 ダンジョンをこよなく愛し、ダンジョンの情報、アイテムを得るためには嬉々として危険に挑む。そういう馬鹿がいるという話は聞いていた。
 ダン開はもとより、自衛隊の中にも、そういう輩は多いんだろうと秋元は思った。

 そして、ボス戦に挑むメンバーの中には佐久間柚彦も含まれていた。
 おそらく、父親の後押しでその参加が決まったのだろうと思った。




 
 柚彦のそばに行くと、彼は少しだけ緊張している様子が見えた。

「未知のモンスターと戦うことが怖いかい」

 そう秋元が尋ねると、柚彦はうなずいた。

「ええ。でも、専門チームの人が戦うので、大丈夫です。僕は同行するけれど、戦闘に参加しなくていいと言われています」

「そうなんだ」

「ええ。だから、秋元さんと一緒に扉の前で皆さんの戦うのを見ていようと思っています。きっと勉強になると思うから」

 自衛隊のボスモンスター討伐専門チームは、チーム設立以来、死亡者が出たことがないという話だった。
 だから、部外者である柚彦や秋元らの見学は認めても、参加は認めていないのだろう。

(自信満々だね。六十階層って、一応、今の人類では、最高到達階層になるはずなのだけど。それに、雪国のダンジョンでは初めてのはずだ)

(……一応、保険をかけておくか)

 秋元はそう思うと、柚彦に、近くへ来るように声をかけ、なにやら話し合っている様子だった。
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