俺の大好きな聖女ちゃんが腐女子で、現世まで追いかけてきた竜騎士とくっつけようと画策しているらしい

曙なつき

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第二章 現世ダンジョン編 ~異世界から連れ戻された勇者は、竜騎士からの愛に戸惑う~

第九話 さいたまダンジョンへの連戦

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ホテルに戻るなり、ヒカルは封筒から札束を取り出して興奮していた。

「すっげー、たった一時間ばかりで三十九万だぜ!! 信じらんねー」

「……そうだね。でも、稼ぎ過ぎたね。目を付けられたよ、僕ら」

 僕らをじっと凝視していた、あのさいたまダンジョンの買い取りブースのスタッフのことを思い出していた。そう言うと、ヒカルは肩をすくめた。

「仕方ねーよ。大丈夫、大丈夫、ダンジョン開発推進機構の中の人が味方になっているのだから、問題にならねーよ」

「君は楽天的だね」

 僕はため息混じりでそう言った。
 前回こちらの世界にやって来た時、彼は捕らえられそうになり、麻酔銃で撃たれたことをもう忘れているのだろうか。

「今回はほら、俺、魔法の力ですぐにあっちの世界にも戻れるし、大丈夫。あっ、ゼノンは俺のそばにいろよ。お前をひっつかんであっちの世界に戻らないといけないんだから」

 その言葉に、僕は口元に微笑みを浮かべた。

「ヒカル、置いていかないでくれよ」

「当たり前だよ」

 彼の仲間としてちゃんと認識されていることが嬉しい。
 出会った頃の対応とは雲泥の差があった(出会った頃は猛烈に毛嫌いされていた)。


 

 僕らは知らなかったのだけど、さいたまダンジョン内でわずか一時間で叩き出したゴブリン討伐数は過去最高数を記録し、結果、その日の“さいたまダンジョンの一日討伐数ランキング”の一位と二位を独占することになっていた。そしてネット上では注目の二人組として噂されていたのだった。



   *


「朝、百匹倒して、午後二百匹倒すと、二日で終わるな。楽勝じゃん!!」

 DランクからCランクへの昇級条件はゴブリン五百匹の討伐だった。
 
 僕らはその日、夕食を食べた後、いつものビジネスホテルに戻っていた。もう眠る時間になっていて、寝間着に着替えて、二人して大きなダブルベットに潜る。
 秋元さんがホテルの部屋を予約していてくれたのだけど、部屋のベットを選択する時、寝台はシングルベット二つではなく、ダブルベット一つで頼んでいた。
 異世界のツリーハウスでも、僕らは一つの大きな寝台の上で一緒に眠っていた。
 異世界では、彼をだますようにして大きな寝台一つしか用意していなかったのだ。当時、彼はすごく怒って、寝台の上に境界線を張ると言い張っていた。
 けれど、一緒に暮らす中、境界線もうやむやになって、今ではよく身を寄せ合って眠っている。
 
 その状況を知った魔法使いの秋元さんは「ゼノン君の我慢強さを尊敬します……」と言っていた。
 自分でも驚くほど、我慢強いと思う。
 番の少年と同衾して、未だ手を出していないのだ。
 彼も、こうまで一緒にいても、今ではもう襲いかかることもなくなった僕のことを友として信頼していた。
 その信頼がとても嬉しくもあり、一方で、そう、一度として彼には伝えたことはないけれど、辛くもあった。

 ヒカルは僕と一緒に暮らし始めた時、僕のことを心配してこう言ったことがあった。


『お前にとって辛いことなんじゃないかと思うんだ。好きになるかわからない奴と一緒に暮らし続けるのは、お前、辛いだろう?』
 
 あの時、僕は彼にこう伝えた。

『光と一緒に暮らして、僕がそれを辛く思うことなんてことはない。むしろ、君とずっと一緒にいられて、僕は嬉しいし、すごく幸せだと思う。君を愛しているから』

 辛いことはないと、あの時は告げた。
 そう、僕は彼のことを愛しているから、今の状況はとても幸せだった。
 幸せだったけれど、辛かった。
 彼を愛しているから、彼がとても欲しいんだ。
 それを我慢しなければならないことが、辛い。そう、辛かった。

 こんなに、触れられるほど近くにいるのに、口づけることもできない。
 でも、触れられるほど近くにいられることが、嬉しかった。
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