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【短編】異世界への帰還編

勇者君とのクリスマス(中)

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 僕は急いで、光と暮らしているツリーハウスに戻った。
 彼は相変わらず、テレビの前に座り、ゲームをしていた。
 傍らの皿にはポテチが山となっており、それを摘まみつつ、コーラを飲んでいる。

 なんとなくその姿を見てホッとした。

 秋元さんが言った、光に元の世界へ戻る呪文を教えたというのは、嘘だったのではないかと思うほどだった。
 だって、もし知っていたのならば、彼はすぐに呪文を唱え、この不便な異世界にとどまらず、あちらに戻っただろうから。戻れば新作ゲームで遊び放題だし、お菓子だって新しいポテチのフレーバーを試すことができる。
 彼がその誘惑を抑えられるとは思えなかった。

「お帰り、ゼノン。あ、夕飯作っといたよ」

 最近は、光も食事を作ってくれるようになった。
 さすがにゲームばかりして、お世話を僕に任せっぱなしは悪いと思っているようなのだ。
 僕としては、彼のお世話をすることは喜びなので、どうってことはなかったんだけど。

「ありがとう」

 台所の鍋を見ると、カレーライスだった。

「温めてもう食べる?」

「そうだな。食べよう。今、ゲームやめるな」

 そう言って、光はゲームを終了させ、電源を落とした。
 白いライスにカレーを注ぎ、二人してテーブルにつく。
 たわいもないことを話しながら、食事を進め、そして、その中で僕は彼に切り出した。

「秋元さんに聞いたんだけど、ヒカル、君は元の世界へ戻る呪文を教わったんだって?」

「うん」

 彼はカレーライスを頬張りながら、素直にうなずいた。

「教えてもらった」

「………………」

「なんだよ、怖い顔して。あ、俺があっちにすぐ戻るって思っていたクチだろう? はははははははっ」

 明るく笑っている。
 いや、笑いごとなんかではないのだけど。

「まだ戻らないよ。うん。あー、ちゃんとゼノンには言っておかないとな。俺は、あっちには時々戻るけど、この世界にずっと住むつもりだから。あっちに戻ったら戻ったで、大変になることは、さすがの俺でももうわかっているからさ」

 かつて、光は故郷の世界にいた時、麻酔銃で撃たれ、あちらの組織に後をつけられと、すこぶる嫌な経験をしたのだ。
 元の世界に留まれば、追いかけられ、見張られる生活がずっと続くことになる。
 それが、彼は嫌だったのだ。

「だから、時々戻るだけだよ。ゼノン、ちゃんとこのツリーハウスに戻ってくるつもりだから」

「ヒカル!!」

 僕は感動した。
 彼が、自分からこのツリーハウスに戻ってくると言ったのだ。
 僕と二人で暮らす、このツリーハウスに!!

「……まぁ、こっちでもゲームができるし、ポテチもコーラもあるし、不便ないしな」

 そうとも彼は言っていた。
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