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【短編】異世界への帰還編
帰宅
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ようやく光が、魔法使いの秋元さんの家から戻ってきたのは、ツリーハウスが炎上してから二週間ほど経った頃だった。
毎日のように秋元さんの家に通い、僕は頭を下げた。
もうあんなことは絶対にしない。
正直、光は秋元さんの家で幸せそうに見えた。
異世界へくどく時の重要アイテムであった、ポテチやコーラ、ゲームだって、秋元さんの家では常備されていた。さまざまなテイスト、種類が山盛りで。
そこには秋元さんの奥さんである美女・美少女三名いて、光が彼女達と一緒にゲームしている姿を見たが、とても楽しそうだった。
もう帰ってこないかもしれない。
そう思い始めた頃に、光はひょっこりと戻ってきたのだった。
「秋元さんからお土産もらったよ。ピザだってさ。あそこの奥さんは本当にマメだよね。手作りピザだよ。温かいうちに食べよう」
そう言って、棚から皿を出す。
炎上したツリーハウスは、今はその炎上したことすら嘘のように、綺麗に修繕されていた。
焼け落ちた当初は、焦げた臭いが充満していたが、僕は何度も魔法を使って綺麗にしたのだった。
新しく木材を用意して、建て直すことには、兄達も協力してくれた。
土台は焼け残っていたので、建て直すこと自体は一週間ほどでできたのだった。
テーブルの上の皿にのせられたピザ。光は冷蔵庫からコーラを出して、僕に手渡す。
二人で向き合って座る。
僕は改めて、光に言った。
「戻ってきてくれて、ありがとう」
「うん」
光は少し緊張しているようにピザを食べていた。
それから、彼は僕にこう言った。
「少し話したい」と。
もしかしたら、やっぱりこのツリーハウスから出ていく話をされるのだろうかと、ドキドキしていた。
光は僕の顔をしっかりと見て話しだした。
「お前が以前から、俺のことを好きだっていうのは知っていた。でも、正直……うーん、わかんねぇ。俺が子供なのかも知れないけど、お前に好きだって言われてもピンとこないんだ。だいたいお前は男だしさ。でもさ、俺、友達としてはゼノンのことを大事に思っている」
彼は視線を下に落とした。
どう伝えればいいのか、迷っている様子だった。
「秋元さんのところで、言われたんだ。なら、友達として、もう一度始めてみたらどうかと。でも、それって、お前にとって辛いことなんじゃないかと思うんだ。好きになるかわからない奴と一緒に暮らし続けるのは、お前、辛いだろう?」
「……僕が、辛いって言ったら光はどうするの?」
「……どうするって、もしそうならば、俺が出ていくべきだと思う。それに、俺がズルい奴みたいだ。お前の好意に甘えて、ずるずるとツリーハウスで暮らすのは、お前に失礼だ」
光と長いこと接していてわかったことだけど、彼はちゃらんぽらんに見えて、意外と真面目な性格をしていた。
本当にずるい性格をしていたら、何食わぬ顔をして戻ってきて、何も言わずに一緒に暮らすことだってできたはずだ。
でも、彼は僕の気持ちも慮ってくれている。
それが嬉しかった。
「竜族にとって、番は特別な存在だ。だから、僕にとって、番である光は特別な存在なんだよ。たとえ、光が僕を嫌いになっても、僕は光のことが何よりも大切で、愛し続けると思う。光にとってはすごく迷惑なことかも知れないけど」
「……」
「だから、光と一緒に暮らして、僕がそれを辛く思うことなんてない。むしろ、君とずっと一緒にいられて、僕は嬉しいし、すごく幸せだと思う。君を愛しているから」
彼はふいに口に手を当て、真っ赤になって目を逸らした。
「あー、わかった……もう言うな」
「本当にわかった?」
「お前が冗談じゃなしに、俺のことが好きだってことはよくわかった。でも、先に言っておく。俺にはまだよくわからねぇ。友達としてはお前のことは好きだ。今はそれ以上の気持ちはない」
「それで十分だよ」
僕は微笑んだ。
以前に比べて、僕達の関係は格段に進歩している。
魔王を倒す旅の時は、正直すごく嫌われていた。予言で一緒に討伐の旅に出なければならないと言われていなければ、彼は速攻僕の手の届かない場所へと逃げ出していただろう。
でも今は、友達としてでも僕のことが好きで、そして、僕の気持ちを尊重してくれる。
うん、凄く進歩している。
その気持ちの天秤を、傾けていけばいいんだ。
時間をかけて。
僕の心の中では、兄達に宣言した……長期計画で光を落とすという野望は消えていなかった。
「わかった。そこまでお前に覚悟があるのなら、一緒に暮らしてやる。だけど、また変なことしようとしたら、この間と同じように魔法を使うからな」
「……わかったよ」
本当に早く、早く僕の元へ落ちてきて。
僕の愛しい番。
その頃、魔法使いの秋元家では。
「光君ていい子だったわね。お世話になっている間、ちゃんと洗い物とかもしてくれたし、ああいう子はいつでも歓迎するわよ」
「そうね。あの子、ゲームも強いし、私のつまっていたゲームを進めてくれたのよ」
「私もいろいろと攻略法を教えてもらったわ」
三人の妻達の間では、勇者の光の評判は良かった。
秋元は、妻達に「今度いつ光が遊びに来るのか」と何度も聞かれるくらいだった。
秋元はこう答えていた。
「ゼノン君は我慢が利かなそうなので、そのうちまた家を燃やして避難してきますよ」と。
毎日のように秋元さんの家に通い、僕は頭を下げた。
もうあんなことは絶対にしない。
正直、光は秋元さんの家で幸せそうに見えた。
異世界へくどく時の重要アイテムであった、ポテチやコーラ、ゲームだって、秋元さんの家では常備されていた。さまざまなテイスト、種類が山盛りで。
そこには秋元さんの奥さんである美女・美少女三名いて、光が彼女達と一緒にゲームしている姿を見たが、とても楽しそうだった。
もう帰ってこないかもしれない。
そう思い始めた頃に、光はひょっこりと戻ってきたのだった。
「秋元さんからお土産もらったよ。ピザだってさ。あそこの奥さんは本当にマメだよね。手作りピザだよ。温かいうちに食べよう」
そう言って、棚から皿を出す。
炎上したツリーハウスは、今はその炎上したことすら嘘のように、綺麗に修繕されていた。
焼け落ちた当初は、焦げた臭いが充満していたが、僕は何度も魔法を使って綺麗にしたのだった。
新しく木材を用意して、建て直すことには、兄達も協力してくれた。
土台は焼け残っていたので、建て直すこと自体は一週間ほどでできたのだった。
テーブルの上の皿にのせられたピザ。光は冷蔵庫からコーラを出して、僕に手渡す。
二人で向き合って座る。
僕は改めて、光に言った。
「戻ってきてくれて、ありがとう」
「うん」
光は少し緊張しているようにピザを食べていた。
それから、彼は僕にこう言った。
「少し話したい」と。
もしかしたら、やっぱりこのツリーハウスから出ていく話をされるのだろうかと、ドキドキしていた。
光は僕の顔をしっかりと見て話しだした。
「お前が以前から、俺のことを好きだっていうのは知っていた。でも、正直……うーん、わかんねぇ。俺が子供なのかも知れないけど、お前に好きだって言われてもピンとこないんだ。だいたいお前は男だしさ。でもさ、俺、友達としてはゼノンのことを大事に思っている」
彼は視線を下に落とした。
どう伝えればいいのか、迷っている様子だった。
「秋元さんのところで、言われたんだ。なら、友達として、もう一度始めてみたらどうかと。でも、それって、お前にとって辛いことなんじゃないかと思うんだ。好きになるかわからない奴と一緒に暮らし続けるのは、お前、辛いだろう?」
「……僕が、辛いって言ったら光はどうするの?」
「……どうするって、もしそうならば、俺が出ていくべきだと思う。それに、俺がズルい奴みたいだ。お前の好意に甘えて、ずるずるとツリーハウスで暮らすのは、お前に失礼だ」
光と長いこと接していてわかったことだけど、彼はちゃらんぽらんに見えて、意外と真面目な性格をしていた。
本当にずるい性格をしていたら、何食わぬ顔をして戻ってきて、何も言わずに一緒に暮らすことだってできたはずだ。
でも、彼は僕の気持ちも慮ってくれている。
それが嬉しかった。
「竜族にとって、番は特別な存在だ。だから、僕にとって、番である光は特別な存在なんだよ。たとえ、光が僕を嫌いになっても、僕は光のことが何よりも大切で、愛し続けると思う。光にとってはすごく迷惑なことかも知れないけど」
「……」
「だから、光と一緒に暮らして、僕がそれを辛く思うことなんてない。むしろ、君とずっと一緒にいられて、僕は嬉しいし、すごく幸せだと思う。君を愛しているから」
彼はふいに口に手を当て、真っ赤になって目を逸らした。
「あー、わかった……もう言うな」
「本当にわかった?」
「お前が冗談じゃなしに、俺のことが好きだってことはよくわかった。でも、先に言っておく。俺にはまだよくわからねぇ。友達としてはお前のことは好きだ。今はそれ以上の気持ちはない」
「それで十分だよ」
僕は微笑んだ。
以前に比べて、僕達の関係は格段に進歩している。
魔王を倒す旅の時は、正直すごく嫌われていた。予言で一緒に討伐の旅に出なければならないと言われていなければ、彼は速攻僕の手の届かない場所へと逃げ出していただろう。
でも今は、友達としてでも僕のことが好きで、そして、僕の気持ちを尊重してくれる。
うん、凄く進歩している。
その気持ちの天秤を、傾けていけばいいんだ。
時間をかけて。
僕の心の中では、兄達に宣言した……長期計画で光を落とすという野望は消えていなかった。
「わかった。そこまでお前に覚悟があるのなら、一緒に暮らしてやる。だけど、また変なことしようとしたら、この間と同じように魔法を使うからな」
「……わかったよ」
本当に早く、早く僕の元へ落ちてきて。
僕の愛しい番。
その頃、魔法使いの秋元家では。
「光君ていい子だったわね。お世話になっている間、ちゃんと洗い物とかもしてくれたし、ああいう子はいつでも歓迎するわよ」
「そうね。あの子、ゲームも強いし、私のつまっていたゲームを進めてくれたのよ」
「私もいろいろと攻略法を教えてもらったわ」
三人の妻達の間では、勇者の光の評判は良かった。
秋元は、妻達に「今度いつ光が遊びに来るのか」と何度も聞かれるくらいだった。
秋元はこう答えていた。
「ゼノン君は我慢が利かなそうなので、そのうちまた家を燃やして避難してきますよ」と。
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