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第一章 俺の大好きな聖女ちゃんが腐女子で、現世まで追いかけてきた竜騎士とくっつけようと画策しているらしい
第35話 異世界へ戻らないか
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光君は麻酔銃とはいえ、後ろから撃たれたことが本当にショックだったようでひどく落ち込んでいた。
異世界から来て勇者として、一応彼は皆を守る気でいたのだろう。
なのに、守るべき人々と思っていた人から、後ろから(麻酔銃とはいえ)撃たれたというのは衝撃だったようで、ガックリときていた。
しばらくは、湧き場所探しもパスする。
きっと、他の大人の人達がなんとかしてくれるから。
そう言って、すっかり気落ちしていたけど、私はそれじゃダメだと強くは言えなかった。
ただ、ゴブリンキング以上の強い魔獣が、湧き場所から発生しないことを祈ることしかなかった。
郁夫おじさまも光君のことをとても心配し、彼を麻酔銃で撃った男達を非難していた。
いっそその時、撃った男達を連れてきてくれれば、交渉材料にしたのにとも言っていた。
そしてゼノン君は、光君を慰めつつ、こう言い始めていた。
「異世界へ戻らないか」と。
「この現世にいて、勇者として動き続ける限り、否が応でも君は狙われ続けるよ。君だけじゃない、君の家族だって交渉の材料に使われる可能性がある」
「そして、それはずっと続く。君が高校を卒業して、大学に行く時も、仕事に就く時だって、きっと彼らは詮索し、君を観察し続けるはずだ」
「だから、もういいんじゃないか」
「異世界へ行った方が、楽だと思うよ」
ゼノン君の怒涛の攻めだった。
そして、ガックリ来ていた勇者君は、それはもうチョロかったのだ。
「………………でも異世界に行くと、ごろごろできないかも」
ゼノン君は首を振る。
「言っただろう。魔法使いの秋元さんに言えば、君の好きなポテチもゲームもコーラも、ミートソーススパゲティだって手に入れられる。いや、僕が手に入れてあげるよ」
すごい……殺し文句だった。
「本当か?」
ゼノン君は微笑みながら、白い歯を見せて言った。
「僕が君に嘘をついたことがあるかい? 本当だよ。絶対に手に入れてあげる。君が欲しいものなら、なんでも」
きやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
女の子だったら、イチコロの殺し文句ね。
こんなハンサムなゼノン君に言われて、メロメロしない子はいないだろう。
ただ、光君は、悲しそうな目をしていた。
きっと、彼はいろいろと考え悩んでいるんだろう。
また異世界へ戻って生活するということを。
そして、散々悩んだ彼は、とうとう、結論を出した。
異世界へ戻ると。
*
ゼノンは水晶玉の前で、魔法使いの秋元に報告していた。
「というわけで、来週にはそちらへ戻りたいと思います」
その報告に、水晶玉の前の、異世界にいる秋元は笑っていた。
「思ったよりも時間がかかったと思うかい?」
「そうですね。でも、彼の同族がこんな形で後押しをしてくれるとは思ってもみませんでした」
ヒカルの故郷の世界に来た時から、ずっと考えていた。
どうやって彼を、再び異世界へ連れていこうかと。
この世界では彼への誘惑が多すぎる。
かわいい女の子や綺麗な女の子がたくさんいて、彼はその色とりどりの花のような女達に惹かれるだろうと思っていた。
一度は、ヒカルがこの世界にいるのならば、彼のそばにいるべき自分もここに留まろうとも思った。
だけど、やはり彼を異世界へ連れていった方がいいのではないかと思った。
この世界は、ヒカルにとって息苦しいものになりつつある。きっと彼は異世界の方が自由に生きられるだろう。
「怖いねぇ。君は結局、光君を異世界へ連れ戻すんだから。君の思う通りに」
「……秋元さんには報酬はお支払いしますよ」
魔法使いの秋元は、竜の一族に伝わる宝の一つを望んでいた。
だから、秋元はゼノンにこう持ち掛けたのだ。
僕は三回魔王を倒す旅についていっていて、その三回分、神への願いが残っているのだよ、と。
君がまた異世界に戻りたいなら、そのうちの一つの願いを使ってあげる、と。
「それは頼むよ。じゃあ、来週、詳しいことはまた決めよう」
「はい。その時はよろしくお願いします」
異世界から来て勇者として、一応彼は皆を守る気でいたのだろう。
なのに、守るべき人々と思っていた人から、後ろから(麻酔銃とはいえ)撃たれたというのは衝撃だったようで、ガックリときていた。
しばらくは、湧き場所探しもパスする。
きっと、他の大人の人達がなんとかしてくれるから。
そう言って、すっかり気落ちしていたけど、私はそれじゃダメだと強くは言えなかった。
ただ、ゴブリンキング以上の強い魔獣が、湧き場所から発生しないことを祈ることしかなかった。
郁夫おじさまも光君のことをとても心配し、彼を麻酔銃で撃った男達を非難していた。
いっそその時、撃った男達を連れてきてくれれば、交渉材料にしたのにとも言っていた。
そしてゼノン君は、光君を慰めつつ、こう言い始めていた。
「異世界へ戻らないか」と。
「この現世にいて、勇者として動き続ける限り、否が応でも君は狙われ続けるよ。君だけじゃない、君の家族だって交渉の材料に使われる可能性がある」
「そして、それはずっと続く。君が高校を卒業して、大学に行く時も、仕事に就く時だって、きっと彼らは詮索し、君を観察し続けるはずだ」
「だから、もういいんじゃないか」
「異世界へ行った方が、楽だと思うよ」
ゼノン君の怒涛の攻めだった。
そして、ガックリ来ていた勇者君は、それはもうチョロかったのだ。
「………………でも異世界に行くと、ごろごろできないかも」
ゼノン君は首を振る。
「言っただろう。魔法使いの秋元さんに言えば、君の好きなポテチもゲームもコーラも、ミートソーススパゲティだって手に入れられる。いや、僕が手に入れてあげるよ」
すごい……殺し文句だった。
「本当か?」
ゼノン君は微笑みながら、白い歯を見せて言った。
「僕が君に嘘をついたことがあるかい? 本当だよ。絶対に手に入れてあげる。君が欲しいものなら、なんでも」
きやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
女の子だったら、イチコロの殺し文句ね。
こんなハンサムなゼノン君に言われて、メロメロしない子はいないだろう。
ただ、光君は、悲しそうな目をしていた。
きっと、彼はいろいろと考え悩んでいるんだろう。
また異世界へ戻って生活するということを。
そして、散々悩んだ彼は、とうとう、結論を出した。
異世界へ戻ると。
*
ゼノンは水晶玉の前で、魔法使いの秋元に報告していた。
「というわけで、来週にはそちらへ戻りたいと思います」
その報告に、水晶玉の前の、異世界にいる秋元は笑っていた。
「思ったよりも時間がかかったと思うかい?」
「そうですね。でも、彼の同族がこんな形で後押しをしてくれるとは思ってもみませんでした」
ヒカルの故郷の世界に来た時から、ずっと考えていた。
どうやって彼を、再び異世界へ連れていこうかと。
この世界では彼への誘惑が多すぎる。
かわいい女の子や綺麗な女の子がたくさんいて、彼はその色とりどりの花のような女達に惹かれるだろうと思っていた。
一度は、ヒカルがこの世界にいるのならば、彼のそばにいるべき自分もここに留まろうとも思った。
だけど、やはり彼を異世界へ連れていった方がいいのではないかと思った。
この世界は、ヒカルにとって息苦しいものになりつつある。きっと彼は異世界の方が自由に生きられるだろう。
「怖いねぇ。君は結局、光君を異世界へ連れ戻すんだから。君の思う通りに」
「……秋元さんには報酬はお支払いしますよ」
魔法使いの秋元は、竜の一族に伝わる宝の一つを望んでいた。
だから、秋元はゼノンにこう持ち掛けたのだ。
僕は三回魔王を倒す旅についていっていて、その三回分、神への願いが残っているのだよ、と。
君がまた異世界に戻りたいなら、そのうちの一つの願いを使ってあげる、と。
「それは頼むよ。じゃあ、来週、詳しいことはまた決めよう」
「はい。その時はよろしくお願いします」
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