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第一章 俺の大好きな聖女ちゃんが腐女子で、現世まで追いかけてきた竜騎士とくっつけようと画策しているらしい
第17話 異世界に繋がっているという話ですよ
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ユーチューブの番組コーナーに出演するのは、二週間に一度と決めていた。
光達は高校生で学校があるため、撮影は土日だけになる。二週間に一度、土日が潰れるのはキツイが、それもお金のためだと割り切った。
白報館社長の郁夫おじさんから提供される資金は、聖女こと麗子ちゃんが管理していた。
出かける度の交通費から食費まで、全部彼女が支払ってくれるので、非常に楽ちんだった。
二週間毎の撮影に、時々発生しているゴブリンの湧き場所の封印。
忙しい中、俺達はうっかり見落としていた。
湧き場所を……いつか彼らが見つけてしまうことを。
「横浜で陥没事故だって」
妹の由貴がテレビを見ながらそう言うと、母さんはみそ汁を俺に手渡した。
「あらあら、大変ねぇ。巻き込まれて亡くなった方がいなければいいけど」
テレビ画面にはブルーシートで覆われている道路が映っている。細いビルの間で道路が陥没したらしい。
時々陥没事故は起きている。多くの場合、地下鉄工事などの振動で、緩かった地盤に影響したせいだと言われている。
だからその時も、その横浜の陥没事故はそうした事故の一つだろうと考えていた。
「行ってきまーす」
俺は学校に向かって歩いていく。しばらくすると、麗子ちゃんとゼノンが現れた。
「おはようヒカル」
「おはよう、光君」
「おはよう」
いやー、朝から聖女ちゃんのかわいい顔を見られて、俺は幸せだな。
にこにこしている俺の横に、すっとゼノンが立った。
「ほっぺにご飯粒がついているぞ」
「マジ!!」
ゼノンの手が伸びて白いご飯粒を取って、それを奴は自分の口にパクリと入れた。
あんまりなことに、凍りつく俺。横の聖女ちゃんは耳まで真っ赤になって、くねくねと悶絶し始めた。
「バカバカバカバカ、そんな唐突にしないでよー。もう、わかっていれば動画撮ってたのに」
その聖女ちゃんの台詞に、ぐりんと頭が回る。聖女ちゃんの黒い瞳をじっと見つめて言う。
「ど……動画!!」
なぜか聖女ちゃんは、腕を組んでフフンとどこか勝ち誇ったように笑っていた。
なんだ、よくわからないぞ、聖女ちゃん!!
俺はその時、知らなかった。
聖女ちゃんが自分用のパソコンフォルダに、俺とゼノンの動画や写真を“ラブラブな二人”という名称で集めていることを。
「大丈夫、流出には気を付けているから」
ますます訳が分からず、立ち尽くす俺の肩をゼノンは掴んだ。
「遅刻するから、急ごう、ヒカル」
「ああ」
横浜の陥没現場では、ブルーシートが大きく張られ、中の様子が見られない状態になっていた。
そのため、そこにいた自衛隊員が何をしているのかは外部からはまったく見えなかった。
ライトが照らし出す、黒く靄が漂う穴から、一日ぶりに出現したゴブリンをすかさず男達は確保する。
「一体確保しました!!」
「確保!!」
そう、彼らは黒い靄のような穴から、ゴブリンが湧き出すことを見つけた。
そして、ゴブリンが継続的に湧き出し続けることを見つけてしまった。
彼らは研究と観察のため、その湧き穴を塞がないことを決め、一日おきに出現するゴブリンを、確保することにしたのだ。
「今度の化け物はまた米軍に渡すのか?」
「ええ、これで五体ですね。本土に輸送するという話です」
「日本分十体とは別に五体か。明日以降分はどうするんだ?」
「欲しがっている機関は多いですからね。うちも解剖用にもう少し欲しいですね」
「しかし、この穴……この先はどうなっているんだ?」
もやもやと黒い靄が上がるその穴を、不気味そうにみる自衛隊員に、もう一人が答えた。
「異世界に繋がっているという話ですよ」
光達は高校生で学校があるため、撮影は土日だけになる。二週間に一度、土日が潰れるのはキツイが、それもお金のためだと割り切った。
白報館社長の郁夫おじさんから提供される資金は、聖女こと麗子ちゃんが管理していた。
出かける度の交通費から食費まで、全部彼女が支払ってくれるので、非常に楽ちんだった。
二週間毎の撮影に、時々発生しているゴブリンの湧き場所の封印。
忙しい中、俺達はうっかり見落としていた。
湧き場所を……いつか彼らが見つけてしまうことを。
「横浜で陥没事故だって」
妹の由貴がテレビを見ながらそう言うと、母さんはみそ汁を俺に手渡した。
「あらあら、大変ねぇ。巻き込まれて亡くなった方がいなければいいけど」
テレビ画面にはブルーシートで覆われている道路が映っている。細いビルの間で道路が陥没したらしい。
時々陥没事故は起きている。多くの場合、地下鉄工事などの振動で、緩かった地盤に影響したせいだと言われている。
だからその時も、その横浜の陥没事故はそうした事故の一つだろうと考えていた。
「行ってきまーす」
俺は学校に向かって歩いていく。しばらくすると、麗子ちゃんとゼノンが現れた。
「おはようヒカル」
「おはよう、光君」
「おはよう」
いやー、朝から聖女ちゃんのかわいい顔を見られて、俺は幸せだな。
にこにこしている俺の横に、すっとゼノンが立った。
「ほっぺにご飯粒がついているぞ」
「マジ!!」
ゼノンの手が伸びて白いご飯粒を取って、それを奴は自分の口にパクリと入れた。
あんまりなことに、凍りつく俺。横の聖女ちゃんは耳まで真っ赤になって、くねくねと悶絶し始めた。
「バカバカバカバカ、そんな唐突にしないでよー。もう、わかっていれば動画撮ってたのに」
その聖女ちゃんの台詞に、ぐりんと頭が回る。聖女ちゃんの黒い瞳をじっと見つめて言う。
「ど……動画!!」
なぜか聖女ちゃんは、腕を組んでフフンとどこか勝ち誇ったように笑っていた。
なんだ、よくわからないぞ、聖女ちゃん!!
俺はその時、知らなかった。
聖女ちゃんが自分用のパソコンフォルダに、俺とゼノンの動画や写真を“ラブラブな二人”という名称で集めていることを。
「大丈夫、流出には気を付けているから」
ますます訳が分からず、立ち尽くす俺の肩をゼノンは掴んだ。
「遅刻するから、急ごう、ヒカル」
「ああ」
横浜の陥没現場では、ブルーシートが大きく張られ、中の様子が見られない状態になっていた。
そのため、そこにいた自衛隊員が何をしているのかは外部からはまったく見えなかった。
ライトが照らし出す、黒く靄が漂う穴から、一日ぶりに出現したゴブリンをすかさず男達は確保する。
「一体確保しました!!」
「確保!!」
そう、彼らは黒い靄のような穴から、ゴブリンが湧き出すことを見つけた。
そして、ゴブリンが継続的に湧き出し続けることを見つけてしまった。
彼らは研究と観察のため、その湧き穴を塞がないことを決め、一日おきに出現するゴブリンを、確保することにしたのだ。
「今度の化け物はまた米軍に渡すのか?」
「ええ、これで五体ですね。本土に輸送するという話です」
「日本分十体とは別に五体か。明日以降分はどうするんだ?」
「欲しがっている機関は多いですからね。うちも解剖用にもう少し欲しいですね」
「しかし、この穴……この先はどうなっているんだ?」
もやもやと黒い靄が上がるその穴を、不気味そうにみる自衛隊員に、もう一人が答えた。
「異世界に繋がっているという話ですよ」
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