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第二章 恋に落ちては一途な騎士の物語
第六話 繰り返し、愛しているの
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ナディアは、今や王となったオーレリアンとの間に、一人の王子と二人の姫を産んだ。
美しいナディア妃を、オーレリアンは深く愛しており、老衰で彼女が先に亡くなった後、後妻をと薦める者達の言葉に、決して首を縦に振ることはなかった。
彼女に仕えるために、母国を離れてやってきた女官のシエラは、初老の女となっていた。
シエラは、王子が姫に贈り続けた本を、彼女の墓の中に一緒に入れることを、オーレリアンに進言した。
けれど、オーレリアンがそれを許すことはなかった。
不思議なことに、あの見事な装丁の本を、ナディア姫は子供達には一切読ませることはおろか、触れさせることもなかった。
ナディア姫は微笑みながら、「これは、私の物語だから」と言っていた。
それほど思い入れのある本だから、彼女の墓に一緒入れることが良いというのに。
なぜ、彼はそれを拒むのだろう。
椅子に座り、その本をどこか懐かしそうに見つめるオーレリアンは、シエラにこう言った。
「これは、彼女のための物語で、また彼女に見せてあげないといけないから」
その翌日、国王オーレリアンは城から忽然とその姿を消した。
四冊の本も、机の上から消え失せていた。
国王の突然の失踪に、国は混乱したが、王子がすぐに即位し、やがてその混乱も終息する。
女官シエラは、職を辞して母国に戻ることを決め、その帰路の旅の前に、立派な王城を振り返りながら、独り言めいて呟いた。
きっと彼は、今も、生まれ変わる彼女のことを探している、と。
美しいナディア妃を、オーレリアンは深く愛しており、老衰で彼女が先に亡くなった後、後妻をと薦める者達の言葉に、決して首を縦に振ることはなかった。
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シエラは、王子が姫に贈り続けた本を、彼女の墓の中に一緒に入れることを、オーレリアンに進言した。
けれど、オーレリアンがそれを許すことはなかった。
不思議なことに、あの見事な装丁の本を、ナディア姫は子供達には一切読ませることはおろか、触れさせることもなかった。
ナディア姫は微笑みながら、「これは、私の物語だから」と言っていた。
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なぜ、彼はそれを拒むのだろう。
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「これは、彼女のための物語で、また彼女に見せてあげないといけないから」
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女官シエラは、職を辞して母国に戻ることを決め、その帰路の旅の前に、立派な王城を振り返りながら、独り言めいて呟いた。
きっと彼は、今も、生まれ変わる彼女のことを探している、と。
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