11 / 12
第二章 恋に落ちては一途な騎士の物語
第五話 初めての夜に
しおりを挟む
盛大な婚礼の式典を挙げた後、花嫁となったナディア姫は、夫婦の寝室の寝台の上に落ち着かない気持ちで座っていた。
女官達に磨き上げられたその身体には、透けるような薄い衣一枚の頼りない身であった。
恥ずかしさに、ナディアはシーツに身を包み、夫となったオーレリアンが部屋に入ってくるのを待っていた。
だが、朝から慌ただしく行われた式の疲れが出てしまったのだろう。柔らかな寝具に包まれているうちに、ナディアの瞼は次第に重くなり、ついには小さく寝息を立てて眠りの中に落ちてしまった。
目が覚めたのは、身体を這い回る柔らかくそして温かな感触を感じたからだった。
薄く目を開けると、誰かが自分の身体の上に覆いかぶさり、身体中を口づけている。肌を舌で舐め、そして甘く噛みついていく。
(…………オーレリアン様かしら)
眠りから覚めたナディア姫は、自分が婚礼の式典を挙げ、いよいよ初夜の寝台の上に横たわり、誰かから愛撫を受けている状況をようやく理解できたのだった。
(オーレリアン様がいらっしゃる前に、眠ってしまって、本当に申し訳ないことをしてしまったわ)
そう思って、男の髪にそっと手を伸ばそうとした時に、自分に覆いかぶさっている男が、小さくぶつぶつと何かを呟いていることに気が付いた。
「姫様、姫様、姫様、ああ、やっと、やっとお会いすることができた。私の姫様、大好きな姫様」
その手が止まった。
(………………)
「もう、姫様を離さない。絶対に離さない。今度こそ、私のものだ」
(……オーレリアン様?)
彼は碧い目をギラギラと輝かせ、そしてナディア姫の胸に顔を埋めた。
「夢のようだ……姫様をこうして抱けるなんて」
そこで、ナディア姫はわざとらしく目が覚めたふりをした。
「……オーレリアン様?」
問いかける声に、オーレリアンはすぐさま優しく礼儀正しい貴公子の仮面をその面に被った。先刻までの、胸元に顔を埋めた、ギラギラと獣じみた瞳をした男の顔はすぐに消え失せる。
「ああ、ナディア。疲れて眠っていたようだね。大丈夫かい?」
「はい」
彼は、ナディアの頬に手を当て、それから唇を啄むように口づけた。
そして男の舌がナディアの口内に入ってきたので、ナディアは少しばかり驚く顔をする。
「……ん」
男の手が、ナディアの胸をすくい上げるようにして揉み始める。
理解していることとはいえ、恥ずかしい。
指はナディアの胸の淡く色づいた先端を摘まみ、固くなっていくその感触を楽しんでいるようだった。
ナディアは恥ずかしさと身の内に生じた熱に、汗をしっとりと全身にかき、小さく喘ぐと、オーレリアンは微笑んでその大きな手で太腿を開かせた。
そっと触れるかどうかの感覚で、小さな花芽に触れると、まるで電流が走ったかのようにナディアは身体を震わせた。
「ああっ」
「感じやすいんだね、ナディア。もう興奮しているの?」
そう言うオーレリアンの碧い目も、薄闇の中輝いて見える。彼も興奮して、先刻のようなギラつきを、合間合間に見せていた。
彼の指が、蜜に濡れつつある花のようなその柔らかな彼女の中に、差し込まれた時、オーレリアンはナディアの頬に額に口づけを繰り返した。
「優しくする……大丈夫だよ、ナディア」
自らの足の間から、淫靡な水音が立ち始め、羞恥にナディアは目元に涙を浮かべる。
男の指を一本受け入れた時は、そのきつさに出来るのだろうかと、これからの行為への不安と恐怖を感じたが、オーレリアンは優しくすると話したように、ナディアがより濡れて、負担にならないように、十分な愛撫を繰り返した。そしてとうとう、オーレリアンが猛だったそれの切っ先を、ナディアの中にゆっくりと挿し入れていった時、ナディアは彼の背中に抱きつく。
そしてオーレリアンは、囁くような小さな声でこう言った。
それはよく耳を澄まさないと、聞こえないほどの小さな声だった。
「姫様、愛しております」
女官達に磨き上げられたその身体には、透けるような薄い衣一枚の頼りない身であった。
恥ずかしさに、ナディアはシーツに身を包み、夫となったオーレリアンが部屋に入ってくるのを待っていた。
だが、朝から慌ただしく行われた式の疲れが出てしまったのだろう。柔らかな寝具に包まれているうちに、ナディアの瞼は次第に重くなり、ついには小さく寝息を立てて眠りの中に落ちてしまった。
目が覚めたのは、身体を這い回る柔らかくそして温かな感触を感じたからだった。
薄く目を開けると、誰かが自分の身体の上に覆いかぶさり、身体中を口づけている。肌を舌で舐め、そして甘く噛みついていく。
(…………オーレリアン様かしら)
眠りから覚めたナディア姫は、自分が婚礼の式典を挙げ、いよいよ初夜の寝台の上に横たわり、誰かから愛撫を受けている状況をようやく理解できたのだった。
(オーレリアン様がいらっしゃる前に、眠ってしまって、本当に申し訳ないことをしてしまったわ)
そう思って、男の髪にそっと手を伸ばそうとした時に、自分に覆いかぶさっている男が、小さくぶつぶつと何かを呟いていることに気が付いた。
「姫様、姫様、姫様、ああ、やっと、やっとお会いすることができた。私の姫様、大好きな姫様」
その手が止まった。
(………………)
「もう、姫様を離さない。絶対に離さない。今度こそ、私のものだ」
(……オーレリアン様?)
彼は碧い目をギラギラと輝かせ、そしてナディア姫の胸に顔を埋めた。
「夢のようだ……姫様をこうして抱けるなんて」
そこで、ナディア姫はわざとらしく目が覚めたふりをした。
「……オーレリアン様?」
問いかける声に、オーレリアンはすぐさま優しく礼儀正しい貴公子の仮面をその面に被った。先刻までの、胸元に顔を埋めた、ギラギラと獣じみた瞳をした男の顔はすぐに消え失せる。
「ああ、ナディア。疲れて眠っていたようだね。大丈夫かい?」
「はい」
彼は、ナディアの頬に手を当て、それから唇を啄むように口づけた。
そして男の舌がナディアの口内に入ってきたので、ナディアは少しばかり驚く顔をする。
「……ん」
男の手が、ナディアの胸をすくい上げるようにして揉み始める。
理解していることとはいえ、恥ずかしい。
指はナディアの胸の淡く色づいた先端を摘まみ、固くなっていくその感触を楽しんでいるようだった。
ナディアは恥ずかしさと身の内に生じた熱に、汗をしっとりと全身にかき、小さく喘ぐと、オーレリアンは微笑んでその大きな手で太腿を開かせた。
そっと触れるかどうかの感覚で、小さな花芽に触れると、まるで電流が走ったかのようにナディアは身体を震わせた。
「ああっ」
「感じやすいんだね、ナディア。もう興奮しているの?」
そう言うオーレリアンの碧い目も、薄闇の中輝いて見える。彼も興奮して、先刻のようなギラつきを、合間合間に見せていた。
彼の指が、蜜に濡れつつある花のようなその柔らかな彼女の中に、差し込まれた時、オーレリアンはナディアの頬に額に口づけを繰り返した。
「優しくする……大丈夫だよ、ナディア」
自らの足の間から、淫靡な水音が立ち始め、羞恥にナディアは目元に涙を浮かべる。
男の指を一本受け入れた時は、そのきつさに出来るのだろうかと、これからの行為への不安と恐怖を感じたが、オーレリアンは優しくすると話したように、ナディアがより濡れて、負担にならないように、十分な愛撫を繰り返した。そしてとうとう、オーレリアンが猛だったそれの切っ先を、ナディアの中にゆっくりと挿し入れていった時、ナディアは彼の背中に抱きつく。
そしてオーレリアンは、囁くような小さな声でこう言った。
それはよく耳を澄まさないと、聞こえないほどの小さな声だった。
「姫様、愛しております」
1
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

籠の鳥
桜 あぴ子(旧名:あぴ子)
恋愛
幼い頃、とても美しい生き物に出会った。お父様のお気に入りで、でも決して懐くことはない孤高の生き物。お父様に内緒でいつも隠れて遠いところから見つめるだけだったけど、日に日に弱っていく姿を見て、逃がしてあげることにした。
籠の鳥は逃げて晴れて自由の身。
では、今籠の中には誰がいるのだろう?
2019年1月21日に完結いたしました!

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

咲子さんの陽だまりの庭
秋野 木星
恋愛
30歳になる年に、結婚を諦めて自分の家を買うことにした咲子。
職場の図書館から通える田舎の田んぼの中に建つ家に住み始めました。
ガーデンニング、料理、手芸、咲子の楽しい生活が始まります。
そこに農家の男性が訪ねてきました…
※ 表紙は加純さんの作品です。
※ この作品は、カクヨム、小説家になろうからの転記更新です。

出ていってください!~結婚相手に裏切られた令嬢はなぜか騎士様に溺愛される~
白井
恋愛
イヴェット・オーダム男爵令嬢の幸せな結婚生活が始まる……はずだった。
父の死後、急に態度が変わった結婚相手にイヴェットは振り回されていた。
財産を食いつぶす義母、継いだ仕事を放棄して不貞を続ける夫。
それでも家族の形を維持しようと努力するイヴェットは、ついに殺されかける。
「もう我慢の限界。あなたたちにはこの家から出ていってもらいます」
覚悟を決めたら、なぜか騎士団長様が執着してきたけれど困ります!
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる