本めづる姫君と、永遠の騎士

曙なつき

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第一章 本を贈られる姫君の物語

第四話 三巻の到着

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 これまた立派な木箱に入って送られてきた本を、ナディア姫は急いで開けて、美しい紫色の布で丁寧に包まれていたそれも、急いで解いて本を取り出した。
 今回の本もこれまでと同様に、たくさんの宝石に飾られた革張りの本であった。

「シエラ、一緒に読みましょう」

 ソファに並んで座り、ナディア姫は本を開いて言った。
 シエラは僭越ながらと言いつつも、ナディア姫の隣に座らせて頂いた。
 本を読み進める二人の顔は、次第に強張っていく。

 女官シエラは心の中で叫んでいた。

 こうくるか!! と思うような展開だった。



 騎士アルセーヌはその後、国の騎士をやめ、諸国を彷徨さまよった。
 愛するユーフェリア姫を生き返らせる方法を探すためである。
 
 死んだ者を復活させることなど、決してできない。
 けれど、彼はそれを強く求めた。
 再び彼女と巡り合い、今度巡り合った時には決してその手を離さないと誓っていた。

 大賢者がそれを知っていると聞けば、東方の国に住まう彼の許まで足を運んだ。
 (残念なことに彼は知らなかった)

 徳の高い僧侶がそれを知っていると聞けば、秘境まで足を運んだ。
 (やはり、彼はそれを知らなかった)

 精霊の女王に会えばわかると聞けば、精霊界を開く方法も探し出し、精霊界へと赴いた。
 (女王もそのことを知らなかった)



「……ちょっとアルセーヌがハイスペックすぎませんか」

 読み進めているうちに、感じたシエラの感想がそれだった。
 東方の国に行ったり、秘境に行ったり、果ては精霊界に赴いたりと、そんなこと普通の人間にできることではない。

「そうね」

 ナディア姫は、本で、なぜか竜に戦いを挑んで勝利している騎士アルセーヌの挿絵をそっと撫でながらこうも呟いていた。

「でも、彼はとても強い人だったから」

「……竜を倒しても、ユーフェリア姫を生き返らせる方法は見つからなかったようですね」

「……どうして竜を倒せばユーフェリア姫を生き返らせると思ったのか、ちょっとわからないわ。おかしいわよね」

「……確かにそうですね」

 女官シエラとナディア姫は顔を見合わせる。
 
 物語の後半は、姫をなかなか生き返らせる手段が見つからず、自暴自棄になり、神へ戦いを挑もうとする騎士アルセーヌの決意表明で続刊へ続くとなっていた。

 壮大な話になっていた。
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