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第一章 本を贈られる姫君の物語
第三話 ナディア姫と二巻目の本の感想
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「シエラ、見て、二巻目の本が殿下から届いたわ」
テーブルの上に置かれた木箱を開け、中の紫色の布を落として、豪華なその本を取り上げたナディア姫は声を上げた。
「あの本の続きよ。一緒に読みましょう」
ナディア姫は、お気に入りの女官シエラをそばに呼び、ソファーの横に座らせてひと抱えもあるその大きな本を広げていった。
すでに内容を知っているシエラであったが、そのことをおくびにも出さず、黙って本をもう一度読み進めて行く。
そして最後まで読み終わった後、ナディア姫は深くため息をついた。
「…………まさか、騎士アルセーヌが復讐に走るとは…………」
「びっくり致しましたね」
いや、もう本当にびっくりだった。
前巻の、あの悲恋的な内容から、一気にアルセーヌが腹黒く様々なことを画策していくのだから。最後に義母とその娘達に対して、復讐を遂げた騎士アルセーヌ。
「…………これでスッキリ満足できたのかしら、アルセーヌは」
「…………」
愛する姫を失い、復讐に走る気持ちは理解できる。
だが、そうまでするのなら、駆け落ちしてでも、病弱な姫の手を取って逃げればよかったのに。
そうもナディア姫は思ってしまう。
いまさら、愛しの姫を失ったアルセーヌが復讐を成し遂げたとしても、何も得るものはないのではないか。虚しいだけではないか。
そう感想を言うナディア姫に、シエラもうなずいた。
「でも、自分の愛した姫君を結果的に死へ追いやった者が、目の前で何事もなかったようにのうのうと過ごす姿を、姫様は平然と眺めることはできますか?」
「……できない」
「アルセーヌは国を捨てて、愛した姫君を忘れて別の場所で生きていくべきだったのでしょう。でも、彼はそれを選ばなかったんです」
「…………」
ナディア姫は少しばかり、その美しい眉を曇らせていた。
「でも、復讐を遂げたとしてもアルセーヌには救いがない。愛する姫君ももういないのだから。その後の人生を、彼はどう生きていくのかしら」
それは、女官シエラも気になっていた。
だいたい、本の巻末には【三巻に続く ~ 続きをご期待ください ~】と記載があるのだ。復讐を遂げたアルセーヌはその後、どうなるのか。気になってしまう。気になって夜も眠れない。
ナディア姫と女官シエラがそう思っていた時、続きの三巻が、やはり木箱に入って送られてきた。
それは二巻が到着してから、ちょうど一カ月後のことだった。
テーブルの上に置かれた木箱を開け、中の紫色の布を落として、豪華なその本を取り上げたナディア姫は声を上げた。
「あの本の続きよ。一緒に読みましょう」
ナディア姫は、お気に入りの女官シエラをそばに呼び、ソファーの横に座らせてひと抱えもあるその大きな本を広げていった。
すでに内容を知っているシエラであったが、そのことをおくびにも出さず、黙って本をもう一度読み進めて行く。
そして最後まで読み終わった後、ナディア姫は深くため息をついた。
「…………まさか、騎士アルセーヌが復讐に走るとは…………」
「びっくり致しましたね」
いや、もう本当にびっくりだった。
前巻の、あの悲恋的な内容から、一気にアルセーヌが腹黒く様々なことを画策していくのだから。最後に義母とその娘達に対して、復讐を遂げた騎士アルセーヌ。
「…………これでスッキリ満足できたのかしら、アルセーヌは」
「…………」
愛する姫を失い、復讐に走る気持ちは理解できる。
だが、そうまでするのなら、駆け落ちしてでも、病弱な姫の手を取って逃げればよかったのに。
そうもナディア姫は思ってしまう。
いまさら、愛しの姫を失ったアルセーヌが復讐を成し遂げたとしても、何も得るものはないのではないか。虚しいだけではないか。
そう感想を言うナディア姫に、シエラもうなずいた。
「でも、自分の愛した姫君を結果的に死へ追いやった者が、目の前で何事もなかったようにのうのうと過ごす姿を、姫様は平然と眺めることはできますか?」
「……できない」
「アルセーヌは国を捨てて、愛した姫君を忘れて別の場所で生きていくべきだったのでしょう。でも、彼はそれを選ばなかったんです」
「…………」
ナディア姫は少しばかり、その美しい眉を曇らせていた。
「でも、復讐を遂げたとしてもアルセーヌには救いがない。愛する姫君ももういないのだから。その後の人生を、彼はどう生きていくのかしら」
それは、女官シエラも気になっていた。
だいたい、本の巻末には【三巻に続く ~ 続きをご期待ください ~】と記載があるのだ。復讐を遂げたアルセーヌはその後、どうなるのか。気になってしまう。気になって夜も眠れない。
ナディア姫と女官シエラがそう思っていた時、続きの三巻が、やはり木箱に入って送られてきた。
それは二巻が到着してから、ちょうど一カ月後のことだった。
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