天上の果実

曙なつき

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僕と彼との“偽装結婚”

閑話 甘い生活

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 私とリスタは本当の夫婦になることを決めた。
 書類上は四年前からすでに夫婦だったが、肉体的には“白の結婚”である。
 私達は、出会いの時の口づけを除いて、体を触れ合わせたことのない清い関係だった。

 召使達はリスタの短く切られた髪を綺麗に整えた。私の伴侶として、彼にふさわしい衣装を用意した。
 刺繍の入った綺麗な色合いの衣装は、華奢なリスタを妖精のように見せる。
 彼のこぼれ落ちそうなほど大きな青い瞳は、見る者の視線を集める。出かけることの少ないリスタは肌も透き通るように白く、まろやかなバラ色の頬に柔らかそうな桜色の唇を持っていた、仕える召使達は、あの瓶底眼鏡の少年の中に、こんなにも美しい人間がいたことに、驚かされていた。
 リスタは自分が、ある国で天人と呼ばれ、ずっと敬われ、かしづかれて生活してきたと言った。

「僕はスシャール家の三番目の天人だ」

 私はリスタを自分の膝に乗せ、つむじに唇を落とす。

「三兄弟だったのか」

「そう。一番上の兄上がロゼ兄さま、二番目の兄上がルシス兄さま」

「いつか、お前の実家へ挨拶に行かないとな」

 その言葉に、リスタは眉を寄せ、しかめっつらをした。

「もう二度と、スシャールには戻らないよ。戻ったら最後、僕、五家に嫁がされちゃうから」

「…………それはどういうことだ」

「僕がスシャールを出たのは、僕には生まれながらの婚約者がいたからだよ。婚約者のところに嫁がされちゃうのが嫌だったんだ。僕とルシス兄さまは、二人して結婚したくないと思っていた。だから、僕は家を出て」

 リスタの頬に口づける。

「お兄さんと出会ったんだ」

 その桜色の柔らかな唇を重ねた。

「……ん……」

 甘やかな声が漏れる。
 そして、彼の舌を舐めて絡めると、そこに背筋がぞくりとするほどの力を感じた。
 唇を離すと、銀色の糸を引いた。

 リスタはその青い目をうっとりと輝かせ、私の背に細腕を回し、囁くように言った。

「僕の魔力を吸って、お願い、お兄さん」

「キーファと呼べ。お前の夫だ」

「キーファ……はやく…ん」

 唇を再び合わせ、彼の言葉通りにすると、途端に膨大な魔力が唇から伝わってきた。
 その衝撃に目を見開く。

「んんっ、あ」

 彼はうっとりとして、身を震わせていた。
 渦巻く魔力は私の中にどんどん流れこんできた。

 一瞬、唇を離したリスタは言った。

「キーファ、すごいや。もっと僕の魔力を食べられるよね。もっともっと受け止めて」

 異常だった。
 ちょっとした魔力を移すやりとりは過去、なかったわけではない。
 身を触れさせて、魔力は移せるものだ。
 だが、これは……この溢れるような魔力の量は桁違いだろう。

 彼が国許で天人と呼ばれ、敬われていたことは、間違いなくこれが原因だった。

 私は寝台の上で彼の衣装を落とし、その身に唇を這わせていく。
 白く滑らかなその体は柔らかく、私は夢中になって舐めて吸って、柔肌を噛んだ。
 リスタはシーツを鷲掴み、甘く啼き続ける。

「キーファ……だめっ、そこは吸わないで」

 彼の足の間の、その男根を口にくわえて精と共に魔力を吸うと、大きく体を跳ね上げた。

「だめっ、だめ」

 目を見開き、両手で、むしゃぶりつく私の頭を押さえつける。
 その青い目から涙がこぼれて頬を流れ落ちた。身を震わせ続ける。
 快感が強すぎるんだろう。魔力を吸い出されること自体に快感を覚えている様子だったから、それに射精を伴わせると、身を貫くような凄まじい快感があるようだった。

「うえ、うぇぇん、だめだって言ったのに」

 泣いている彼を宥めながら、私は彼を抱きしめた。
 
「気持ちよくて、おかしくなっちゃう。だから、もうだめ」

 そんな彼がかわいくて愛おしくて、だめだと言われても、私は恐らくしてしまうであろうことはわかっていた。
 だから、絶対に「もうやらない」と言うつもりはなかった。

 耳朶を甘く噛みながら、聞いてみた。

「ここに、いれながらすると、どうなるのだ」

 双丘の谷間の後孔に触れる。
 途端、彼の涙に濡れた青い目が、驚愕に大きく見開かれていた。

「………………え、そんなことしたら、ダメだよ。僕、本当におかしくなっちゃう」

「…………したことないんだろう。試してみようか」

 ぐっとその足首を持ち、大きく開かせる。
 私の肩にその足をかけて、身を進めようとする。
 その小さな蕾が傷つかないように、用意していた潤滑油をたっぷりとつけて、指でほぐしていく。

「だめ、キーファ、僕、おかしくなっちゃう。おかしくなっちゃうから、絶対にそこからはやめて」

「大丈夫、リスタ」

「怖い、やだ、怖いよ」

 半泣きになりながら、私にしがみついてくる。
 指でじゅうぶんに解した後、ゆっくりと、そこに私の男根を進める。
 時間をかけて、慎重に進めた。彼を傷つけたくなかった。
 初めての彼に、痛みを与えず、快感だけ与えたい。
 それでも、初めての挿入である。圧迫感は避けられないのか、やはり苦しそうに美しい顔を歪めている。

「大丈夫か」

「……うん……あっ、キーファの……大きいから」

 半ばまで埋まった。
 私が汗を浮かべ、苦しそうな顔をしているのを見上げて、リスタは言った。

「奥まで……キーファ、入れて。それで……」

 彼は青い目を閉じた。

「魔力を吸って」

 悲壮な覚悟を決めたようなその言い方に、私は笑ってしまった。

「さっきは嫌だって言っていたのに」

「……キーファがしたいなら、いいよ。その、僕は……」

 彼は照れながら言った。

「僕はもう、キーファのものだから。あっあっ、何」

 自分の中に埋まっていた私のものがふいに大きさを増したことに、驚いた顔をしている。

「あまり、かわいいことを言うな。煽られる」

「ああっ、やっ、大きい、ああっ」

 それからも、なんとか体を進め、私のすべてが彼の中に埋まった時、彼は荒く息をついていた。

「……全部、入ったの?」

「ああ、ここに入っている。私のものが全部入っているぞ」

 薄い腹を撫でるようにすると、リスタは小さく微笑んだ。

「これで本当に夫婦になったんだよね」

「ああ、リスタ。愛している」

「……僕も、キーファを愛して……あああっ、や、吸わないで」

 そこで魔力を吸い上げた。
 ゆるゆると腰を動かしながら、彼の体内から直接魔力を吸い上げる。
 それは大きな波のような感覚で、私は彼にきつく、熱く締めあげられながら、魔力の波を感じるその感覚に酔った。
 頭の中が真っ白になってしまうような、凄まじい快感だった。リスタはリスタで、もうどうにも体が制御できない様子で、泣きながら立て続けにイっていた。

「ひっ、ああああああああ」
 
 彼のペニスも私の腹に向けて白い精を迸っていた。何度も何度も放ち、ついには出すものがなくなっても、体を震わせ続けてイっている。

「気持ち良くておかしくなっちゃうよ、ああ、キーファ、だめっ、もう吸わないで!!」

「さっきは吸っていいと言ったじゃないか」

「死んじゃう!! 死んじゃうからぁ!!」

 泣き叫び、絶頂していた。
 そして体に力が無くなったかと思うと、こてっと気絶していたのだった。




 とりあえず、魔力を吸いながら体を合わせることは、リスタを快楽に狂わせることはよくわかった。
 しばらくの間、怯えた様子すら見せていた彼が可哀想で、私は口づけだけで魔力を吸い取るようになった。
 優しく唇を重ね、甘く魔力を吸い出されるのは好きなようで、彼はキス魔のように、しょっちゅう口づけをねだるようになった。
 そんなかわいい彼に、私は夢中になっていた。
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みんなの感想(1件)

虎太郎
2023.10.24 虎太郎

凄いです。1度読んだだけでは足りず、ずっと 頭の片隅に残って お気に入りに入れてなかったから 探すのに苦労して やっと見つけて また読んで、少なすぎず、多すぎない 表現に ギュッと心を掴まれました。マイナスイオンが 感じられるようなお話でした。素敵です。

解除

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