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【外伝】
竜の番の少年の物語 (4)
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翌日、塔のゼファーの部屋に、フランシスが現れた。
彼は困った顔で、ゼファーに言った。
「ウィル君が、レオンの番であることに、アレクは反対しているんだ。本当に子供みたいに反対していて、困っているんだ」
椅子に座って、ため息をついているフランシスに、ゼファーも告げた。
「…………………珍しくも、アイツと意見が一致したな。実は僕も、夫のアーノルドも反対している」
それに、フランシスは顔を上げて、ゼファーの顔を凝視した。
「なんでまた、そんな」
「フラン、わかっているだろう。僕達は元から、天敵同士だ。あいつとは分かり合えない。アレクサンドロスの方だってそうだ」
「でもそんなこと、レオンハルトやウィル君には関係ないだろう!! 二人はただ子供だというだけだ。君がアレクと仲が悪いことは知っている。でも、子供達までそれに巻き込むのはひどいんじゃないか」
「……………」
「レオンは、次にいつウィル君に会えるのか楽しみにしている。手紙を書いたり、贈り物を用意したり、もう夢中になっている」
そう言って、フランシスは自分の懐のマジックバックから、レオンハルトが用意した手紙と贈り物を取り出した。
「本が好きだというウィル君のために、レオンも本を読みだしている。僕に『魔法大全』を貸してくれといってきて、昨日の夜、読みながら解説したんだ。レオンはウィル君がすごく賢いんだなと感心していたよ。そんな子が自分の番であることを誇らしく思っていて」
「…………」
「もう、大好きになっているんだ。ゼファー、彼らを止めないで欲しい」
ゼファーは額に手を当て、彼もまたため息をついた。
「……フラン、僕は君のことは好きだ。今でも愛していると言っていい。友としても、まるで兄弟のようにも思っている。だけど、アレクサンドロスは別だ。あいつのことは大嫌いだ。何年経ってもあの馬鹿のことはムカつくし、腹立たしい。あいつのせいで、前世では世界も滅亡した」
「……………」
「今世もさんざん振り回された。君との婚約破棄の契約を盾にして、ようやく御せたくらいだ。でも、君が愛している男だから、仕方なく認めた」
「ゼファー……」
「あいつの血が半分流れて、あいつにそっくりな息子が、僕達の息子を番にするなんて、考えられない」
そして、ゼファーは静かに言った。
「出ていってくれ、フランシス」
フランシスはゼファーの部屋から出ていった。
だが、テーブルの上には、彼の息子であるレオンハルトが用意したという手紙と贈り物が置かれたままだった。
それに気が付いたゼファーは、不機嫌そうにため息をついていた。
帰宅後、ゼファーはウィルに、レオンハルトからの手紙と贈り物を手渡した。
渡さないことも一瞬考えたが、自分はアレクサンドロスと一緒ではないと思うと、すぐにそうすることをやめた。
前世では、アレクサンドロスは、ゼファーの手紙をフランシスに届けることをせずに、度々握りつぶしていたのだ。
渡された手紙と贈り物を不思議そうに見たウィルは、すぐに嬉しそうな顔をして手紙を開けて読み始める。そして贈り物を開けた。
それは魔道具で、部屋の天井に星座の明かりを映し出すものだった。
ウィルは大喜びだった。
「綺麗だね。とても綺麗だ」
「そうだね」
腕の中のウィルの額に口づけをする。ウィルは本棚から星座の本を探し出して来て、天井に映し出される星座と照らし合わせを始めていた。
「レオンハルトが、今度また皇宮に遊びに来てくださいとお手紙でいっているんだけど、遊びに行ってもいい?」
「…………だめだ」
「どうして? どうして行ったらだめなの?」
親同士のいさかいなど知らぬウィルが、悲しそうに尋ねてくる。
彼もレオンハルトに会いたいらしい。
「…………会いたいのか? あのレオンハルトに」
「うん。今度は僕が、レオンハルトに何か贈り物を持っていきたいな。レオンハルトが喜ぶようなものを選んで持っていきたい」
その青い瞳の輝きを見て、ゼファーはため息をついた。
こうして、竜は番を手に入れる。
大切な番を優しく、大切に大切に囲い込み、けっして逃さない。
やがて、その魂までもが捕らえられていく。
フランシスが前世からそうであったように。
運命すらも絡めとる。
それはもう、仕方がないことかも知れない。
だから、ため息混じりでゼファーはこう言った。
「……わかった。じゃあ、一緒に贈り物を選ぼうか」
「うん」
ウィルは満面に笑みを浮かべてうなずいていた。
皇宮に遊びに来たウィルを抱き上げ、レオンハルトは彼を抱いたまま、くるくると回って喜ばせていた。
愛しい番の少年に彼はもう夢中で、そして。
やがて、二人は愛し合うようになるのだった。
彼は困った顔で、ゼファーに言った。
「ウィル君が、レオンの番であることに、アレクは反対しているんだ。本当に子供みたいに反対していて、困っているんだ」
椅子に座って、ため息をついているフランシスに、ゼファーも告げた。
「…………………珍しくも、アイツと意見が一致したな。実は僕も、夫のアーノルドも反対している」
それに、フランシスは顔を上げて、ゼファーの顔を凝視した。
「なんでまた、そんな」
「フラン、わかっているだろう。僕達は元から、天敵同士だ。あいつとは分かり合えない。アレクサンドロスの方だってそうだ」
「でもそんなこと、レオンハルトやウィル君には関係ないだろう!! 二人はただ子供だというだけだ。君がアレクと仲が悪いことは知っている。でも、子供達までそれに巻き込むのはひどいんじゃないか」
「……………」
「レオンは、次にいつウィル君に会えるのか楽しみにしている。手紙を書いたり、贈り物を用意したり、もう夢中になっている」
そう言って、フランシスは自分の懐のマジックバックから、レオンハルトが用意した手紙と贈り物を取り出した。
「本が好きだというウィル君のために、レオンも本を読みだしている。僕に『魔法大全』を貸してくれといってきて、昨日の夜、読みながら解説したんだ。レオンはウィル君がすごく賢いんだなと感心していたよ。そんな子が自分の番であることを誇らしく思っていて」
「…………」
「もう、大好きになっているんだ。ゼファー、彼らを止めないで欲しい」
ゼファーは額に手を当て、彼もまたため息をついた。
「……フラン、僕は君のことは好きだ。今でも愛していると言っていい。友としても、まるで兄弟のようにも思っている。だけど、アレクサンドロスは別だ。あいつのことは大嫌いだ。何年経ってもあの馬鹿のことはムカつくし、腹立たしい。あいつのせいで、前世では世界も滅亡した」
「……………」
「今世もさんざん振り回された。君との婚約破棄の契約を盾にして、ようやく御せたくらいだ。でも、君が愛している男だから、仕方なく認めた」
「ゼファー……」
「あいつの血が半分流れて、あいつにそっくりな息子が、僕達の息子を番にするなんて、考えられない」
そして、ゼファーは静かに言った。
「出ていってくれ、フランシス」
フランシスはゼファーの部屋から出ていった。
だが、テーブルの上には、彼の息子であるレオンハルトが用意したという手紙と贈り物が置かれたままだった。
それに気が付いたゼファーは、不機嫌そうにため息をついていた。
帰宅後、ゼファーはウィルに、レオンハルトからの手紙と贈り物を手渡した。
渡さないことも一瞬考えたが、自分はアレクサンドロスと一緒ではないと思うと、すぐにそうすることをやめた。
前世では、アレクサンドロスは、ゼファーの手紙をフランシスに届けることをせずに、度々握りつぶしていたのだ。
渡された手紙と贈り物を不思議そうに見たウィルは、すぐに嬉しそうな顔をして手紙を開けて読み始める。そして贈り物を開けた。
それは魔道具で、部屋の天井に星座の明かりを映し出すものだった。
ウィルは大喜びだった。
「綺麗だね。とても綺麗だ」
「そうだね」
腕の中のウィルの額に口づけをする。ウィルは本棚から星座の本を探し出して来て、天井に映し出される星座と照らし合わせを始めていた。
「レオンハルトが、今度また皇宮に遊びに来てくださいとお手紙でいっているんだけど、遊びに行ってもいい?」
「…………だめだ」
「どうして? どうして行ったらだめなの?」
親同士のいさかいなど知らぬウィルが、悲しそうに尋ねてくる。
彼もレオンハルトに会いたいらしい。
「…………会いたいのか? あのレオンハルトに」
「うん。今度は僕が、レオンハルトに何か贈り物を持っていきたいな。レオンハルトが喜ぶようなものを選んで持っていきたい」
その青い瞳の輝きを見て、ゼファーはため息をついた。
こうして、竜は番を手に入れる。
大切な番を優しく、大切に大切に囲い込み、けっして逃さない。
やがて、その魂までもが捕らえられていく。
フランシスが前世からそうであったように。
運命すらも絡めとる。
それはもう、仕方がないことかも知れない。
だから、ため息混じりでゼファーはこう言った。
「……わかった。じゃあ、一緒に贈り物を選ぼうか」
「うん」
ウィルは満面に笑みを浮かべてうなずいていた。
皇宮に遊びに来たウィルを抱き上げ、レオンハルトは彼を抱いたまま、くるくると回って喜ばせていた。
愛しい番の少年に彼はもう夢中で、そして。
やがて、二人は愛し合うようになるのだった。
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感想ありがとうございます。
外伝の方も楽しんで頂けて嬉しく思います。契約を破り、いっそのこと罰が発動して欲しい気もしたのですが、さすがにそれは大変なので、アレクは死に物狂いで守ることになったと思います……(ゼファーへの憎しみを滾らせて……)。
その結果の子世代ができての物語でした(*´д`*)
最後までお読みいただき、そして感想ありがとうございます。
息子同士は相愛になるので、結局ゼファー達も認めざるを得なくなる感じになります。
息子達の出会う前まで時を戻せたら……というのは恐らくゼファーもアーノルドも望んだことでしょうが、覆水盆の返せずという感じですね……。ううむ。
(*´д`*)どき