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第二章 今世の幸せ
第17話 契約の締結
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後日、皇太子アレクサンドロスとの魔法契約は、無事に締結できた。
内容としては大きく三つであった。
一つ目は、滅亡の危機が消えた時点で、ゼファーはフランシスとの婚約を解消すること
二つ目は、皇太子アレクサンドロスは、ゼファー達の活動へ協力すること
三つ目は、フランシスの魔法研究を邪魔せず、婚姻後も彼に週に三日は塔へ行くことを許すこと
一つ目の内容については、期限の定めがないことを指摘する侍従達が相次ぎ、但し書きで危機が来ない場合でも二年後には婚約を解消する旨が入れられた。
二つ目は、皇太子の協力がない場合は、婚約は解消しないと強い文言も追記で入れられた。
三つ目は、塔のヘクト師からの要望でゼファーが入れておいた文言であった。ヘクト師は、フランシスが皇太子の番認定を受けた後、最終的にはフランシスがさらわれるように皇宮へ連れて行かれるであろうと、残念ながら考えていたようだ。そのため、どうにかフランシスの魔法研究を続けるための方法を考えていたところであったので、皇太子との魔法契約を締結するというこの出来事は渡りに船であった。
晩年、皇太子アレクサンドロスが生涯で最も後悔したこととして、この三つ目の魔法契約の文言に同意したことだと述べている。
これがあるせいで、結果的に、アレクサンドロスは番のフランシスの魔法研究を止めることはできなかった。それほど、この魔法契約の拘束力は強かった。
ただし、ゼファーはこれがアレクサンドロスとフランシスのその後の夫婦の円満の秘訣に繋がったのではないかと考えている。
皇太子アレクサンドロスの愛は重すぎた。
それは誰が見てもそう思うだろう。
竜の愛というものはそういうものだと皆、諦めにも似た思いで見ているだろうけど、それを向けられる側にはたまらない。
フランシスは、前世ではアレクサンドロスを心から愛していだたろう。
だが、その愛ゆえに、自分の研究を犠牲にしなくてはならなかった。
彼は、この世で最高の権力を持つ素晴らしい男に愛されながらも、本当に心の底から幸せであったかというと、ゼファーはそうではないと思っていた。
盲目の愛だった。押し付けられた重い重い愛だった。
だから、今世、週に三日、魔法研究をするために、その重い愛から逃れられる術を持つことができたフランシスは、ようやく夫婦の間のバランスをとれることになったのではないかと考えている。
魔法契約を締結した後、皇太子アレクサンドロスと魔法契約を締結したことについて、契約の内容も含めてゼファーはフランシスに告げなかった。
全てが終わるまで、フランシスのことを自分が勝手に決めたことについて話すつもりはなかった。
知ったならば、きっとフランシスは怒るであろう。
でも、ゼファーは知っていた。
フランシスは皇太子を愛し、皇太子もフランシスを愛していた。
はなから、自分が割り込む余地などなかったのだ。
だから、ゼファーはフランシスと婚約を締結した時から、いかにこの“婚約の解消”を高くアレクサンドロスに売りつけようか考えていた。
魔法契約を締結して、できるだけ、こちらの要望を呑ませること。それが大事だった。
番馬鹿なアレクサンドロスは、“婚約の解消”に大喜びだった。
もうアレは、フランシスを手に入れた気分で大はしゃぎだったろう。
馬鹿だ。
大馬鹿だった。
それが皇太子で、将来の皇帝になるということにまったく不安がないわけではなかったが、彼の周りの臣下達がうまく働いてくれるであろうことを祈るしかなかった。
そんな馬鹿に、あの“消失の槍”を持たせて、世界の滅亡を止めさせなければならないことが心底嫌だった。
そして契約締結から半年、滅亡まで一年を切った時、大森林の周辺に黒い靄が生じ始めたのだった。
内容としては大きく三つであった。
一つ目は、滅亡の危機が消えた時点で、ゼファーはフランシスとの婚約を解消すること
二つ目は、皇太子アレクサンドロスは、ゼファー達の活動へ協力すること
三つ目は、フランシスの魔法研究を邪魔せず、婚姻後も彼に週に三日は塔へ行くことを許すこと
一つ目の内容については、期限の定めがないことを指摘する侍従達が相次ぎ、但し書きで危機が来ない場合でも二年後には婚約を解消する旨が入れられた。
二つ目は、皇太子の協力がない場合は、婚約は解消しないと強い文言も追記で入れられた。
三つ目は、塔のヘクト師からの要望でゼファーが入れておいた文言であった。ヘクト師は、フランシスが皇太子の番認定を受けた後、最終的にはフランシスがさらわれるように皇宮へ連れて行かれるであろうと、残念ながら考えていたようだ。そのため、どうにかフランシスの魔法研究を続けるための方法を考えていたところであったので、皇太子との魔法契約を締結するというこの出来事は渡りに船であった。
晩年、皇太子アレクサンドロスが生涯で最も後悔したこととして、この三つ目の魔法契約の文言に同意したことだと述べている。
これがあるせいで、結果的に、アレクサンドロスは番のフランシスの魔法研究を止めることはできなかった。それほど、この魔法契約の拘束力は強かった。
ただし、ゼファーはこれがアレクサンドロスとフランシスのその後の夫婦の円満の秘訣に繋がったのではないかと考えている。
皇太子アレクサンドロスの愛は重すぎた。
それは誰が見てもそう思うだろう。
竜の愛というものはそういうものだと皆、諦めにも似た思いで見ているだろうけど、それを向けられる側にはたまらない。
フランシスは、前世ではアレクサンドロスを心から愛していだたろう。
だが、その愛ゆえに、自分の研究を犠牲にしなくてはならなかった。
彼は、この世で最高の権力を持つ素晴らしい男に愛されながらも、本当に心の底から幸せであったかというと、ゼファーはそうではないと思っていた。
盲目の愛だった。押し付けられた重い重い愛だった。
だから、今世、週に三日、魔法研究をするために、その重い愛から逃れられる術を持つことができたフランシスは、ようやく夫婦の間のバランスをとれることになったのではないかと考えている。
魔法契約を締結した後、皇太子アレクサンドロスと魔法契約を締結したことについて、契約の内容も含めてゼファーはフランシスに告げなかった。
全てが終わるまで、フランシスのことを自分が勝手に決めたことについて話すつもりはなかった。
知ったならば、きっとフランシスは怒るであろう。
でも、ゼファーは知っていた。
フランシスは皇太子を愛し、皇太子もフランシスを愛していた。
はなから、自分が割り込む余地などなかったのだ。
だから、ゼファーはフランシスと婚約を締結した時から、いかにこの“婚約の解消”を高くアレクサンドロスに売りつけようか考えていた。
魔法契約を締結して、できるだけ、こちらの要望を呑ませること。それが大事だった。
番馬鹿なアレクサンドロスは、“婚約の解消”に大喜びだった。
もうアレは、フランシスを手に入れた気分で大はしゃぎだったろう。
馬鹿だ。
大馬鹿だった。
それが皇太子で、将来の皇帝になるということにまったく不安がないわけではなかったが、彼の周りの臣下達がうまく働いてくれるであろうことを祈るしかなかった。
そんな馬鹿に、あの“消失の槍”を持たせて、世界の滅亡を止めさせなければならないことが心底嫌だった。
そして契約締結から半年、滅亡まで一年を切った時、大森林の周辺に黒い靄が生じ始めたのだった。
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