22 / 62
第一章 前世の記憶
第12話 十五歳 叙勲とその辞退 sideアレク
しおりを挟む
ケルベスク帝国の魔法研究の若き双璧と名高いゼファーとフランシス。
ここ最近の彼らの魔法研究での業績は目覚ましく、二人に叙勲の話が出た。
共に十五歳の天才少年達である。
片や裕福な侯爵家次男、片や貧しい平民出身の少年の二人。
魔法研究において年齢、貴賤は関係ない。
特に魔法研究の専門機関の塔では、その才能の煌めきだけが要求され、いかな高貴な身分であろうと才能無き者は招聘されない。
だからこそ、この二人が稀有な才能を持っていることがわかるだろう。
二人の名前はよく耳にしていた。
自分と同い年である彼らに、式典で会えることを楽しみにしていた。
だが、侯爵家子息のフランシスは叙勲を辞退し、式典にも出席できないと丁寧な断りの連絡が来た。
彼の父である侯爵は額の汗を頻繁に拭きながら答えた。曰く、フランシスは非常に病弱で、五歳の時からたびたび発作を起こしている(注:嘘です)。
なので、皇宮の式典に出席することは彼の精神的負担が大きく、とても出席できないとのことだった。
そこまで大変な発作持ちなら辞退も仕方ないだろうと、皇宮の官吏達はもちろん、皇帝も含めて納得していた。
だが一方で、塔に出入りしたことのある魔法研究を修めた文官・武官の言い分は違った。
「彼は一時も研究から離れたくないんでしょう。塔に朝から夕方までいて、ずっと研究三昧ですから」
「そもそも発作持ちなら、そんなに塔にこもれないだろう」
そうした言葉から、研究に没頭する変人を思い浮かべてしまうのだが、詳しく聞くとそうではない。
むしろフランシスは、麗人だと言う。
「白金の髪に、桃色の瞳という稀有な容姿をしていて、それはそれは美しい者です。あのような素晴らしい研究を修めた者がそうした容姿を持っていることにも驚きました」
そう話してくれた文官の顔を見返した。
白金の髪に、桃色の瞳?
脳裏に、夢の中の番の姿が浮かんだのは仕方がないだろう。
彼に会いたいと話しても、彼の父親は「病弱で発作持ちなので、どうぞご容赦ください」と辞退の言葉を繰り返すのみ。
そして叙勲の式典に現れた、双璧の片割れ、ゼファーにフランシスの話を聞こうとしても、彼は冷ややかで、にべもなかった。
「フランシスは病気がちなのです。発作も起こしますので、決して無理に呼び寄せようとしないでください」
彼の茶色の瞳には、憎しみにも似た光が浮かんでいた。
ここ最近の彼らの魔法研究での業績は目覚ましく、二人に叙勲の話が出た。
共に十五歳の天才少年達である。
片や裕福な侯爵家次男、片や貧しい平民出身の少年の二人。
魔法研究において年齢、貴賤は関係ない。
特に魔法研究の専門機関の塔では、その才能の煌めきだけが要求され、いかな高貴な身分であろうと才能無き者は招聘されない。
だからこそ、この二人が稀有な才能を持っていることがわかるだろう。
二人の名前はよく耳にしていた。
自分と同い年である彼らに、式典で会えることを楽しみにしていた。
だが、侯爵家子息のフランシスは叙勲を辞退し、式典にも出席できないと丁寧な断りの連絡が来た。
彼の父である侯爵は額の汗を頻繁に拭きながら答えた。曰く、フランシスは非常に病弱で、五歳の時からたびたび発作を起こしている(注:嘘です)。
なので、皇宮の式典に出席することは彼の精神的負担が大きく、とても出席できないとのことだった。
そこまで大変な発作持ちなら辞退も仕方ないだろうと、皇宮の官吏達はもちろん、皇帝も含めて納得していた。
だが一方で、塔に出入りしたことのある魔法研究を修めた文官・武官の言い分は違った。
「彼は一時も研究から離れたくないんでしょう。塔に朝から夕方までいて、ずっと研究三昧ですから」
「そもそも発作持ちなら、そんなに塔にこもれないだろう」
そうした言葉から、研究に没頭する変人を思い浮かべてしまうのだが、詳しく聞くとそうではない。
むしろフランシスは、麗人だと言う。
「白金の髪に、桃色の瞳という稀有な容姿をしていて、それはそれは美しい者です。あのような素晴らしい研究を修めた者がそうした容姿を持っていることにも驚きました」
そう話してくれた文官の顔を見返した。
白金の髪に、桃色の瞳?
脳裏に、夢の中の番の姿が浮かんだのは仕方がないだろう。
彼に会いたいと話しても、彼の父親は「病弱で発作持ちなので、どうぞご容赦ください」と辞退の言葉を繰り返すのみ。
そして叙勲の式典に現れた、双璧の片割れ、ゼファーにフランシスの話を聞こうとしても、彼は冷ややかで、にべもなかった。
「フランシスは病気がちなのです。発作も起こしますので、決して無理に呼び寄せようとしないでください」
彼の茶色の瞳には、憎しみにも似た光が浮かんでいた。
53
お気に入りに追加
1,968
あなたにおすすめの小説
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

初夜の翌朝失踪する受けの話
春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…?
タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。
歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け

好きだと伝えたい!!
えの
BL
俺には大好きな人がいる!毎日「好き」と告白してるのに、全然相手にしてもらえない!!でも、気にしない。最初からこの恋が実るとは思ってない。せめて別れが来るその日まで…。好きだと伝えたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる