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第一章 前世の記憶
第11話 十五歳 叙勲とその辞退
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僕とゼファーは、出会った時から、魔法の話で大盛り上がりだった。
彼は、僕が「あ」と言えばそれで次の言葉を予想でき、僕も彼が「い」と言えばその意味も理解できていた。
すべてを分かり合える僕らを見て、まるで精神感応がある双子のようですねとグースは言った。
僕には兄はいたけれど、弟はいない。
もし弟がいたら、こんな感じなのかなと思った。
ゼファーは、僕のことをフランと愛称で呼び、慕ってくれた。
そして臆面もなく好きだと告げた。
同じものを一緒に追うことのできる、愛おしい“魂の双子”だと言った。
彼と一緒にいて、議論したり研究したりすることはとても楽しい。
でも、前世の伴侶であったアレクとはまた違う存在だった。
アレクへの愛情は、空気のようにそこに在って当然のものだった。
僕を愛しているから、彼は僕を縛ろうとしていた。
それを煩わしく思うことは多かったけど、でもそれは彼だったからこそ我慢できるものだった。
彼がよく口にする、番だから仕方がない……という言葉と同じものだ。
僕とゼファーは共同研究に取り掛かることにした。
二人で研究すれば目覚ましい成果を挙げることができる。
前世では考えられない一大プロジェクトだった(前世で彼と共同研究をすると言ったら、絶対にアレクはそれを許そうとしなかったろう)。
彼は古代時代の遺物や魔道具研究が専門で、僕は古代人の魔法武器研究が専門だったけれどね。遺跡探掘や共同実験など互いに互いの研究を補った。
半年ペースで僕らは研究成果を発表し、その目覚ましさから、二年が経つ頃には僕ら二人に叙勲の話が出ていた。
侯爵家次男の僕は、爵位を得た後に新たに家を建てるのもいいかと思った。だけど、授与式のため皇宮へ行かないといけないと聞いた。それで辞退することにした。
皇太子であるアレクと出会う機会はなるべく避けたかった。
一方のゼファーは爵位を受け取ると言う。
「なるべく権力を持てる地位にあった方が、これからはいいと思うから」
となんだか意味深なことを言っている。
ゼファーは平民出身だった。
彼は貧しい僻地出身で、その魔法の才を認められて魔術師に取り立てられ、とんとん拍子で塔までやってきた。
立身出世のサクセスストーリーに見える反面、彼は非常に苦労してきた。
ゼファーは皇宮の式典に出席して、爵位を受け取ったが、帰宅後、どこか意地悪な笑みを浮かべて僕に言った。
「皇太子殿下がフランに会いたがっていたよ。だけど、病気が再発したから治療に専念したい。授与は辞退するし、今後も式典のようなものには、けして出席できないと話しておいた」
病弱設定は相変わらず生きているね。
だけど、ゼファーのその様子は、皇太子殿下に何か含みがあるような雰囲気だった。
「君に会いたいと大層しつこかったね。全部、発作が起きる恐れがあるからとお断りしておいたよ。もし君の方にもそういう話がきたら、君もきちんと断らないとダメだからね」
僕はうなずいた。
でも、なんでゼファーはアレクのことをこんなに嫌っているのだろう。
前世の時と違って、彼はアレクと接点がないはずなのに。
(前世の時、ゼファーはたびたび皇宮へ足を運び、僕と研究のことを話したがっていた。アレクが何度も追い返していたことを後に知った)
前世では、一たび会えば、不倶戴天の敵のようにいがみあっていた。
だけど今世では、そうまで憎む理由はない。
「皇太子殿下のことが嫌いなの?」
「ああ、大嫌いだね」
「どうして?」
「彼がすべてをダメにしたからだ」
過去形でそう吐き捨てた。
「だから、うんと、苦しめばいい」
一体、彼らの間には何があったんだろう。
よくわからなかった。
彼は、僕が「あ」と言えばそれで次の言葉を予想でき、僕も彼が「い」と言えばその意味も理解できていた。
すべてを分かり合える僕らを見て、まるで精神感応がある双子のようですねとグースは言った。
僕には兄はいたけれど、弟はいない。
もし弟がいたら、こんな感じなのかなと思った。
ゼファーは、僕のことをフランと愛称で呼び、慕ってくれた。
そして臆面もなく好きだと告げた。
同じものを一緒に追うことのできる、愛おしい“魂の双子”だと言った。
彼と一緒にいて、議論したり研究したりすることはとても楽しい。
でも、前世の伴侶であったアレクとはまた違う存在だった。
アレクへの愛情は、空気のようにそこに在って当然のものだった。
僕を愛しているから、彼は僕を縛ろうとしていた。
それを煩わしく思うことは多かったけど、でもそれは彼だったからこそ我慢できるものだった。
彼がよく口にする、番だから仕方がない……という言葉と同じものだ。
僕とゼファーは共同研究に取り掛かることにした。
二人で研究すれば目覚ましい成果を挙げることができる。
前世では考えられない一大プロジェクトだった(前世で彼と共同研究をすると言ったら、絶対にアレクはそれを許そうとしなかったろう)。
彼は古代時代の遺物や魔道具研究が専門で、僕は古代人の魔法武器研究が専門だったけれどね。遺跡探掘や共同実験など互いに互いの研究を補った。
半年ペースで僕らは研究成果を発表し、その目覚ましさから、二年が経つ頃には僕ら二人に叙勲の話が出ていた。
侯爵家次男の僕は、爵位を得た後に新たに家を建てるのもいいかと思った。だけど、授与式のため皇宮へ行かないといけないと聞いた。それで辞退することにした。
皇太子であるアレクと出会う機会はなるべく避けたかった。
一方のゼファーは爵位を受け取ると言う。
「なるべく権力を持てる地位にあった方が、これからはいいと思うから」
となんだか意味深なことを言っている。
ゼファーは平民出身だった。
彼は貧しい僻地出身で、その魔法の才を認められて魔術師に取り立てられ、とんとん拍子で塔までやってきた。
立身出世のサクセスストーリーに見える反面、彼は非常に苦労してきた。
ゼファーは皇宮の式典に出席して、爵位を受け取ったが、帰宅後、どこか意地悪な笑みを浮かべて僕に言った。
「皇太子殿下がフランに会いたがっていたよ。だけど、病気が再発したから治療に専念したい。授与は辞退するし、今後も式典のようなものには、けして出席できないと話しておいた」
病弱設定は相変わらず生きているね。
だけど、ゼファーのその様子は、皇太子殿下に何か含みがあるような雰囲気だった。
「君に会いたいと大層しつこかったね。全部、発作が起きる恐れがあるからとお断りしておいたよ。もし君の方にもそういう話がきたら、君もきちんと断らないとダメだからね」
僕はうなずいた。
でも、なんでゼファーはアレクのことをこんなに嫌っているのだろう。
前世の時と違って、彼はアレクと接点がないはずなのに。
(前世の時、ゼファーはたびたび皇宮へ足を運び、僕と研究のことを話したがっていた。アレクが何度も追い返していたことを後に知った)
前世では、一たび会えば、不倶戴天の敵のようにいがみあっていた。
だけど今世では、そうまで憎む理由はない。
「皇太子殿下のことが嫌いなの?」
「ああ、大嫌いだね」
「どうして?」
「彼がすべてをダメにしたからだ」
過去形でそう吐き捨てた。
「だから、うんと、苦しめばいい」
一体、彼らの間には何があったんだろう。
よくわからなかった。
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