前世の愛が重かったので、今世では距離を置きます

曙なつき

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第一章 前世の記憶

第10話 十五歳 番の夢 sideアレク

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 ここ一、二年、夜になると繰り返し見る夢がある。

 夢の中で僕は美しい少年に愛を囁いている。
 彼を抱きしめ、そして彼も僕に抱きついてくる。

 とても愛おしい存在。

 何度も口づけし、何度も抱きしめ、何度もその身体を求めた。
 ためらいながらもそれに応えてくれる彼を愛していた。

 そう、愛していたのだ。

 一目見たときから、僕は彼が、僕の番であるとわかった。
 
 全て、僕のために在る番だった。

 だから僕は叫んだ。

 君は一体どこに居るの?
 どうして僕の前に現れないの?
 ずっと、ずっと探し求めているのに。

 一度はあきらめようとした心が、夢の中で繰り返し現れる愛しい存在に激しく波立つ。

 そして彼を抱き締めた瞬間に、やはりどうしても諦められないと思った。
 泡沫うたかたのように消え去る彼を求める気持ちは、夢が醒めてからも消えることはなかった。



 目覚めた時、僕は父と母に、婚約者であったエレノア嬢との婚約関係を解消したいと告げた。
 父と母は、それを予感していたようで、特に母は青ざめた顔でうなずいていた。

「……それで、貴方はどうするの?」

「どうにもしません。……番が僕の前に現れるまで待つしかないでしょう」

 現れるかどうかわからない番の存在を待ち続けると言う僕を、両親は驚きと哀れみの表情で見つめる。
 
 だけど、今の状況は、と僕は感じていた。

 夢の中、僕の愛しい番はその姿を現していたのだ。

 サラサラとした白金の髪に、桃色の大きな瞳。
 白い肌に華奢な体躯。
 なぜか僕に困ったように微笑みかける少年。

 この世に僕の番が存在することは確かだと確信していた。
 彼を探すしかないと思った。
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