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第一章 前世の記憶
第8話 十二歳 充実した魔法研究生活
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塔へのパスを手に入れてから、僕は毎日のように塔へ赴き、グースや他の魔術師達と議論を交わし、塔の主ヘクト師の指導を受けた。
おかげで、僕は貴重な古代文書の解読もできたし、その古代文書から古代の魔法武器が恐ろしいほど魔力を消費することもわかった。
それだけではなく、同時並行して僕は浮遊魔法の仕組みや、古代の魔石の取り扱いについても研究を進めた。
充実した魔法の研究生活だね。
そうなると時間の経つのが早い。初めて塔へやってきた時から、早くも六年が過ぎていた。
グースは毎日僕と一緒に塔に行って、僕と一緒に屋敷に戻ると、今度は自分の家に帰る。
いっそのこと、彼は僕の屋敷で暮らすといいんじゃないかと言うと、少し照れながら言った。
「少し前に、私も結婚したんです」
「うわっ、おめでとう。魔法研究三昧なのに、よく結婚できたね」
グースも僕に勝るとも劣らない魔法研究家だ。塔に引きこもり、三度の飯よりも魔法書を読むことが好きな男だった。絶対に家庭生活をないがしろにしているはずだ。
だけど、彼はこう言った。
「妻も魔術師なので」
羨ましい!!!!
理解のある妻!!!!
僕も、前世のアレクが魔法研究に理解があればよかったのにと思った。
彼のことは大好きだったし、愛していた。
だけど、彼の理解を得ることはできなかったんだよね。
それで、そのせいで。
それを思い出そうとして、ズキンと頭の奥が痛くなった。
ふいに頭を押さえて動きを止めた僕に、グースは心配そうに近寄る。
「大丈夫ですか? 顔色がすごく悪いですよ」
「……大丈夫、ちょっと頭が痛かっただけです。じっとしていれば治ると思います」
「フラン様は、もう少し研究を抑え気味にした方がいいですよ。あなたは成長期なのに、いつも魔法書を持って引きこもっていて。あまり健康的ではないです」
同じ生活傾向の同志の彼に言われたくないなと苦笑すると、たぶんグースにもそれが伝わったんだろう。
彼も苦笑いを返した。
「まだお若いんだから、研究できる時間はまだまだあるじゃないですか。ヘクト様も、フラン様は百年に一度の天才魔術師だとお話しておりました。あなたの見る視点は我々よりも先をいっている。あなたの研究で魔法の歴史はより先に進むと言っています。それだけみんな期待しているんです。だから、お身体は大事にしてください」
「ありがとうございます」
褒められてちょっと頬が緩む。
そういえば、前世でも僕の魔法の知識を惜しんでくれた人がいた。
僕が皇太子の伴侶となったことは、将来の魔法の発展への大きなマイナスで、離縁して君は塔に来るべきだと言っていた。
それをアレクが耳にしたら、アレクが激怒して彼を殺してしまうかも知れないと恐れたっけ。
彼の名前は確か……。
(ゼファー。東の塔のゼファーといったっけ。彼も僕と同い年だったな)
彼も十二才なら、もう東の塔に所属しているはず。
調べてみようと思った。
おかげで、僕は貴重な古代文書の解読もできたし、その古代文書から古代の魔法武器が恐ろしいほど魔力を消費することもわかった。
それだけではなく、同時並行して僕は浮遊魔法の仕組みや、古代の魔石の取り扱いについても研究を進めた。
充実した魔法の研究生活だね。
そうなると時間の経つのが早い。初めて塔へやってきた時から、早くも六年が過ぎていた。
グースは毎日僕と一緒に塔に行って、僕と一緒に屋敷に戻ると、今度は自分の家に帰る。
いっそのこと、彼は僕の屋敷で暮らすといいんじゃないかと言うと、少し照れながら言った。
「少し前に、私も結婚したんです」
「うわっ、おめでとう。魔法研究三昧なのに、よく結婚できたね」
グースも僕に勝るとも劣らない魔法研究家だ。塔に引きこもり、三度の飯よりも魔法書を読むことが好きな男だった。絶対に家庭生活をないがしろにしているはずだ。
だけど、彼はこう言った。
「妻も魔術師なので」
羨ましい!!!!
理解のある妻!!!!
僕も、前世のアレクが魔法研究に理解があればよかったのにと思った。
彼のことは大好きだったし、愛していた。
だけど、彼の理解を得ることはできなかったんだよね。
それで、そのせいで。
それを思い出そうとして、ズキンと頭の奥が痛くなった。
ふいに頭を押さえて動きを止めた僕に、グースは心配そうに近寄る。
「大丈夫ですか? 顔色がすごく悪いですよ」
「……大丈夫、ちょっと頭が痛かっただけです。じっとしていれば治ると思います」
「フラン様は、もう少し研究を抑え気味にした方がいいですよ。あなたは成長期なのに、いつも魔法書を持って引きこもっていて。あまり健康的ではないです」
同じ生活傾向の同志の彼に言われたくないなと苦笑すると、たぶんグースにもそれが伝わったんだろう。
彼も苦笑いを返した。
「まだお若いんだから、研究できる時間はまだまだあるじゃないですか。ヘクト様も、フラン様は百年に一度の天才魔術師だとお話しておりました。あなたの見る視点は我々よりも先をいっている。あなたの研究で魔法の歴史はより先に進むと言っています。それだけみんな期待しているんです。だから、お身体は大事にしてください」
「ありがとうございます」
褒められてちょっと頬が緩む。
そういえば、前世でも僕の魔法の知識を惜しんでくれた人がいた。
僕が皇太子の伴侶となったことは、将来の魔法の発展への大きなマイナスで、離縁して君は塔に来るべきだと言っていた。
それをアレクが耳にしたら、アレクが激怒して彼を殺してしまうかも知れないと恐れたっけ。
彼の名前は確か……。
(ゼファー。東の塔のゼファーといったっけ。彼も僕と同い年だったな)
彼も十二才なら、もう東の塔に所属しているはず。
調べてみようと思った。
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