前世の愛が重かったので、今世では距離を置きます

曙なつき

文字の大きさ
上 下
12 / 62
第一章 前世の記憶

第6話 六歳 塔のパスを手に入れた

しおりを挟む
 グースが、魔術師達の専門機関である塔への特別なパスを手に入れてくれた。
 これは、魔法について真剣に議論したい者達だけが手に入れることのできるパスで、六歳で僕がそれを手に入れることができたのは、例外中の例外であるとグースは言っていた。まぁ、外見年齢は六歳とはいえ、実体は前世の精神年齢が加算されているからね。

 塔と名前はついているけれど、その建物は塔の形はしていない。煉瓦作りの建物で、入口には兵士が立っていた。
 グースがくれたパスは、ブドウのような色味をした石が嵌っているペンダントだった。
 兵士達の前で、僕がパスを入口のプレートにかざすと、入場が許可されたようで、建物の重そうな扉がひとりでに開いていく。
 グースが案内するように、僕の前に立って歩きだす。その後を僕はきょろきょろとしながらついていった。

 前世からの憧れの塔。
 前世では、常に夫に抱きつぶされ、僕は塔へ行くことはできなかった。
 今世でついに、塔へ行くという野望が果たされて、本当に胸熱だった。

 まずは塔の主といわれているヘクト師に挨拶をしようと、グースが案内してくれた。
 ヘクト氏は建物の最上階の一番奥の部屋にいた。
 彼は、白髪に、白くふさふさの長い髭をしたおじいさんだった。
 
 僕は緊張しながら挨拶をし、その後、彼と魔法について二、三話を交わす。
 僕が、大陸を蒸発させたという古代の魔法武器について生涯の研究にしたいと告げると、彼は幾つかアドバイスをくれた。
 そして幼い姿の僕をけしてバカにすることもなく、興味深く話を続けてくれたことには感謝したい。

 ヘクト氏との会話を終えると、グースは建物内の案内をしてくれた。
 やはり、魔法書の蔵書数は突出しており、僕は残りの時間、塔の図書室にこもることになった。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)

初夜の翌朝失踪する受けの話

春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…? タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。 歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け

博愛主義の成れの果て

135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。 俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。 そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

処理中です...