騎士団長が大変です

曙なつき

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【短編】

副騎士団長は少し怒っています

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 先日、夢の中で思う存分バーナード騎士団長と愛を確かめ合い、大満足のフィリップ副騎兵団長はここ最近、大層機嫌が良かった。
 可愛い子供達もスクスクと成長している(相変わらず下の双子の人狼の仔は、狼の姿のままであった)。
 伴侶の団長も変わらず凛々しくて格好いい。
 
 子供達がいると、何かと愛し合うことに差し障りがあるため、最近では夢の中で落ち合うようになったバーナードとフィリップである。
 夜に目覚めたアレキサンドラが、仔狼達を腕に抱いて廊下に出て「バーナードお父様、フィリップお父様はどこなの?」と探される恐れもない(二人は別室で事に及ぼうとしていた)。

 とにかく、子供達に踏み込まれても大丈夫!!
 夢の中は安心安全な環境なのである。

 その日の夜も、フィリップはバーナードが夢の中に降りてくるのを待っていた。
 その日、現れたバーナードは少年のバートの姿を取っていた。そのことにフィリップは少し驚いていた。

「どうしたんですか?」

 ふわりと自分の腕の中に降りてくる。
 なんとなしにお姫様抱っこのような、バートを抱き上げた体勢になっている。腕の中の少年に話しかけると、彼は「まずは下ろせ」と言ったので、渋々とバートを下ろした。

 バートは、自分達のすぐそばに、すでにフィリップが夢で作り上げた大きな寝台が置かれていることを見て、少しばかり赤面しながら咳払いをした。フィリップはもう準備万端、バーナードが夢に現れるなり、二人して寝台に雪崩こむつもりだったらしい。バーナードの出現を手ぐすね引いて待ち構えていた感がある。

「フィリップ副騎士団長、さ来月は何があるか覚えているか」

 そう言われたので、ついフィリップはバートの前で背筋を伸ばして直立し、こう答えた。

「さ来月には王立と王都警備隊との合同訓練があります」

 バートは両手を腰の後ろに回し、うんうんと頷きながら続ける。

「そうだ。さ来月には王立騎士団と王都の警備隊との合同訓練という名を借りた、試合がある」

 試合

 フィリップはバートの顔をマジマジと見つめる。
 王宮での御前会議で、その合同訓練の話が陛下の口からされた時、やたらバーナード騎士団長の茶色の目が爛々と輝いていると思っていたが。
 彼は合同訓練のことを、競い合う試合のように捉えているようだ。
 元から勝負事には負けず嫌いの質であるバーナードである。当然負けるつもりはないようだ。

「そこで、我々王立も明日からより一層の訓練をしなければならない」

 まるで王都の騎士団の団長室で交わされる話のようにされている。
 
「団長、今は私の夢の中です……」

 拳を挙げて力説するバート少年に、フィリップはそう言う。
 夢の中まで、仕事の話を持ち出すことは勘弁して欲しかった。

 だがここ最近、仕事がとにかく忙しくて、王立騎士団の拠点でそうした話すらじっくりすることが出来なかった。
 だからこそ、バーナードは夢の中でまで仕事の話をしようとしているのだろう。
 その考えは理解できる。

 だが、ここはフィリップの夢の中なのだ。

 それに何故、大人のバーナードの姿ではなく、少年のバートの姿を取っているのか謎である。
 そのことを尋ねると、バートは頬を染めながらこう言った。

「お前は、俺が夢に行くといつも押し倒すじゃないか」

 夢に降りてくるバーナードをいつも捕まえて、即座に抱いているフィリップである。その通りなので否定できない。
 そして淫魔であるバーナードも、フィリップに求められると応えずにはいられないのであった。
 少年のバートの姿で夢の中に降りてきたのは、すぐさまフィリップが彼を捕まえて事に及ぼうとするのを防ぐためだったらしい。実際、フィリップは何事かと思って、彼をベットに押し倒すことはなかった。

 しかし、フィリップとしては面白くない。
 夢の中まで仕事の話はするものではないだろう。
 たとえ、現実の世界では仕事が山のように積み上がっていて、その話をじっくり出来ない状態があろうとも。

 少しばかり不機嫌になったフィリップはバートの細い腰を両手で抱き上げ、寝台の上にぽんと放っていた。

「!?」

「少年姿の貴方は軽くて扱いやすいのですよ。こうして」

 ぐっと足を開かせ、それが閉じられないように足の間に身を進めさせる。

「!!」

 フィリップの固く張り詰めたモノをゴリとその腰に押し付けるようにすると、バートはわなわなと震えていた。

「お前!!」

「どうせ合同訓練でも王立が勝利します」

 バートの頬に口づけを落とす。

「貴方がいるのだから、負けるはずがないでしょう」

「それでも訓練のために我々王立も」

 なおもその話をしようとするバートに、フィリップは「はー」と露骨にため息をついた。
 それから、願ったのだ。

 するとバートの頭にポンと三角の狼の耳と、後ろにフサフサとした黒い尻尾が現れる。

「!!」

 慌てて自分の頭に手をやり、再び狼の耳が現れていることにバートは呆れたようにフィリップを見つめていた。

「お前はケモミミが好きすぎる!!」

「私が人狼だからでしょうかね。貴方のその耳や尻尾の生えた姿がどうにも可愛くて仕方ないのです」

 フサフサとした黒い尻尾を乱暴に掴むと、バートは「!!」と言葉を一瞬失って真っ赤になり、そのまま動きを止めてしまった。
 相変わらず尻尾を触れられることは嫌らしい。

「や、やめろと言っているだろう!! そこは触るな!!」

「仕事の話を夢の中まで持ち込んだ貴方への“お仕置き”です」

「フィリップ!!」

 尻尾を掴まれ、それを揉むようにされるともはや抵抗する力も無くなるのか、バートは涙目になって身をよじるが、押し返す手の力も弱かった。

 バートにのしかかるようにしたフィリップは、荒々しく彼を組み伏せながら言った。

「私の夢の中では仕事の話はもう二度としてはなりませんよ」

「糞!! 覚えていろよ、フィリップ!!」

「まだ分かっていないようですね」

 ズルリとズボンを下履きごと一気に落とされ、バートの目は見開かれていた。
 足首をぐっと持って大きく開脚させたまま、そのまま貫いた。

 声にならない叫び声が上がる。深々と奥深くまで貫かれ、もはや身動きもとれないようだった。

「…………ぁぁぁ」

「腰をこうやって持ち上げて抱くと」

 フィリップはバートの細い腰を持ち上げて抱いて、仰向けのバートの肩だけが寝台についているように形をとっていた。
 尻尾も上に持ちあがって、その背で潰されることはない。


「痛みはないですよね」

 ケモミミ姿で愛し合う時には、いつも正常位では尻尾が潰れると言って嫌がるバーナード騎士団長である。だが、ここまで腰を抱き上げて上にあげさせれば、尻尾も持ち上がって潰れることはないのだ。

「この変態が!!」

 よほど腹に据えかねているのか、バートは悪態をつき続けていた。

「その変態が貴方の伴侶なんですよ」

 変態とののしる男の男根を深々と後孔で咥え込んでしまっている。バートは眉間に皺を寄せ、なおも文句を言いたげだったが、フィリップが突き上げるようにして攻め始めると、文句を言うどころではなくなってしまっていた。


「あっああっ、ん………」

 寝台が大きく軋む。そのまま身体を引き上げて、今度は対面座位の形に持っていくと、なおも深々と穿たれてしまったバートはもはや喘ぐしかなかった。

「これじゃあ、“お仕置き”になりませんね」

 双丘の谷間には埋まったフィリップの男のモノが激しく抜き差しされるたびに、バートの尻尾も揺れ、彼はフィリップにしがみつくようにして喘いでいた。激しく攻められても、全て強い快感にそれが置き換わるのが淫魔である。実際バートの前も、触れもしないのに勃ち上がり、先端の割れ目からたらたらと先走りを垂らし続けている。

 途中でフィリップは何か思いついたのか、バートの腰を持ち上げて抜き差しをするのを止めてしまった。中途半端に昂らせられたバートが、フィリップを催促するように睨みつけると、フィリップは彼の耳元でこう言った。

「自分でいいところに当たるように動いてください」

「フィリップ」

 ギリリと彼が奥歯を噛んだ音がする。

「欲しいのでしょう? 団長」

「この、抜け」

 頭にきたバートが、身をよじり、身を起こして離れようとしたが、それを許すフィリップではない。すぐさま後ろの尻尾を掴まれてしまい、彼は大きな声で叫んだ。びくびくとその身が大きくひきつる。

「あああぁ!!」

「動かして下さい」

「フィリップ!!!!」

 真っ赤になり、怒り狂った様子の彼の唇に噛みつくように口づけした。

「じゃあ、今、仕事の話をしましょうか」

「お前は意地悪だ!!!!」

「貴方が悪い」

 もう一度フィリップはため息をつくと、彼の腰を抱きかかえるようにして、小刻みに奥を突き始めた。バートはそうされることが好きなのだ。

「ふ…………あぅ」

 黒い尻尾がゆらゆらと揺れる。その肌もしっとりと汗に濡れ、瞳も欲に美しく輝く。
 やがて彼も貪欲に快楽を求めようと、ゆるゆると腰を動かし始めたので、フィリップは笑みを浮かべた。

 腰のなだらかなラインを手で触れ、果実のような双丘を撫でる。そして一度大きく引き抜くと、男根を最奥まで勢いよく挿入した。たまらずバートはフィリップにしがみついてすすり啼いた。

「あっ、あああああっ」

 きゅうきゅうと男のモノを搾り取るように彼の内部が蠢いて、フィリップもたまらず彼の中へと放つ。その奥へと飛沫の叩きつけられる感覚に、バートはなおも小さく達き続けていた。




 結局、バートは散々、夢の中でフィリップに意地悪をされるように翻弄されたことが堪えたのか、彼はそれ以降、仕事の話を夢の中へ持ち込むことはなかった。
 
 なお、王立騎士団と王都警備隊の合同訓練は、当然のように王立騎士団の圧勝で終わり、そのことで、不機嫌になっていたバーナード騎士団長の機嫌は、少し上向いたのであった。
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