騎士団長が大変です

曙なつき

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【短編】

騎士団長とケモミミ事件 再び (3)

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 そして、久々にバーナードはフィリップの夢の中へ渡ったのだ。
 ここしばらく、淫魔でありながらもバーナードは他人の夢へ渡ることはなかった。
 その理由は簡単で、伴侶であり、人狼という魔物で、精力に満ち溢れているフィリップに、バーナードは常に満たされており、夢を渡って他人の精力を貪る必要はなかったからだ。
 
 夢に入った途端、待ちかねていたようにフィリップが夢の中に降りてきたバーナードの身を抱き止めた。
 そしてぎゅっと抱きしめる。

「御無事だったのですね」

「……当たり前だ」

 フィリップを見送った後、バーナードは子供達と仲良く過ごしていた。アレキサンドラは夕食の支度を手伝い、仔狼達もバーナードとアレキサンドラの足元を跳ね飛びながら、嬉しそうにしていた。それから一緒に仔狼達に絵本を読んでやり、その日はバーナードとフィリップの部屋の大きな寝台の上で、皆で横になった。
 バーナードは眠りに落ちて、夢を渡ってフィリップの元へやって来たのだった。
 そうして子供達と過ごしたことをフィリップに報告すると、フィリップも嬉しそうに笑みを浮かべていた。

「良かったです。もう子供達も充分貴方の役に立ってくれているのですね」

「ああ、アレキサンドラは料理も上手いのだぞ」

 夜は大きな骨付き肉を焼き上げたものを食卓へ出したのだが、添え物のポテトなどはアレキサンドラが作ってくれた。仔狼達は喜んで肉にかぶり付き、ポテトもムシャムシャ口にしていた。
 アレキサンドラと仔狼達が抱き合いながら眠る様子を思い出して、バーナードが目を細めていると、バーナードの顎をフィリップは指で持ち上げ、それから口づけた。

 一瞬で、夢の中に大きな寝台が現れ、二人してその柔らかな寝台の上に倒れる。フィリップはバーナードの上にのしかかり、そしてその手で彼のシャツのボタンを外し始めている。そうしながらもチュッチュッと音を立てて口づけを落としていく。

「フィリップ」

 バーナードの茶色の目にも、久々の二人きりのこの状況に、紛れもない欲望の光が輝いていた。
 子供達が誕生した後、二人だけの時間がまったく無かったわけではない。アレキサンドラが王宮に王族として迎え入れられるための教育を受けている間、仔狼達は妖精達の国へ渡っている。だが、日中はバーナードもフィリップも王立騎士団の騎士として任務に勤め、自宅に戻った頃にはアレキサンドラや仔狼達も帰宅している。子供達が深く寝入った時に身体を重ねることもあるが、どうしても愛し合うことが慌ただしいものになる。

 だからこうして、夢の中で、子供達にも邪魔されずに会うことができるなど、彼らにとって滅多にない機会であった。
 この後の期待があって当然で、フィリップの青い目は怖いくらいにギラギラと輝いていた。

「バーナード」

 すでに興奮したように、荒く息をしている。
 口づけをしているうちに、バーナードはふと、違和感に気が付いた。
 
「痛いぞ、フィリップ」

 のしかかられて、何かが後ろで潰れていて痛くて、バーナードはフィリップの身体を押しのけた。
 そしてその時気が付いた。自分の後ろに黒いフサフサとした尻尾があることに。

「………………は?」

 またしてもケモミミ?

 呆れたようにフィリップを見つめると、目の前の金髪の男は心底ウットリとした様子でバーナードの顔を見つめていた。

「団長にケモミミ……久しぶりです」

 非常に嬉しそうな顔をしている。
 そして、フィリップの金髪の頭の上にも、三角形の狼の耳がびょこんと生えている。そして彼の背中では非常に速いスピードでパタパタパタと金色の大きな尻尾が揺れていた。
 当然、自分の頭にも耳があるのだろうと思って触れてみれば、案の定、黒い三角形の狼の耳が生えている。

「お揃いですね。今回は私も、団長もケモミミなんです。とても嬉しいです」

 そう言って身を擦り寄せてきて、甘くバーナードの首筋を噛んだ。

「ん……」

 団服のボタンを外し、手をバーナードの鍛え抜かれたその胸元に這わせていく。その間にも、フィリップの尻尾はひっきりなしに左右に揺れて、今のこのシチュエーションに歓喜を表していた。
 チュッチュッと口づけをバーナードの顔に落としていく。

「団長に尻尾、ケモミミ、最高です」

「フィリップ」

「はい、ちゃんとわかっていますよ。正面からはダメなんですよね。尻尾が潰れて痛いのでしょう?」

 そう言うと、フィリップは馬鹿力を発揮して、バーナードをころりと寝台の上で転がし、うつ伏せにする。
 そしてフサフサとしたその黒い尻尾を両手で掴んだ。
 そこが急所であるバーナードはのけぞり、声にならない悲鳴を上げる。

「!!!!!!」

「相変わらず、敏感なんですね。ビクビクと震えていますね、団長」

 見れば、バーナードは唇を震わせ、切なげに眉を寄せている。

「そこは、触るな」

 フィリップは、バーナードのズボンからベルトを引き抜き、それから流れるような動作でそのズボンを下着ごと下に下ろす。
 むき出しとなった、双臀に手をかけると、ほどよく濡れてきている後孔に、フィリップは猛立った男の切っ先を押し当て、ゆっくりと挿入していったのだった。

「あっああああっ」

 彼の黒い尻尾がブワリと膨らみ、そしてピンと立ちあがっている。

「そんなにキツク締めないで下さい、力を抜いて」

 フィリップは彼の前も指で巧みに扱きつつ、導いていく。
 彼の中は非常に熱く、ヌルリとした感触でフィリップの男のモノをよく締めあげた。
 バーナードの前の鈴口からもトロトロと欲望が滴り落ちて、彼も充分快楽を得ていることが分かる。
 フィリップの後ろで揺れる金色の尻尾と、彼の黒い尻尾が絡み合うように揺れていく。

「あう……うう」

 白いシーツを鷲掴み、四つん這いの姿で腰を揺らしているバーナードの姿が非常に煽情的で、フィリップは昂って仕方なかった。
 彼は自分の伴侶で、そして雌なのだ。
 誰よりも強い雄でありながらも、自分の前ではこんなにはしたなく乱れてくれる。
 
「フィリップ、フィリップ」

 切なげに名を呼ばれ、フィリップはバーナードを後ろに振り向かせ、口づけた。舌を絡める濃厚なそれに、バーナードの瞳も潤んでいる。

 子供達が成長し、独り立ちできるようになったら。
 そして、バーナードが騎士団を退職する日が来たら、彼を魔界の人狼の村の、あの大きな木の下の屋敷へ連れていこう。
 そこで彼と一緒に暮らす。ずっと愛し合って。
 その日が来ることが待ち遠しくてたまらない。



 淫魔である彼は、年を取らない。
 いつの頃からか、彼の外見が凛々しい男の姿から年を経ることなく変わらないことに気が付き始めた。今、そのことに気が付いているのは自分とマグルくらいであろう。
 マグルは、自分が隷属させている“淫魔の王”ウルディヌスらも年を取っていない事実を知っていた。だから、“淫魔の王女”位を持つバーナードも、その外見の時を止めたまま過ごしている。
 当然、周囲の人々は、バーナードが年を取らないことに気が付き、彼が人間ではないことを知る日がやってくるだろう。
 
 そう気づかれる前に、いつか、彼はこの人の世界から離れなければならない日がやってくる。
 そのことを彼は、知っているのだろうか。理解しているのだろうか。





 身体の奥深くまで貫くと、その茶色の目の縁から涙が零れ落ちる。過ぎる快感は時に苦痛にも似ている。
 












 でもどんな時でも

 ずっと、彼のそばに居るつもりだった。
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