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【短編】
妖精の媚薬
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巨竜を倒した時、自身の身にため込んでいた膨大な魔力は元より、蓄えていた“器”の精力まで、魔力に換えて使い切ったバーナード騎士団長。
淫魔である彼は、当然、生存のためにも、本来、それは即座に補わなければならなかった。
しかし、霊樹に実った子を失ったショックからか、フィリップの求めに対しても「今はそんな気にならない」と夜の生活を拒否する。
飢えを抑える力を持つ“封印の指輪”のおかげで、その強い欲求は抑えられているが、それは“諸刃の剣”であった。欲求がないからといって、行為をしなければ、やつれ衰え、衰弱していくしかない。弱り切った挙句、最後は死に至るのも明白だった。
フィリップは、せめて口づけだけでもと懇願して、彼に口づけして精力を受け渡していたが、それだけで足りるはずもなかった。
夢から醒めた後も、やはり「する気が起きない」と言う彼に、どうしようかと思っていたところで、小さな妖精ベンジャミンから差し出されたのが、“妖精の媚薬”であった。
夜、眠る前と、朝起きた時に、フィリップはバーナードに口づけをしていた。
体内の精力を失い、それを補われていない彼は、その目にも力が無く、唇もかさつき、黒髪も艶を失い、病んでいた。そんな彼を見ていると、フィリップは胸が苦しかった。
彼が抱えた悲しみと苦しみを、これから共に背負っていくつもりだった。あの夢の中で、そう言って、夢の中で閉じこもっていた彼を、自分の腕の中に取り戻したと思っていた。
唇を重ね、舌を絡め、唾液を流し込むような濃厚な口づけを繰り返す。
寝台の上に、愛しい男を押し倒し、角度を変えて何度も唇を重ねた。
常にも増して執拗な口づけに、バーナードは唇を離した後、問いかけた。
「どうした、フィリップ」
フィリップは、一度何かをあおった後、再度、バーナードに覆いかぶさるようにしてその唇を重ねた。
何か甘い液体が、彼の唇から流し込まれる。
「……………」
大人しく黙って、バーナードはそれを嚥下した。
コクリとその喉が動くのを見て、フィリップは少しほっとした顔をしていた。
それからフィリップは、自身のシャツを脱ぎ始めた。
「……俺はまだ、する気はない」
頑なにそう答えるバーナードの髪に触れ、額にフィリップは口づけた。
「先に貴方に謝罪します。バーナード、私はもう、弱っていく貴方を見ていたくない。貴方に嫌われても、今は構わない」
「……俺がお前を嫌うことはない」
不思議そうな顔でそう言うバーナードに、フィリップは目を細め、弱々しく微笑んだ。
「今から、貴方が嫌がることを私がするのです」
フィリップは白いシャツを脱ぎ捨てた。そして彼の上にのしかかると、今度は彼のシャツのボタンを外していく。
「おい、する気はないと言っただろう」
そう言う彼の唇に、また自身の唇を重ね、そのシャツのボタンの全てを外して、手を胸元に差し入れた。胸の突起を摘まむようにすると、彼の茶色の瞳が開かれる。
びくんと反応する体を見ながら、そろそろ薬が効き始める頃合いだろうとフィリップは考えた。
抵抗しようと弱々しく、肩を掴んでくる彼の手から、フィリップは“封印の指輪”を外した。
媚薬の類は、淫魔にとって非常に強力な効果をもたらす。
淫魔を捕らえるには、媚薬漬けの快楽堕ちにすれば足りることだった。
けれど、バーナードの指にはめられている“封印の指輪”は、淫魔の能力を抑え込み、媚薬に感度の高い淫魔の特質すらも無くさせていた。
だから、バーナードをその気にさせるには、“封印の指輪”を外し、媚薬を飲ませれば事足りる。
更に口にした媚薬は、小さな妖精達が作った特別のものだった。
バーナードの目は、自分の指から外された銀色の指輪に向けられ、大きく開かれた。
「あ……」
その次の瞬間、媚薬の効果が、彼の身体を一気に包み込んだのだった。
身体中が燃え上がるように熱くなる。
苦し気に息をつく。その唇から吐き出される息すら熱かった。
力の無かったその目は潤み、フィリップを弱々しく睨みつけてくる。
「……やめろ、フィリップ」
フィリップは口づけを彼の顔に落とした。
「愛しています、バーナード。貴方がいなくなることなんて、考えられない」
そして彼のズボンを下着ごと床に落とし、その身体を開かせる。
瞳の縁から流れる涙も唇で受け止める。
指で、後孔に触れ、その中をほぐすように挿入させると、彼は感じてしまうのかのけぞる。その手はフィリップの背に回される。
そしてバーナードは、自身の中に生まれた、どうにもできないその波にさらわれることを理解していた。
荒く息をつき、その茶色の瞳から次第に理性が失われていく。
後孔も濡れ始め、フィリップの指をきつく締め上げ、男を欲していた。
早く
引き裂いて
滅茶苦茶にして欲しい
狂暴なくらいの性欲が、淫魔の本能が彼を支配する。
そしてそれをフィリップは十分に満たすつもりだった。
フィリップは、彼の腰を抱き上げ、ゆっくりと貫く。
「あああああああああああ」
ようやく待ち望んでいたモノを与えられ、バーナードは叫んだ。
貫かれ、奥へ奥へと招くように中がうねってフィリップを引きずりこもうとする。
ぎゅっと抱きついてくる彼の身体を、なおもきつく抱きしめ返し、フィリップは彼の耳元で囁いた。
「愛しているんです、バーナード」
だから、嫌われてもいい。
嫌われても、あなたさえ、いてくれたらそれでいい。
その後、フィリップは、欲に狂ったようになっているバーナードをずっと抱き続けた。
彼が満足するまで、それは続いたのだった。
事が終わり、媚薬の効果が切れた時、バーナードは小さくため息をついた後、フィリップに向かって枕を投げつけた。
こっぴどく叱られると思っていたフィリップは、バーナードにこう言われた。
「……俺がお前を嫌うことはない。フィリップ」
そして、バーナードはもう一度、フィリップの唇に自分の唇を重ねたのだった。
淫魔である彼は、当然、生存のためにも、本来、それは即座に補わなければならなかった。
しかし、霊樹に実った子を失ったショックからか、フィリップの求めに対しても「今はそんな気にならない」と夜の生活を拒否する。
飢えを抑える力を持つ“封印の指輪”のおかげで、その強い欲求は抑えられているが、それは“諸刃の剣”であった。欲求がないからといって、行為をしなければ、やつれ衰え、衰弱していくしかない。弱り切った挙句、最後は死に至るのも明白だった。
フィリップは、せめて口づけだけでもと懇願して、彼に口づけして精力を受け渡していたが、それだけで足りるはずもなかった。
夢から醒めた後も、やはり「する気が起きない」と言う彼に、どうしようかと思っていたところで、小さな妖精ベンジャミンから差し出されたのが、“妖精の媚薬”であった。
夜、眠る前と、朝起きた時に、フィリップはバーナードに口づけをしていた。
体内の精力を失い、それを補われていない彼は、その目にも力が無く、唇もかさつき、黒髪も艶を失い、病んでいた。そんな彼を見ていると、フィリップは胸が苦しかった。
彼が抱えた悲しみと苦しみを、これから共に背負っていくつもりだった。あの夢の中で、そう言って、夢の中で閉じこもっていた彼を、自分の腕の中に取り戻したと思っていた。
唇を重ね、舌を絡め、唾液を流し込むような濃厚な口づけを繰り返す。
寝台の上に、愛しい男を押し倒し、角度を変えて何度も唇を重ねた。
常にも増して執拗な口づけに、バーナードは唇を離した後、問いかけた。
「どうした、フィリップ」
フィリップは、一度何かをあおった後、再度、バーナードに覆いかぶさるようにしてその唇を重ねた。
何か甘い液体が、彼の唇から流し込まれる。
「……………」
大人しく黙って、バーナードはそれを嚥下した。
コクリとその喉が動くのを見て、フィリップは少しほっとした顔をしていた。
それからフィリップは、自身のシャツを脱ぎ始めた。
「……俺はまだ、する気はない」
頑なにそう答えるバーナードの髪に触れ、額にフィリップは口づけた。
「先に貴方に謝罪します。バーナード、私はもう、弱っていく貴方を見ていたくない。貴方に嫌われても、今は構わない」
「……俺がお前を嫌うことはない」
不思議そうな顔でそう言うバーナードに、フィリップは目を細め、弱々しく微笑んだ。
「今から、貴方が嫌がることを私がするのです」
フィリップは白いシャツを脱ぎ捨てた。そして彼の上にのしかかると、今度は彼のシャツのボタンを外していく。
「おい、する気はないと言っただろう」
そう言う彼の唇に、また自身の唇を重ね、そのシャツのボタンの全てを外して、手を胸元に差し入れた。胸の突起を摘まむようにすると、彼の茶色の瞳が開かれる。
びくんと反応する体を見ながら、そろそろ薬が効き始める頃合いだろうとフィリップは考えた。
抵抗しようと弱々しく、肩を掴んでくる彼の手から、フィリップは“封印の指輪”を外した。
媚薬の類は、淫魔にとって非常に強力な効果をもたらす。
淫魔を捕らえるには、媚薬漬けの快楽堕ちにすれば足りることだった。
けれど、バーナードの指にはめられている“封印の指輪”は、淫魔の能力を抑え込み、媚薬に感度の高い淫魔の特質すらも無くさせていた。
だから、バーナードをその気にさせるには、“封印の指輪”を外し、媚薬を飲ませれば事足りる。
更に口にした媚薬は、小さな妖精達が作った特別のものだった。
バーナードの目は、自分の指から外された銀色の指輪に向けられ、大きく開かれた。
「あ……」
その次の瞬間、媚薬の効果が、彼の身体を一気に包み込んだのだった。
身体中が燃え上がるように熱くなる。
苦し気に息をつく。その唇から吐き出される息すら熱かった。
力の無かったその目は潤み、フィリップを弱々しく睨みつけてくる。
「……やめろ、フィリップ」
フィリップは口づけを彼の顔に落とした。
「愛しています、バーナード。貴方がいなくなることなんて、考えられない」
そして彼のズボンを下着ごと床に落とし、その身体を開かせる。
瞳の縁から流れる涙も唇で受け止める。
指で、後孔に触れ、その中をほぐすように挿入させると、彼は感じてしまうのかのけぞる。その手はフィリップの背に回される。
そしてバーナードは、自身の中に生まれた、どうにもできないその波にさらわれることを理解していた。
荒く息をつき、その茶色の瞳から次第に理性が失われていく。
後孔も濡れ始め、フィリップの指をきつく締め上げ、男を欲していた。
早く
引き裂いて
滅茶苦茶にして欲しい
狂暴なくらいの性欲が、淫魔の本能が彼を支配する。
そしてそれをフィリップは十分に満たすつもりだった。
フィリップは、彼の腰を抱き上げ、ゆっくりと貫く。
「あああああああああああ」
ようやく待ち望んでいたモノを与えられ、バーナードは叫んだ。
貫かれ、奥へ奥へと招くように中がうねってフィリップを引きずりこもうとする。
ぎゅっと抱きついてくる彼の身体を、なおもきつく抱きしめ返し、フィリップは彼の耳元で囁いた。
「愛しているんです、バーナード」
だから、嫌われてもいい。
嫌われても、あなたさえ、いてくれたらそれでいい。
その後、フィリップは、欲に狂ったようになっているバーナードをずっと抱き続けた。
彼が満足するまで、それは続いたのだった。
事が終わり、媚薬の効果が切れた時、バーナードは小さくため息をついた後、フィリップに向かって枕を投げつけた。
こっぴどく叱られると思っていたフィリップは、バーナードにこう言われた。
「……俺がお前を嫌うことはない。フィリップ」
そして、バーナードはもう一度、フィリップの唇に自分の唇を重ねたのだった。
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