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第二十二章 愛を確かめる
第九話 理解のありすぎる番
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結局、ジェラルドとディーターの二人は寝室から出てくることはなかった。
フィリップは「若い二人なので、放っておきましょう」と言って、彼らを放っておいた。
そして翌朝、ディーターだけがニコニコと笑顔で寝室から出てきた。
「ジェラルドはどうした」とバートが尋ねると、「疲れて起き上がれないみたいだ」と弾けんばかりの笑顔で答える。
そこで、フィリップはふいに、いつぞやの妖精の国での人狼族の長の言葉を思い出した。
『今度は溢れすぎて解消できなくなって、困るぞ』
フィリップは精力に満ち溢れる身であることを望んで、人狼の呪いを受けた。結果として彼は絶倫になっている。
同じく人狼であるディーターも、当然精力に満ち溢れて、絶倫であるはずだった。
「…………ジェラルドはただの人間だが、ディーターと番になって持つのか」
ぽつりとそう言うバートの言葉に、フィリップもいささか気遣う口調でこう言った。
「抱き潰さないように、ディーターに注意しておいた方がいいですね。でも、今はすっかり……」
そう、非常にニコニコと笑顔でいるディーターは幸せそうだった。
満面の笑顔。
すっかり頭の中は春という感じだった。
それはそうだろう。仔犬の姿になってまでそばにいることを望んだ番の、晴れて恋人になれたのだ。頭の中が春になっていても仕方がないだろう。
それに対して、「疲れて起き上がれない」と言われているジェラルドは一体どういう状態になっているのだろう。
彼は仮にも近衛騎士である。普通の人間よりは体力があるだろう。
だが……。
バートがフィリップを見た後、ディーターを見て、呟いた。
「人狼族は……恐ろしいほど絶倫だからな……」
バートもそのことは骨身に染みてよくわかっていた。常に実感しているから当たり前である。
淫魔であるのに、時にフィリップからの欲求が過大だと感じることがあるのだ。それくらい人狼族の愛は重い。
「ディーター、ジェラルドのことを大切に思うなら、ほどほどにしておけよ」
「だって、俺のことをジェラルドはすごく求めてくれたんだ!! 俺のことを愛しているって言ってくれた」
よほど相愛になれたことが嬉しかったのだろう。自分が愛されていることを誇らしげに言うディーター。
「愛し合っているのはいいことだ。でも、物事には限度がある。お前の番のジェラルドは人間なんだからな」
そう注意するバートに、ディーターは首を傾げた。
「でも、嫌がってないよ。昨日だって、俺達本当にたくさん愛し合ったんだ」
その結果、ジェラルドは「疲れて起き上がれない」状態になっているのだろうと、バートは突っ込みたかった。
だが、本当に加減してもらわなければならない。
ヤリ過ぎて、腹上死(下の場合は腹下死とでもいうのだろうか)も現実にあり得るのだから。
「とにかく、ジェラルドのことは大事にしろ。彼が人間だってことは重々忘れないようにするんだぞ」
「分かっているよ」
「それと……お前は自分が人狼族だという話は、彼にしたのか?」
バートの問いかけに、ディーターは頷いた。
「勿論!! 俺が仔犬のディーターだって話もしたよ」
「それも全部話したのか!!」
「当たり前だよ。俺は愛する番に秘密なんて作らないぜ!!」
そう言って、何故か胸を張るディーター。
いや、今まで仔犬の姿でジェラルドのそばにいて、その正体を隠し続けていたことについて、ジェラルドは怒らないのだろうかと、バートもフィリップもいささか心配していたのだが、ディーターは首を振った。
「ジェラルドは俺が仔犬のディーターで、狼にもなれる人狼族だと知ったら、驚いたけど、受け入れてくれたんだ!! 俺の番は懐の広い最高の番だ!!」
ちょっと懐が広すぎるんじゃないかと思う。
普通の人間なら、仔犬の姿に変身してまでそばにいようとしていたことに、引くだろう。
でも、ディーターは照れながらこう言った。
「仔犬の俺も大好きだったから、一緒で嬉しいとも言っていた」
「……………そうか」
実際、仔犬のディーターの時も、バートが近づくと邪険にしていたジェラルドである。仔犬の姿の時も好きだというのは間違いない。
それでも、仔犬のディーターをも受け入れるとは、恐ろしいほど懐の広い、理解のありすぎる番だった。
でも、本人達が幸せそうだから、……一応いいのだろう。
そう結論づけることにしたバートであった。
フィリップは「若い二人なので、放っておきましょう」と言って、彼らを放っておいた。
そして翌朝、ディーターだけがニコニコと笑顔で寝室から出てきた。
「ジェラルドはどうした」とバートが尋ねると、「疲れて起き上がれないみたいだ」と弾けんばかりの笑顔で答える。
そこで、フィリップはふいに、いつぞやの妖精の国での人狼族の長の言葉を思い出した。
『今度は溢れすぎて解消できなくなって、困るぞ』
フィリップは精力に満ち溢れる身であることを望んで、人狼の呪いを受けた。結果として彼は絶倫になっている。
同じく人狼であるディーターも、当然精力に満ち溢れて、絶倫であるはずだった。
「…………ジェラルドはただの人間だが、ディーターと番になって持つのか」
ぽつりとそう言うバートの言葉に、フィリップもいささか気遣う口調でこう言った。
「抱き潰さないように、ディーターに注意しておいた方がいいですね。でも、今はすっかり……」
そう、非常にニコニコと笑顔でいるディーターは幸せそうだった。
満面の笑顔。
すっかり頭の中は春という感じだった。
それはそうだろう。仔犬の姿になってまでそばにいることを望んだ番の、晴れて恋人になれたのだ。頭の中が春になっていても仕方がないだろう。
それに対して、「疲れて起き上がれない」と言われているジェラルドは一体どういう状態になっているのだろう。
彼は仮にも近衛騎士である。普通の人間よりは体力があるだろう。
だが……。
バートがフィリップを見た後、ディーターを見て、呟いた。
「人狼族は……恐ろしいほど絶倫だからな……」
バートもそのことは骨身に染みてよくわかっていた。常に実感しているから当たり前である。
淫魔であるのに、時にフィリップからの欲求が過大だと感じることがあるのだ。それくらい人狼族の愛は重い。
「ディーター、ジェラルドのことを大切に思うなら、ほどほどにしておけよ」
「だって、俺のことをジェラルドはすごく求めてくれたんだ!! 俺のことを愛しているって言ってくれた」
よほど相愛になれたことが嬉しかったのだろう。自分が愛されていることを誇らしげに言うディーター。
「愛し合っているのはいいことだ。でも、物事には限度がある。お前の番のジェラルドは人間なんだからな」
そう注意するバートに、ディーターは首を傾げた。
「でも、嫌がってないよ。昨日だって、俺達本当にたくさん愛し合ったんだ」
その結果、ジェラルドは「疲れて起き上がれない」状態になっているのだろうと、バートは突っ込みたかった。
だが、本当に加減してもらわなければならない。
ヤリ過ぎて、腹上死(下の場合は腹下死とでもいうのだろうか)も現実にあり得るのだから。
「とにかく、ジェラルドのことは大事にしろ。彼が人間だってことは重々忘れないようにするんだぞ」
「分かっているよ」
「それと……お前は自分が人狼族だという話は、彼にしたのか?」
バートの問いかけに、ディーターは頷いた。
「勿論!! 俺が仔犬のディーターだって話もしたよ」
「それも全部話したのか!!」
「当たり前だよ。俺は愛する番に秘密なんて作らないぜ!!」
そう言って、何故か胸を張るディーター。
いや、今まで仔犬の姿でジェラルドのそばにいて、その正体を隠し続けていたことについて、ジェラルドは怒らないのだろうかと、バートもフィリップもいささか心配していたのだが、ディーターは首を振った。
「ジェラルドは俺が仔犬のディーターで、狼にもなれる人狼族だと知ったら、驚いたけど、受け入れてくれたんだ!! 俺の番は懐の広い最高の番だ!!」
ちょっと懐が広すぎるんじゃないかと思う。
普通の人間なら、仔犬の姿に変身してまでそばにいようとしていたことに、引くだろう。
でも、ディーターは照れながらこう言った。
「仔犬の俺も大好きだったから、一緒で嬉しいとも言っていた」
「……………そうか」
実際、仔犬のディーターの時も、バートが近づくと邪険にしていたジェラルドである。仔犬の姿の時も好きだというのは間違いない。
それでも、仔犬のディーターをも受け入れるとは、恐ろしいほど懐の広い、理解のありすぎる番だった。
でも、本人達が幸せそうだから、……一応いいのだろう。
そう結論づけることにしたバートであった。
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