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第十八章 リンゴ狩り
第四話 選べる武器と密かに立ったフラグ
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翌朝、この日はいよいよ果樹園に出没する鳥の魔獣を討伐する日であった。
出立前、妖精王子は一行の前の長テーブルの上に、剣などの武器をずらりと並べて見せた。
いずれの武器も年季の入ったものばかりである。古びてくすんでいるものも多い。
妖精王子は言った。
「妖精達は光ものが好きで、よく人間達の世界からこういった武器の類も運んできます」
内心、光ものが好きなどとは、妖精はカラスかと思ったバーナードであったが、賢明にも口には出さなかった。
古いものの中には、錆びたり、欠けたりしているものまである。だが、十分使用に耐えうる立派な剣も幾つかあった。
「武器はお持ちでしょうが、もしこの中からも、気に入ったものがあれば是非お持ちになって下さい」
そこでバーナードとフィリップは、テーブルの上に並ぶ古びた剣の数々を手に取り見比べ始めた。
多くがガラクタと言えるものだった。
だが、バーナードはそのうちの一本に目をつけた。
真っ白い珠が柄に嵌っている剣である。鞘から抜いても、刀身は錆びついてはおらず、鏡のように輝いて見えた。
妖精王子が言った。
「その剣は悪くないものです。貴方の国の、あの竜剣ほどではありませんが、ある程度斬る力がある剣です。ただ、刀身が持たぬようで、使ってあと数回というところでしょう」
「……それはどういう意味でしょうか」
バーナードの問いかけに、妖精王子は続けて言った。
「そのままの意味です。あと数回使えば、刀身が砕け散るでしょう。宝珠の力が強すぎるのです。それでも名工と呼ばれるものが作り上げた剣です。惜しいですが、そう持たない剣です」
バーナードは「ふむ」と言って、剣を何度か振ったり、鞘から出す動作をしていた。気に入ったようだ。
「こちらを頂こうと思う」
「持たない剣ですが、よろしいのですね」
「はい。自分の剣も持って来ておりますので、こちらはここぞという時に使わせていただこうかと思います」
ディーターは剣には興味がないようで、小さな妖精達と戯れていた。
フィリップは長い弓を手にしていた。
「私はこちらにしようと思います。鳥が相手ですので、弓が良いです」
他に矢と矢筒を手にしている。
それにバーナードは頷いた。
「そうだな。矢で射てくれると助かる」
「はい」
そして準備の整った一行は、果樹園に向けて出立したのであった。
妖精王子は馬も用意してくれており、皆、馬を駆けさせて果樹園への道を進む。
道案内に立つのは、いつもご隠居様の元へ案内をしてくれる、お仕着せを着た妖精である。
「今日も、果樹園にはムクドリ達が押し寄せて来ているそうです。妖精達が必死にリンゴを守ろうと戦っているとのことです」
(妖精達でも戦うのか)と、バーナードはフィリップと顔を見合わせる。
いつものんべんだらりと遊んでいる、快楽主義者のようなあの妖精達が、戦いに挑む姿はなかなか想像がつかなかった。
その疑問をそのままマグルがぶつけていた。
「どうやって、妖精達はムクドリと戦うんですか」
「石をぶつけたり、魔法を使ったりして、とにかく追い払おうとします。運が悪いものは、ムクドリに喰われてしまうようですが」
淡々と話すが、結構エグイ話であった。
あんな可愛らしい小さな妖精であるのに、戦いに負けるとムクドリにパックリと喰われてしまうのだ。
それには、「うわっ」と声を上げてマグルは口を押さえていた。
「……ムクドリに食べられてしまった妖精達はどうなるんですか」
「消化されます」
そのものズバリの回答で、まったく救いがなかった。
「大丈夫だよ。俺がやっつけてやる」
ディーターは緑色の瞳を光らせて、獰猛な笑みを浮かべた。
「鳥なんざ、俺が全部倒してやるからな!! そうだ。最初は俺に任せろ。バーナード達は俺がやるのを見てから、戦うがいい。戦闘種族と呼ばれる人狼族の戦い方を見せてやるぜ!!」
実際、人狼族の戦い方に興味があったバーナードとフィリップは、頷いた。
「わかった。人狼の戦いぶり、しかと見せてもらおう」
「ああ、任せてくれ!!」
ディーターはキラリと歯を光らせて、笑みを浮かべた。
そんなディーターを見て、マグルがぼそりと呟いていた。
「なんか……なんかフラグが立ったような気がするのは、僕だけかな?」
出立前、妖精王子は一行の前の長テーブルの上に、剣などの武器をずらりと並べて見せた。
いずれの武器も年季の入ったものばかりである。古びてくすんでいるものも多い。
妖精王子は言った。
「妖精達は光ものが好きで、よく人間達の世界からこういった武器の類も運んできます」
内心、光ものが好きなどとは、妖精はカラスかと思ったバーナードであったが、賢明にも口には出さなかった。
古いものの中には、錆びたり、欠けたりしているものまである。だが、十分使用に耐えうる立派な剣も幾つかあった。
「武器はお持ちでしょうが、もしこの中からも、気に入ったものがあれば是非お持ちになって下さい」
そこでバーナードとフィリップは、テーブルの上に並ぶ古びた剣の数々を手に取り見比べ始めた。
多くがガラクタと言えるものだった。
だが、バーナードはそのうちの一本に目をつけた。
真っ白い珠が柄に嵌っている剣である。鞘から抜いても、刀身は錆びついてはおらず、鏡のように輝いて見えた。
妖精王子が言った。
「その剣は悪くないものです。貴方の国の、あの竜剣ほどではありませんが、ある程度斬る力がある剣です。ただ、刀身が持たぬようで、使ってあと数回というところでしょう」
「……それはどういう意味でしょうか」
バーナードの問いかけに、妖精王子は続けて言った。
「そのままの意味です。あと数回使えば、刀身が砕け散るでしょう。宝珠の力が強すぎるのです。それでも名工と呼ばれるものが作り上げた剣です。惜しいですが、そう持たない剣です」
バーナードは「ふむ」と言って、剣を何度か振ったり、鞘から出す動作をしていた。気に入ったようだ。
「こちらを頂こうと思う」
「持たない剣ですが、よろしいのですね」
「はい。自分の剣も持って来ておりますので、こちらはここぞという時に使わせていただこうかと思います」
ディーターは剣には興味がないようで、小さな妖精達と戯れていた。
フィリップは長い弓を手にしていた。
「私はこちらにしようと思います。鳥が相手ですので、弓が良いです」
他に矢と矢筒を手にしている。
それにバーナードは頷いた。
「そうだな。矢で射てくれると助かる」
「はい」
そして準備の整った一行は、果樹園に向けて出立したのであった。
妖精王子は馬も用意してくれており、皆、馬を駆けさせて果樹園への道を進む。
道案内に立つのは、いつもご隠居様の元へ案内をしてくれる、お仕着せを着た妖精である。
「今日も、果樹園にはムクドリ達が押し寄せて来ているそうです。妖精達が必死にリンゴを守ろうと戦っているとのことです」
(妖精達でも戦うのか)と、バーナードはフィリップと顔を見合わせる。
いつものんべんだらりと遊んでいる、快楽主義者のようなあの妖精達が、戦いに挑む姿はなかなか想像がつかなかった。
その疑問をそのままマグルがぶつけていた。
「どうやって、妖精達はムクドリと戦うんですか」
「石をぶつけたり、魔法を使ったりして、とにかく追い払おうとします。運が悪いものは、ムクドリに喰われてしまうようですが」
淡々と話すが、結構エグイ話であった。
あんな可愛らしい小さな妖精であるのに、戦いに負けるとムクドリにパックリと喰われてしまうのだ。
それには、「うわっ」と声を上げてマグルは口を押さえていた。
「……ムクドリに食べられてしまった妖精達はどうなるんですか」
「消化されます」
そのものズバリの回答で、まったく救いがなかった。
「大丈夫だよ。俺がやっつけてやる」
ディーターは緑色の瞳を光らせて、獰猛な笑みを浮かべた。
「鳥なんざ、俺が全部倒してやるからな!! そうだ。最初は俺に任せろ。バーナード達は俺がやるのを見てから、戦うがいい。戦闘種族と呼ばれる人狼族の戦い方を見せてやるぜ!!」
実際、人狼族の戦い方に興味があったバーナードとフィリップは、頷いた。
「わかった。人狼の戦いぶり、しかと見せてもらおう」
「ああ、任せてくれ!!」
ディーターはキラリと歯を光らせて、笑みを浮かべた。
そんなディーターを見て、マグルがぼそりと呟いていた。
「なんか……なんかフラグが立ったような気がするのは、僕だけかな?」
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