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第十五章 王立魔術学園の特別講師
第十二話 “魅了”の力(上)
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淫魔パラフィンヌは、淫魔達が直接学園の生徒達にやたらと手を出して、騒動になることは避けねばならないと“淫魔の王”達に注意をした。
目立ってしまえば、王立騎士団や警備隊が乗り出してしまう。
だから、誑かす者は最小限に留めなければならない。
パラフィンヌは、王立魔術学園の職員に目をつけた。
生徒達の情報を管理する彼ら(彼女)らを“魅了”して、少年の情報を引き出し、少年に近いクラスメイトを“魅了”した職員から聞く。そのクラスメイトを“魅了”して、少年をおびき出すようにしましょう。
パラフィンヌの計画を、淫魔達は絶賛した。
「素晴らしい計画だ」
「さすが、パラフィンヌ」
四人の淫魔達がおり、うち一人は強力な淫魔である“淫魔の王”である。
“魅了”は彼らの十八番だった。
この強力なラインナップに、抵抗する力のない者は、あっさりと堕ちてしまうだろう。
実際、王立魔術学園の職員の一人は即座に堕ちて、彼らに情報を与えた。
少年と親しいクラスメイトである者達の名前と住所を教える。
淫魔達は次いで、少年のクラスメイトだという子供達を調べ始めた。
生憎とそのうち何人かはまだ学園から帰宅していないようだったが、うち一人を捕えることができた。
それは隣国からの留学生だという、セオドリック=モンテスキューという名の少年だった。
隣国から留学しているセオドリックは、王立魔術学園の寮で生活していた。
貴族の子弟である彼は、寮内でも特別に個室を与えられている。
護衛を兼ねている従者の青年を一人連れて、彼はこの国にやって来ていた。
淫魔達は職員を堕としたことについて、パラフィンヌを絶賛し続けた。
正門から入る時も、魅了した職員が手引きしてくれたし、更には寮の部屋まで案内してくれたのだ。
あまりにもスムーズに事が進んで怖いくらいであった。
寮の扉をノックし、扉を開けさせるのもその職員にやらせた。
「何でしょうか」
護衛の従者が扉を開けた瞬間、淫魔達は彼を“魅了”しようとした。
だが、さすがに護衛である。易々とは堕ちようとしない。
“魅了”はその心を明け渡すことに近く、“洗脳”ともいえる。
意志の強い者にはかかりにくい傾向が強い。
「セオドリック様!!」
従者の若者が危機を叫んだ時、淫魔達の後ろから“淫魔の王”ウルディヌスが現れ、更に強力な“魅了”の力を向けた。
ウルディヌスの姿は、従者の若者には、その婚約者の娘の姿に見えるように変わった。実際にその身が変化したわけではない。若者の目にはその幻が見えるのだ。その者の、最も愛おしい者の姿で“魅了”される。
隣国で待つはずの娘の姿を見た従者はたちまち、その魂を堕としてしまった。
とろんとした眼をした従者の姿に、部屋の中にいたセオドリックは声を無くす。
扉の方角から、四人の淫魔、学園の職員、そして信頼していた従者までもが近寄ってきた時、セオドリックは唇を戦慄かせていた。
「……何を」
それにパラフィンヌは優しく微笑みながら、セオドリックの方へと手を差し出した。
「優しく堕としてあげるわ。さぁ」
四人がかりである。彼には抵抗のしようもなかった。
*
「セオドリックの具合が悪いんだって」
クラスメイト達は、セオドリックが学園を休み続けていることを知った。
友人のルーシー、アンドレ、アーゼンは非常に心配していた。
セオドリックは隣国からわざわざ留学しに来ている勉強熱心な生徒なのである。
その彼が授業を欠席するなど、ただ事ではない。
「男子寮だから、ルーシー、君はお見舞いに行けないけど、僕らが代わりにお見舞いしておくよ」
ルーシーは、欠席したセオドリックの為、出席できなかった授業の内容をまとめてアンドレとアーゼンの二人に持たせた。
そして見舞いの品と花を手に、アンドレとアーゼンは、セオドリックの部屋の扉を叩く。
扉が薄く開いて、セオドリックの従者が顔を出す。
「…………」
無言だった。
その彼に、アンドレとアーゼンは言った。
「あの、クラスメイトのアンドレです」
「アーゼンです。お見舞いの品を持ってきました。セオドリック君の具合はいかがでしょうか」
その二人の少年の名乗りが聞こえたのだろう、部屋の奥から声がした。
「ああ、彼らも来たのか。ちょうどいい。連れて来い」
若い男の声だった。
それにセオドリックの従者は無表情で、アンドレとアーゼンの腕を掴み、強い力で部屋の中へと引き込んだのだった。
「!?」
パタンと扉は閉まり、悲鳴も聞こえなかった。
目立ってしまえば、王立騎士団や警備隊が乗り出してしまう。
だから、誑かす者は最小限に留めなければならない。
パラフィンヌは、王立魔術学園の職員に目をつけた。
生徒達の情報を管理する彼ら(彼女)らを“魅了”して、少年の情報を引き出し、少年に近いクラスメイトを“魅了”した職員から聞く。そのクラスメイトを“魅了”して、少年をおびき出すようにしましょう。
パラフィンヌの計画を、淫魔達は絶賛した。
「素晴らしい計画だ」
「さすが、パラフィンヌ」
四人の淫魔達がおり、うち一人は強力な淫魔である“淫魔の王”である。
“魅了”は彼らの十八番だった。
この強力なラインナップに、抵抗する力のない者は、あっさりと堕ちてしまうだろう。
実際、王立魔術学園の職員の一人は即座に堕ちて、彼らに情報を与えた。
少年と親しいクラスメイトである者達の名前と住所を教える。
淫魔達は次いで、少年のクラスメイトだという子供達を調べ始めた。
生憎とそのうち何人かはまだ学園から帰宅していないようだったが、うち一人を捕えることができた。
それは隣国からの留学生だという、セオドリック=モンテスキューという名の少年だった。
隣国から留学しているセオドリックは、王立魔術学園の寮で生活していた。
貴族の子弟である彼は、寮内でも特別に個室を与えられている。
護衛を兼ねている従者の青年を一人連れて、彼はこの国にやって来ていた。
淫魔達は職員を堕としたことについて、パラフィンヌを絶賛し続けた。
正門から入る時も、魅了した職員が手引きしてくれたし、更には寮の部屋まで案内してくれたのだ。
あまりにもスムーズに事が進んで怖いくらいであった。
寮の扉をノックし、扉を開けさせるのもその職員にやらせた。
「何でしょうか」
護衛の従者が扉を開けた瞬間、淫魔達は彼を“魅了”しようとした。
だが、さすがに護衛である。易々とは堕ちようとしない。
“魅了”はその心を明け渡すことに近く、“洗脳”ともいえる。
意志の強い者にはかかりにくい傾向が強い。
「セオドリック様!!」
従者の若者が危機を叫んだ時、淫魔達の後ろから“淫魔の王”ウルディヌスが現れ、更に強力な“魅了”の力を向けた。
ウルディヌスの姿は、従者の若者には、その婚約者の娘の姿に見えるように変わった。実際にその身が変化したわけではない。若者の目にはその幻が見えるのだ。その者の、最も愛おしい者の姿で“魅了”される。
隣国で待つはずの娘の姿を見た従者はたちまち、その魂を堕としてしまった。
とろんとした眼をした従者の姿に、部屋の中にいたセオドリックは声を無くす。
扉の方角から、四人の淫魔、学園の職員、そして信頼していた従者までもが近寄ってきた時、セオドリックは唇を戦慄かせていた。
「……何を」
それにパラフィンヌは優しく微笑みながら、セオドリックの方へと手を差し出した。
「優しく堕としてあげるわ。さぁ」
四人がかりである。彼には抵抗のしようもなかった。
*
「セオドリックの具合が悪いんだって」
クラスメイト達は、セオドリックが学園を休み続けていることを知った。
友人のルーシー、アンドレ、アーゼンは非常に心配していた。
セオドリックは隣国からわざわざ留学しに来ている勉強熱心な生徒なのである。
その彼が授業を欠席するなど、ただ事ではない。
「男子寮だから、ルーシー、君はお見舞いに行けないけど、僕らが代わりにお見舞いしておくよ」
ルーシーは、欠席したセオドリックの為、出席できなかった授業の内容をまとめてアンドレとアーゼンの二人に持たせた。
そして見舞いの品と花を手に、アンドレとアーゼンは、セオドリックの部屋の扉を叩く。
扉が薄く開いて、セオドリックの従者が顔を出す。
「…………」
無言だった。
その彼に、アンドレとアーゼンは言った。
「あの、クラスメイトのアンドレです」
「アーゼンです。お見舞いの品を持ってきました。セオドリック君の具合はいかがでしょうか」
その二人の少年の名乗りが聞こえたのだろう、部屋の奥から声がした。
「ああ、彼らも来たのか。ちょうどいい。連れて来い」
若い男の声だった。
それにセオドリックの従者は無表情で、アンドレとアーゼンの腕を掴み、強い力で部屋の中へと引き込んだのだった。
「!?」
パタンと扉は閉まり、悲鳴も聞こえなかった。
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