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第十五章 王立魔術学園の特別講師
第二話 迎えに来る騎士
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僕らが気安くバートに話しかけるようになると、今度はクラスの中の女子らも彼に声をかけるようになった。
ルーシーは、淡い金髪に水色の瞳のかわいい女の子で、クラスの中でも人気があった。
その彼女は、ある時バートにこう尋ねたのだ。
「貴方をいつも迎えに来ている、あの騎士様はどなたなの?」
「…………………………」
そう、バートは学園の授業が終わるとサッサと帰宅するのだが、いつも王立魔術学園の黒い鉄門の前に、金髪のスラリとした一人の騎士が待ち構えているのだ。
この王都に置かれている王立騎士団の騎士の制服を着ている。
目鼻立ちのひどく整った美しい青年で、彼が門前に立っているのを見て、学園の女の子達は、いつも黄色い声をあげ、熱い視線を向けている。
それまで教室の前の方にいた、セオドリック=モンテスキューが口を開いた。
セオドリックは隣国の貴族の子弟で、わざわざこの王立魔術学園に留学に来ているのだ。
「あの騎士は、王立騎士団の副騎士団長の制服を着ている」
そんな制服の違いまでわかるのかと、僕は改めてセオドリックを見つめ、そしてその事実にルーシーは甲高い声を上げた。
「あの騎士様は副騎士団長様なの!!」
女子生徒達は騒めいている。
なぜか、バートは疲れたような顔をしていた。
「………………そんな騎士様が、どうしてバート、君を毎回迎えに来ているんだ」
僕の当然の問いかけに、バートは答えた。
「たまたま帰り道の方角が一緒なんだ。それで馬車に一緒に乗っている」
嘘ではない。
……帰る場所も一緒であったが。
馬車に乗るのは、やはり美貌の騎士を引き連れてバートが歩くのは、目立つからだ。
極力目立たないように努めているバートとしては、彼に何度となく「迎えに来るな」と言っていた。
けれど、彼は「少年姿の団長が、かどわかされたら困ります」とかわけのわからないことを言って、毎回迎えに来る。
悪人に後れをとるつもりはないバートとしては、余計なお節介だった。いや、むしろ困る。もう困り始めている。
「それでも、王立騎士団の騎士様が、見習いだという君を迎えに来るのは不思議だね。どういう関係なの?」
そうした問いかけに、バートはぐっと言葉に詰まり、「……もう迎えに来るなと言っておく」と言うと、ルーシー達女子は「やめて」「これからも迎えに来てもらって」とすがりつくような声を上げていた。
より一層、バートは疲れたような顔をしていた。
その日の帰りも、学園の鉄門の前に、金髪の騎士の若者はバートを待ち構えていた。
彼はバートを見ると目を輝かせて満面の笑みを浮かべている。非常に嬉しそうだ。
「親しい関係であるのは確かだね」
セオドリックが呟くように言うのに、僕も頷いた。
「でも、バートの方は嫌がっている」
今日の話のせいもあったのだろう。
バートは露骨に顔をしかめて、彼に「迎えに来るな」と邪険にして言っていた。
「それに副騎士団長に対して偉そうだ」
セオドリックの言葉に、僕も同意した。
「そうだね。すごく偉そうだ。もしかしたら、バートはあの副騎士団長の上官の息子なんじゃないか。上官に頼まれて迎えに来ているとか」
僕の推測の言葉に、セオドリックも顎に手を当てて考え込む。
「確かにあり得るな。上官から迎えに行ってくれと言われれば、毎回迎えに行くだろう。しかし、副騎士団長の上官となると、騎士団長になるが……」
「騎士団長の息子か。そんな気がしてきた」
バーナードもよもや自分の王立魔術学園でのバートとしての正体が、“自分の息子”になっているとは思いもしなかった。
後に、騎士団長には息子がいないため、隠し子という話まで噂になった時、バーナードはあまりの内容に立ち尽くすのだった。
ルーシーは、淡い金髪に水色の瞳のかわいい女の子で、クラスの中でも人気があった。
その彼女は、ある時バートにこう尋ねたのだ。
「貴方をいつも迎えに来ている、あの騎士様はどなたなの?」
「…………………………」
そう、バートは学園の授業が終わるとサッサと帰宅するのだが、いつも王立魔術学園の黒い鉄門の前に、金髪のスラリとした一人の騎士が待ち構えているのだ。
この王都に置かれている王立騎士団の騎士の制服を着ている。
目鼻立ちのひどく整った美しい青年で、彼が門前に立っているのを見て、学園の女の子達は、いつも黄色い声をあげ、熱い視線を向けている。
それまで教室の前の方にいた、セオドリック=モンテスキューが口を開いた。
セオドリックは隣国の貴族の子弟で、わざわざこの王立魔術学園に留学に来ているのだ。
「あの騎士は、王立騎士団の副騎士団長の制服を着ている」
そんな制服の違いまでわかるのかと、僕は改めてセオドリックを見つめ、そしてその事実にルーシーは甲高い声を上げた。
「あの騎士様は副騎士団長様なの!!」
女子生徒達は騒めいている。
なぜか、バートは疲れたような顔をしていた。
「………………そんな騎士様が、どうしてバート、君を毎回迎えに来ているんだ」
僕の当然の問いかけに、バートは答えた。
「たまたま帰り道の方角が一緒なんだ。それで馬車に一緒に乗っている」
嘘ではない。
……帰る場所も一緒であったが。
馬車に乗るのは、やはり美貌の騎士を引き連れてバートが歩くのは、目立つからだ。
極力目立たないように努めているバートとしては、彼に何度となく「迎えに来るな」と言っていた。
けれど、彼は「少年姿の団長が、かどわかされたら困ります」とかわけのわからないことを言って、毎回迎えに来る。
悪人に後れをとるつもりはないバートとしては、余計なお節介だった。いや、むしろ困る。もう困り始めている。
「それでも、王立騎士団の騎士様が、見習いだという君を迎えに来るのは不思議だね。どういう関係なの?」
そうした問いかけに、バートはぐっと言葉に詰まり、「……もう迎えに来るなと言っておく」と言うと、ルーシー達女子は「やめて」「これからも迎えに来てもらって」とすがりつくような声を上げていた。
より一層、バートは疲れたような顔をしていた。
その日の帰りも、学園の鉄門の前に、金髪の騎士の若者はバートを待ち構えていた。
彼はバートを見ると目を輝かせて満面の笑みを浮かべている。非常に嬉しそうだ。
「親しい関係であるのは確かだね」
セオドリックが呟くように言うのに、僕も頷いた。
「でも、バートの方は嫌がっている」
今日の話のせいもあったのだろう。
バートは露骨に顔をしかめて、彼に「迎えに来るな」と邪険にして言っていた。
「それに副騎士団長に対して偉そうだ」
セオドリックの言葉に、僕も同意した。
「そうだね。すごく偉そうだ。もしかしたら、バートはあの副騎士団長の上官の息子なんじゃないか。上官に頼まれて迎えに来ているとか」
僕の推測の言葉に、セオドリックも顎に手を当てて考え込む。
「確かにあり得るな。上官から迎えに行ってくれと言われれば、毎回迎えに行くだろう。しかし、副騎士団長の上官となると、騎士団長になるが……」
「騎士団長の息子か。そんな気がしてきた」
バーナードもよもや自分の王立魔術学園でのバートとしての正体が、“自分の息子”になっているとは思いもしなかった。
後に、騎士団長には息子がいないため、隠し子という話まで噂になった時、バーナードはあまりの内容に立ち尽くすのだった。
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