騎士団長が大変です

曙なつき

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第十四章 王家の庭の霊樹

第十話 課せられた問題

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 あの後、子供のように「じゃあどうすればいいんだ!!」と言ったバーナードを、フィリップは宥めるようにして寝台に運ぶと、先刻までの荒々しさとは打って変わって、優しく彼を愛し始めた。
 優しく、そして執拗に時間を掛けて愛され始めたバーナードはまた、どこか苦し気だった。快感も過ぎると苦痛になるのだ。

「もう……もうだめだ」

「淫魔なのでしょう? これしきで根を上げてはなりませんよ」

「八日目なんだぞ。完徹に近いんだからな!!」

 その言葉に、フィリップの顔が恐ろしく冷ややかなものになった。

「………………………殿下と七日七晩に渡って、シテいたんですか?」

 その言葉もゾッとするほど冷たい。
 もはや、心の糸も切れかかってきたバーナードも破れかぶれのような感じで言い返した。

「殿下は“最強王”の呪い持ちの絶倫なんだから、仕方ないだろう!!」

「バーナード、貴方は仕方ない、仕方ないばかり言って、弱腰ですね。そんなのは、貴方らしくないです。剣を借りるために伽をするのも仕方ない。殿下が絶倫なのも仕方ない」

「…………全部仕方ないことじゃないか」

「違います」

「どう違うんだ」

「私は強くなったので、守られるだけの身ではなくなったでしょう」

「お前はまだ弱い。俺から一本も取れない癖に」

 “剣豪”の称号持ちのバーナードに勝つことは不可能である。その彼の言葉にフィリップはイラっとして、寝台に押し付けて強引に唇を貪った。
 息も絶え絶えの様子の彼を見下ろしながら言った。

「寝台の上では私の勝ちですね」

「お前は馬鹿だ!!!!」

 真っ赤な顔で、怒ったように叫ぶ彼を見て、先刻まで涙を零して弱々しかった彼の姿が消えたことに、内心ほっとしていた。
 あんな風に泣かせるつもりはなかったのだ。
 あんな彼の姿が見たかったわけではなかったのだ。
 
「そして、私が絶倫なのも仕方がないですね。殿下が仕方がないというのだから」

「!!!!」

 その身を寝台に押し付け、足を開かせて、谷間の蕾をゆっくりと満たしていく。

「……あ……ああ」

 優しく、その身がとろけてしまうかのように愛してあげたかった。

「バーナード」

 名を呼ぶと、抱きしめ返してくれる。きつくきつく抱きしめ合う。




 そして彼を愛しながらも、フィリップは考えていた。
 自分を守るために、結果的に王太子にその身を与えると言う彼。
 そんなことを言われて、平静でいられるわけがない。
 彼は自身の身をあまりにも軽く考えている。
 その身一つ与えるだけで、国宝の剣を貸してもらえるのなら安いものだと。
 そんな言葉を聞きたいわけではない。


 どうにかしなければならなかった。
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