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第十四章 王家の庭の霊樹
第一話 清算
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差し向けられた馬車に乗って王宮に向かう。いつもの通り、王宮副魔術師長マグルの許で、“若返りの魔道具”であるピアスを身に付ける。
マグルは、それを使うというバーナードをなんとも言えない表情で見つめてため息をついていた。
「……フィリップが可哀想だ」
「たかだか一週間だ。一週間経てば、あいつの許に戻る」
「フィリップはお前のことを愛しているぞ。それなのに、お前が王太子の許へ行くのを我慢しないといけない」
「以前、俺が殿下の許へ行くことにお前は賛成だった癖に。いまさら、俺のことを責めるのか」
そのバーナードの言葉に、マグルはぐっと詰まった。
それは、里帰りするというセーラ妃のために伽に行った時のことを話しているのだ。
「あの時とは違うだろう。あの時は、殿下はお側にセーラ妃がいないため、それを鎮めないといけなかった。必要性があったからだ。でも今回は違う」
「ヤルことは一緒だ」
苦笑まじりで言うバーナードに、マグルは首を振った。
「違う。セーラ妃がいるのに、お前を伽に呼んでいるんだ」
一枚の大きな布を被ったバーナードは、その身の変化が終わったのだろう。
ごそごそと布の下から、少年の姿を見せた。
不機嫌そうに眉を寄せている。
「俺は、セーラ妃殿下とエドワード王太子殿下の間を割って入るつもりはないぞ」
「あちらはそのつもりなんだろう。お妃様がいるのに、少年のバートを王宮に呼ぶ。いやはや、殿下も堂々としていらっしゃる。隠される気もない」
「くどいようだが、俺は殿下とセーラ妃殿下の仲を割るつもりはない」
「でも、お前が殿下の許へ行くというのはそういうことなんだ。たとえお前にそのつもりが無くても、周りは違う。以前、お前が伽に行った時と状況は違う。殿下は本当にお前が……」
テキパキと服を着替えているバートを見ながら、マグルはため息混じりだった。
「お前が好きなのかもな」
「……もし仮にそうだとしても」
下着を身に付け、服のボタンをはめながらバーナードは言った。
「俺にはフィリップがいる。応えられん」
「その癖、お前は殿下の要求には応えるんだろう。だから、殿下も拒絶しないお前をこうして王宮に呼び寄せる。お前が拒否できないように、貸しを作って」
「……今回で借りは清算だ。一週間経てばまた戻れる」
着替え終わった彼は、椅子に足を組んで座る。いつもの騎士団長の偉そうな態度に、マグルはまた肩をすくめた。
「そうだな。だが、バーナード、お前はもう殿下に貸しを作るな。俺もフィリップも、賛成できない」
「……竜剣ヴァンドライデンを、この身一つで貸して下さるのだ。悪い取引ではない」
時にフィリップを救うためにも、その剣は必要だったのだ。だから、あの取引をしたことに後悔はない。
「そういうところに、殿下はつけ込んでいるんだぞ!! バーナード」
そうした言い合いじみた様相になっていたところに、扉をノックする音が聞こえた。
立ち上がるバーナードの背に、マグルは言った。
「もう本当に、これっきりにするんだぞ、バーナード」
その言葉にバートは振り返らず、迎えに来た侍従長の後について歩いて行った。
マグルは、それを使うというバーナードをなんとも言えない表情で見つめてため息をついていた。
「……フィリップが可哀想だ」
「たかだか一週間だ。一週間経てば、あいつの許に戻る」
「フィリップはお前のことを愛しているぞ。それなのに、お前が王太子の許へ行くのを我慢しないといけない」
「以前、俺が殿下の許へ行くことにお前は賛成だった癖に。いまさら、俺のことを責めるのか」
そのバーナードの言葉に、マグルはぐっと詰まった。
それは、里帰りするというセーラ妃のために伽に行った時のことを話しているのだ。
「あの時とは違うだろう。あの時は、殿下はお側にセーラ妃がいないため、それを鎮めないといけなかった。必要性があったからだ。でも今回は違う」
「ヤルことは一緒だ」
苦笑まじりで言うバーナードに、マグルは首を振った。
「違う。セーラ妃がいるのに、お前を伽に呼んでいるんだ」
一枚の大きな布を被ったバーナードは、その身の変化が終わったのだろう。
ごそごそと布の下から、少年の姿を見せた。
不機嫌そうに眉を寄せている。
「俺は、セーラ妃殿下とエドワード王太子殿下の間を割って入るつもりはないぞ」
「あちらはそのつもりなんだろう。お妃様がいるのに、少年のバートを王宮に呼ぶ。いやはや、殿下も堂々としていらっしゃる。隠される気もない」
「くどいようだが、俺は殿下とセーラ妃殿下の仲を割るつもりはない」
「でも、お前が殿下の許へ行くというのはそういうことなんだ。たとえお前にそのつもりが無くても、周りは違う。以前、お前が伽に行った時と状況は違う。殿下は本当にお前が……」
テキパキと服を着替えているバートを見ながら、マグルはため息混じりだった。
「お前が好きなのかもな」
「……もし仮にそうだとしても」
下着を身に付け、服のボタンをはめながらバーナードは言った。
「俺にはフィリップがいる。応えられん」
「その癖、お前は殿下の要求には応えるんだろう。だから、殿下も拒絶しないお前をこうして王宮に呼び寄せる。お前が拒否できないように、貸しを作って」
「……今回で借りは清算だ。一週間経てばまた戻れる」
着替え終わった彼は、椅子に足を組んで座る。いつもの騎士団長の偉そうな態度に、マグルはまた肩をすくめた。
「そうだな。だが、バーナード、お前はもう殿下に貸しを作るな。俺もフィリップも、賛成できない」
「……竜剣ヴァンドライデンを、この身一つで貸して下さるのだ。悪い取引ではない」
時にフィリップを救うためにも、その剣は必要だったのだ。だから、あの取引をしたことに後悔はない。
「そういうところに、殿下はつけ込んでいるんだぞ!! バーナード」
そうした言い合いじみた様相になっていたところに、扉をノックする音が聞こえた。
立ち上がるバーナードの背に、マグルは言った。
「もう本当に、これっきりにするんだぞ、バーナード」
その言葉にバートは振り返らず、迎えに来た侍従長の後について歩いて行った。
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