騎士団長が大変です

曙なつき

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【短編】

夏の祭りの花火 (4)

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 花火の打ち上げが終わった後、ケヴィン夫妻もマグル夫妻らも、早々に宿を後にした。
 泊まれる部屋があるのだから、泊まっていけば良いと言うバーナードの誘いを固辞して、彼らは礼を述べて立ち去っていく。皆、明日も仕事があるのだから、自宅に戻って備えたい気持ちがあるらしい。なお、バーナードとフィリップは、明日は半休であった。

 バーナードは残念そうであったが、大きな寝台の上にバタンと前から倒れるように横になった。

「人がいなくなると寂しいな」

「そうですね」

 持ち寄ってくれたワインやつまみ、パイなど、皆に包んで持ち帰ってもらった。バーナードとフィリップだけでは到底食べきれない量があったからだ。

 フィリップは浴室で汗を流すと言って、一緒に風呂に入らないかと彼を誘ったが、バーナードは後から入ると片手を挙げて手を振った。
 汗を流し、さっぱりとガウンを羽織ったフィリップが部屋に戻った時、バーナードはうつぶせのそのままの恰好で眠っていた。

 フィリップはため息をついた。

「バーナード、制服を着たまま眠ると、後が大変ですよ」

「…………」

 よく眠っている彼は、肩を揺らしても起きない。
 だから、フィリップはよいしょと彼を仰向けにし、寝台の上に座り込むと、彼の制服のボタンを外し、上着からズボンまで脱がせた。そうしてもなお、バーナードはよく眠っていた。
 そのことがおかしくなって、フィリップは少しだけ声を上げて笑ってしまった。
 自分の前ではこんなに寛いで、安心しきって眠っている彼のことが嬉しい。

「本当に、貴方は寝つきが良すぎますね。……悪戯してもわからないんじゃないですか」

 下着をまくりあげ、その胸に口づけた。
 日頃「跡をつけるな」とうるさいバーナードである。
 ここまで眠りに落ちていると、今は文句を言われまい。
 悪戯心から、フィリップは、バーナードの首筋から胸元まで、無数の口づけの跡を刻んでいく。
 カプリと噛んで首には噛み跡までつけてしまう。

 そしてしばらくして「やり過ぎたか……」と反省する思いもあったが、もうやってしまった後の祭りである。
 フィリップはバーナードの身体に布団を被せ、その頬に口づけした後、優しく囁いた。

「おやすみなさい、バーナード」

 彼はすやすやと寝息を立てるのみだった。

 

 そして翌朝、「お前は俺が寝ている間に何をしている!!」と激怒したバーナードに、フィリップはこっぴどく叱られたのだった。
 首筋には噛み跡が残り、胸元には口づけの跡が無数に散っていたのだ。

「……団長が寝ちゃうのが悪いんです。起こそうとしたんですからね」

「仕方ないだろう。疲れていたのだから」

「仕方ないですよ、団長が寝ちゃったんだから」

 そしてフィリップは、チュッと音を立てて不機嫌そうなバーナードの頬に口づけたのだった。
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