騎士団長が大変です

曙なつき

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第十二章 副都事件

第十四話 事件の解決は(上)

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 聖王国の神子マラケシュは、バーナードがおかしな消え方をしたことを目にすると、すぐに動き出した。
 彼は聖王国出入りの商業ギルド長を呼びだし、すぐさまアルセウス王国の王都に手紙を持たせて“転移”させる。商業ギルドは世界各地に置いたギルド拠点に“転移”の魔法陣を敷いており、すぐさま互いに連絡をしあえる連絡網を作り上げていた。そのため、マラケシュは神殿に出入りの商業ギルド長を通じてバーナード騎士団長の伴侶であるフィリップ副騎士団長に連絡をとり(マラケシュはフィリップが騎士団長の伴侶であることも聖騎士達に報告を受け知っていた)、そして唐突に夢から消え失せたバーナードの身を案じたフィリップ副騎士団長は王国のエドワード王太子殿下に連絡し、殿下がハルベルト騎士団を動かす命令書を発行したのだ。
 いずれも移動は“転移”の魔法陣を使用したので一瞬である。
 副都に着いてから、この学園にハルベルト騎士団を引き連れてくることが一番時間がかかったことかも知れない。

 全てを聞いたバートはため息をついていた。
 今もまだ、彼はバートの姿のままである。ハルベルト騎士団のいる中では、もはやバーナードの姿に戻ることは無理だろう。

 絞り出すような声で、ハルベルト騎士団の騎士団長に対して礼を言った。

「助かりました。ありがとうございます」


 そして、それからバートはハルベルト騎士団に依頼したのだった。

「この学園の敷地に、古井戸があります。そこを、さらって頂きたい」

 


 翌朝、ハルベルト騎士団が井戸の下に降りたところ、そこには横穴があり、その先もずっと穴が続いていた。以前、グラナダ伯爵家のリーンハルトの行方が不明になった時、この井戸の底も調べたらしいが、ずっと先まで延々と続く横穴の先までは調べなかったらしい。横穴の途中で、人が通れない細かい格子が下ろされていたことも、その先を調べなかった理由だった。その格子はネズミが通り過ぎるのがやっとというものであった。
 バートとフィリップの、調査を求める言葉を受けて、ハルベルト騎士団は格子を外し、井戸の横穴の奥まで調べた。そこは、更に副都の地下に広がる下水道に通じていた。
 下水道の中には大量のネズミがいて、騎士達は追い払いながら先を進んだ。
 そして下水道の道をしばらく進んだところで、遺留品を見つけたのだった。
 ボロボロに千切れ、朽ちた靴の残骸や、指輪などが転がる。
 それは、行方不明になった子供らのものであった。

 そして同じ日の翌朝、点呼したところ、学園内から失踪した教師や職員達が数名いたことがわかる。
 ベルン=パラウィンもその一人だった。

 結局、子供らが、何かしらの儀式の為に犠牲になったのかどうかもわからぬまま、事件は幕を閉じることになった。

 ハルベルト騎士団は売春組織を大々的に摘発し、行方不明者はその売春組織と係わりがあったのではないかという発表をしていた。
 そうではないことを知る者は、僅かであった。
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