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第十二章 副都事件
第十一話 “水の月”生まれ
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ベルンに、行方不明者の容姿や生まれ月についての情報を求めると、彼は少し驚いた表情を見せ、それからそれをすぐにまとめると言った。
そしてその翌日には、ベルンは行方不明者の容姿や生まれ月についての情報を教えてくれた。
容姿については、髪色や瞳の色などバラバラであったが、生まれ月についてはただ一人を除いて、全員“水の月”だった。
リストを見て、バートは考え深げな様子だった。
「水の月ではない生徒は、昨年秋に行方不明になったリーンハルトだけだな。そして、彼だけが十七歳だ。彼だけ何かしらイレギュラーだったのだろうか」
「あとは皆、十四、五歳の水の月生まれの子供ばかりですね」
バートに、ベルンは尋ねた。
「バート君は何月生まれですか」
「火の月です。水の月ではない」
「そうですか、残念ですね」
「冗談でもそういうことは言わないで下さい」
バートがしかめっ面をしてそう言うと、ベルンは笑った。
「いえいえ。行方不明者の子らには共通点があったということですね。これについてはもっと前に気付かれて当然だと思いますが」
「犠牲者の生まれ月まで調べ上げることなどあまりないでしょう」
「そうですね。よく、バート君は気が付きましたね」
感心したように言うベルンに、バートは問いかけた。
「…………在籍している学園内の十四、五歳、水の月生まれの生徒の一覧を用意できますか?」
「…………ええ、出来ます。明日には用意しますね。バート君はどう考えているのですか?」
その問いかけに、バートはまだ考えがまとまらないと、答えを言うことはなかった。
その夜も、聖王国の神子マラケシュの許へと夢を渡ると、マラケシュはバーナードに飛びついてきた。
「心配してたんだ。大丈夫だった?」
「ああ、大丈夫だ」
先日話した時には、行方不明の生徒達は、悪魔崇拝者達の贄になっているのではないかと、物騒な指摘をしたマラケシュである。そうした指摘をしたからこそ、バーナードの身を案じていたのだ。
今回は聖騎士が控えていたのか、マラケシュの後ろから聖騎士団団長のガディスが軽く一礼していた。
「行方不明の生徒達は、容姿はバラバラだった。髪色も瞳の色にも共通点はない」
マラケシュは頷きながら、話を聞いている。
「だけど、生まれ月は一人を除いて全員“水の月”生まれだ」
「…………」
「それはマズいですね」
聖騎士団団長ガディスが口を挟んだ。
「どうまずいのですか?」
問いかけるバーナードに、ガディスは言った。
「水の神というのは、魔族にとっては本当に天敵で、悪魔にとっても同様です。光の神ライナドゥーンなどよりも遥かに水の神は嫌われています」
「…………」
「我が国の祀り上げている神は多くおりますが、水神リーン様は、魔族退治に関しては多くの御力を分けて下さいます」
「どうしてですか?」
「水神リーン様は極めて魔族を嫌っているからです。魔族や悪魔とは天敵関係にあるといっても良いです。だからこそ、贄に選ばれるとなると、水の月生まれの、処女・清童が選ばれることがほとんどです」
「……………では、行方不明者が水の月生まれということは」
「ほぼほぼ、悪魔崇拝者や魔を招く何らかの儀式に使われたと見なして良いでしょう。騎士団長殿は副都に居られるという話ですが、騎士団を動かせられるなら……」
次の瞬間、視界が大きく揺れた。
夢が醒める?
眠りから無理やり起こされるのだろう。
マラケシュが慌てて叫んでいる。
「バーナード、どこの学校に居るの!? 教えて!!」
ヴェルヌ……
その言葉が届いたかどうかわからず、プツリと視界が途切れた。
そしてその翌日には、ベルンは行方不明者の容姿や生まれ月についての情報を教えてくれた。
容姿については、髪色や瞳の色などバラバラであったが、生まれ月についてはただ一人を除いて、全員“水の月”だった。
リストを見て、バートは考え深げな様子だった。
「水の月ではない生徒は、昨年秋に行方不明になったリーンハルトだけだな。そして、彼だけが十七歳だ。彼だけ何かしらイレギュラーだったのだろうか」
「あとは皆、十四、五歳の水の月生まれの子供ばかりですね」
バートに、ベルンは尋ねた。
「バート君は何月生まれですか」
「火の月です。水の月ではない」
「そうですか、残念ですね」
「冗談でもそういうことは言わないで下さい」
バートがしかめっ面をしてそう言うと、ベルンは笑った。
「いえいえ。行方不明者の子らには共通点があったということですね。これについてはもっと前に気付かれて当然だと思いますが」
「犠牲者の生まれ月まで調べ上げることなどあまりないでしょう」
「そうですね。よく、バート君は気が付きましたね」
感心したように言うベルンに、バートは問いかけた。
「…………在籍している学園内の十四、五歳、水の月生まれの生徒の一覧を用意できますか?」
「…………ええ、出来ます。明日には用意しますね。バート君はどう考えているのですか?」
その問いかけに、バートはまだ考えがまとまらないと、答えを言うことはなかった。
その夜も、聖王国の神子マラケシュの許へと夢を渡ると、マラケシュはバーナードに飛びついてきた。
「心配してたんだ。大丈夫だった?」
「ああ、大丈夫だ」
先日話した時には、行方不明の生徒達は、悪魔崇拝者達の贄になっているのではないかと、物騒な指摘をしたマラケシュである。そうした指摘をしたからこそ、バーナードの身を案じていたのだ。
今回は聖騎士が控えていたのか、マラケシュの後ろから聖騎士団団長のガディスが軽く一礼していた。
「行方不明の生徒達は、容姿はバラバラだった。髪色も瞳の色にも共通点はない」
マラケシュは頷きながら、話を聞いている。
「だけど、生まれ月は一人を除いて全員“水の月”生まれだ」
「…………」
「それはマズいですね」
聖騎士団団長ガディスが口を挟んだ。
「どうまずいのですか?」
問いかけるバーナードに、ガディスは言った。
「水の神というのは、魔族にとっては本当に天敵で、悪魔にとっても同様です。光の神ライナドゥーンなどよりも遥かに水の神は嫌われています」
「…………」
「我が国の祀り上げている神は多くおりますが、水神リーン様は、魔族退治に関しては多くの御力を分けて下さいます」
「どうしてですか?」
「水神リーン様は極めて魔族を嫌っているからです。魔族や悪魔とは天敵関係にあるといっても良いです。だからこそ、贄に選ばれるとなると、水の月生まれの、処女・清童が選ばれることがほとんどです」
「……………では、行方不明者が水の月生まれということは」
「ほぼほぼ、悪魔崇拝者や魔を招く何らかの儀式に使われたと見なして良いでしょう。騎士団長殿は副都に居られるという話ですが、騎士団を動かせられるなら……」
次の瞬間、視界が大きく揺れた。
夢が醒める?
眠りから無理やり起こされるのだろう。
マラケシュが慌てて叫んでいる。
「バーナード、どこの学校に居るの!? 教えて!!」
ヴェルヌ……
その言葉が届いたかどうかわからず、プツリと視界が途切れた。
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