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第十二章 副都事件
第三話 王宮副魔術師長との会話(中)
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ピアスをつけて少年の姿に変わるまでは時間がしばらくかかる。
その間、バーナードは布を一枚、頭からすっぽりと被ってその身が他人から見えないようにしていた。
「どうして見てはいけないんですか?」
フィリップが問いかける。
「なんだか嫌だ」
バーナードのその答えに、マグルは肩をすくめてフィリップに言う。
「自分の身体が変化していくのを、見せたがる奴はあまりいないと思うよ。今までもそうだったから、気にしない方がいい」
布の下から、バーナードは言った。
「今回の任務は長期に渡る可能性がある。二週間以上かかるだろう」
「はい」
「だから、俺の留守中、お前が騎士団のトップになる。わかったな」
その言葉に、文字通りフィリップは愕然としていた。
「私も一緒に学園へは行けないんですか」
「当たり前だろう。俺が不在の間、誰が騎士団の統率をするというのだ。副騎士団長のお前しかいない」
「…………………………」
言われてみれば当然の話だった。
騎士団長と副騎士団長トップ二人が揃って騎士団不在など考えられない。
休暇でさえも二人同時の不在は、四日が最大だと渋るくらいなのに、有り得ないことだった。
そのショックを見越していたのだろう。
バーナードはどこか優しくこうも言っていた。
「俺の不在の間、騎士団を任せられるのはお前しかいないんだ。わかるだろう、フィリップ」
「…………………はい」
「何そんな世界の終わりみたいに、たそがれているんだよ、フィリップ」
マグルの方が呆れを見せていた。
「だってバーナードが淫魔なんだから、夢を渡って来てもらえばいいじゃんか。副都に行ったとしても、バーナードと毎晩だって会うことができるぜ。そもそも、その魔道具のピアスの魔力を補充してもらうためにも、フィリップには頑張ってもらわないといけないんだから」
「……………は?」
その言葉が思いがけないものだったのだろう。バーナードは布の下で動きを止めていた。
マグルはあけすけに言葉を続けていく。
「やることやらないと、バーナードの精力が尽きるぞ。淫魔ってのは精力が無くなると弱るし、おまけにそのピアスも魔力を食うのだから、ヤリ溜めておけよ」
「そうらしいですよ、団長」
フィリップの言葉に、布の下に隠れているバーナードは無言だった。
しばらくして絞り出すような声で、マグルへ言う。
「以前の、魔石で補充するタイプの方がいいのじゃないか?」
「あれ、すげぇ魔石を消費するからダメだ。長期にわたってピアス付けていくなら、交換を考えない方法でやらないと。ちょうどお前は淫魔になったんだから、フィリップに十分補充してもらえるだろう」
「……………」
「まぁ、フィリップが精力を搾り取られて干からびる可能性はあるが……」
そのマグルの懸念に、“精力に満ち溢れる存在”にその身を変えられたというフィリップは自信を持って力強くこう答えていた。
「大丈夫です、私が団長を満たします」
「……………」
布の下に隠れているバーナードは無言だった。
その間、バーナードは布を一枚、頭からすっぽりと被ってその身が他人から見えないようにしていた。
「どうして見てはいけないんですか?」
フィリップが問いかける。
「なんだか嫌だ」
バーナードのその答えに、マグルは肩をすくめてフィリップに言う。
「自分の身体が変化していくのを、見せたがる奴はあまりいないと思うよ。今までもそうだったから、気にしない方がいい」
布の下から、バーナードは言った。
「今回の任務は長期に渡る可能性がある。二週間以上かかるだろう」
「はい」
「だから、俺の留守中、お前が騎士団のトップになる。わかったな」
その言葉に、文字通りフィリップは愕然としていた。
「私も一緒に学園へは行けないんですか」
「当たり前だろう。俺が不在の間、誰が騎士団の統率をするというのだ。副騎士団長のお前しかいない」
「…………………………」
言われてみれば当然の話だった。
騎士団長と副騎士団長トップ二人が揃って騎士団不在など考えられない。
休暇でさえも二人同時の不在は、四日が最大だと渋るくらいなのに、有り得ないことだった。
そのショックを見越していたのだろう。
バーナードはどこか優しくこうも言っていた。
「俺の不在の間、騎士団を任せられるのはお前しかいないんだ。わかるだろう、フィリップ」
「…………………はい」
「何そんな世界の終わりみたいに、たそがれているんだよ、フィリップ」
マグルの方が呆れを見せていた。
「だってバーナードが淫魔なんだから、夢を渡って来てもらえばいいじゃんか。副都に行ったとしても、バーナードと毎晩だって会うことができるぜ。そもそも、その魔道具のピアスの魔力を補充してもらうためにも、フィリップには頑張ってもらわないといけないんだから」
「……………は?」
その言葉が思いがけないものだったのだろう。バーナードは布の下で動きを止めていた。
マグルはあけすけに言葉を続けていく。
「やることやらないと、バーナードの精力が尽きるぞ。淫魔ってのは精力が無くなると弱るし、おまけにそのピアスも魔力を食うのだから、ヤリ溜めておけよ」
「そうらしいですよ、団長」
フィリップの言葉に、布の下に隠れているバーナードは無言だった。
しばらくして絞り出すような声で、マグルへ言う。
「以前の、魔石で補充するタイプの方がいいのじゃないか?」
「あれ、すげぇ魔石を消費するからダメだ。長期にわたってピアス付けていくなら、交換を考えない方法でやらないと。ちょうどお前は淫魔になったんだから、フィリップに十分補充してもらえるだろう」
「……………」
「まぁ、フィリップが精力を搾り取られて干からびる可能性はあるが……」
そのマグルの懸念に、“精力に満ち溢れる存在”にその身を変えられたというフィリップは自信を持って力強くこう答えていた。
「大丈夫です、私が団長を満たします」
「……………」
布の下に隠れているバーナードは無言だった。
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