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第十二章 副都事件
第二話 王宮副魔術師長との会話(上)
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別室に王宮副魔術師長マグルを呼んでいるというので、彼も交えて打ち合わせをすることになった。フィリップはこの後の展開が読めた。
陛下は、バーナードがかつて十代の少年の姿に、魔道具を使ってその身を若返らせていたことを知っている。
マグルを呼んだということは、バーナードにその魔道具を使えということなのだろう。
そしてその魔道具を使って、ヴェルヌ魔法学園に潜り込めという話になるのだ。
そしてそれを同じように察したバーナードも小さくため息をついていた。
ゼスタ伯爵は、後日、詳しい話が出来る者をバーナードの許へ遣わすと言って、その場を後にした。
だからバーナードとフィリップは、とりあえず別室に呼ばれているであろう王宮副魔術師マグルの許へと足を運んだ。
王宮の応接室の一つにマグルはいて、応接室のテーブルの上に置かれている菓子をぱくついていた彼は、扉を開けて入ってきた騎士団長と副騎士団長に向かって、軽く片手を挙げて挨拶した。
「やぁ、バーナード、フィリップ、ご苦労様」
「……………ああ」
バーナードとフィリップが対面の椅子に座ると、すぐさまマグルは“静寂の魔道具”を起動させた。これで部屋の外に、会話が漏れることはない。
その起動がされたのを見て、バーナードは深々とため息をついた。額に手をやっている。
「………………参った」
その様子を見て、マグルはクスクスと笑っていた。
「本当、大変だな。国王陛下の信頼篤い騎士団長殿は」
「笑いごとではないぞ。俺は、魔獣を斬れと言われれば、斬りに行く。そういうのは得意だ」
「……まぁ、そうだよね。君は武勇に謳われる騎士だろうけど……」
「団長には出来ないと仰るのですか!!」
キッと睨みつけるフィリップに、マグルは「おおっ、こわ。お前の嫁さんはお前のことに関しては血の気が多すぎるぞ」と呟いていた。
「……だいたい僕、バーナードが出来ないなんて言っていないし」
「……………まぁ、いい。陛下に命ぜられたも同然の話だ。引き受けざるを得ない。やるのが、騎士というものだ」
「相変わらず忠義の篤い騎士だね。バーナード」
マグルは笑いながら、バーナードの前に小さな箱を取り出してコトリと置いた。
「陛下から学園での任務の話は伺っている。“若返りの魔道具”だ。これを使うのは懐かしいだろう」
やはり、それを用意しろという指示が王宮副魔術師長マグルにあったのだろう。
彼は、“若返りの魔道具”を騎士団長の前に用意していた。
「ああ」
中には黒い魔石がはまったピアスが一対入っている。それはマグル作成の魔道具で、使えば任意の年齢にその身を変えることができるのだ。
だが、魔石を相当消費するはずだった。
「改良して、魔石消費は抑え気味にしている。その代わり」
マグルはバーナードの茶色の目を見つめながらこう言った。
「所持者の体内にある魔力の消費で補えるようにしている。バーナード、お前は“淫魔”になったことで、魔力も増えているはずだ」
その言葉にフィリップは驚くが、バーナードは顔色を変えずにうなずいていた。
「ああ」
「ここ最近、お前は自分の魔力量をちゃんと測ったことはあるか?」
「ないが、おそらく増えているのは間違いない。俺は身体強化しか魔法は使っていないが、使っても魔力が減っている様子はないからな」
その言葉にマグルはため息混じりだった。
「せっかく淫魔になったメリットなんだから、もうちょっと自分のことを知ろうとしろよ。淫魔は精力も魔力に変換することができるらしい」
「そうなのか?」
「ああ。だから、お前は精力を得れば得るほど、魔力も得ることが出来る」
それは素晴らしいメリットのように思えて、バーナードは目を輝かせていた。
「そしてヴェルヌ魔法学園に入り込むなら、ちょうどいいから、魔法のことを基礎から勉強してみろ。任務中に魔法のことを勉強できるんだ。ある意味、よかったと思うぞ」
「そうだな」
「じゃあ、早速、調整のためにピアスを付けてもらうか」
そしてマグルは小箱を開けて、ピアスを取り出してバーナードへと渡したのだった。
陛下は、バーナードがかつて十代の少年の姿に、魔道具を使ってその身を若返らせていたことを知っている。
マグルを呼んだということは、バーナードにその魔道具を使えということなのだろう。
そしてその魔道具を使って、ヴェルヌ魔法学園に潜り込めという話になるのだ。
そしてそれを同じように察したバーナードも小さくため息をついていた。
ゼスタ伯爵は、後日、詳しい話が出来る者をバーナードの許へ遣わすと言って、その場を後にした。
だからバーナードとフィリップは、とりあえず別室に呼ばれているであろう王宮副魔術師マグルの許へと足を運んだ。
王宮の応接室の一つにマグルはいて、応接室のテーブルの上に置かれている菓子をぱくついていた彼は、扉を開けて入ってきた騎士団長と副騎士団長に向かって、軽く片手を挙げて挨拶した。
「やぁ、バーナード、フィリップ、ご苦労様」
「……………ああ」
バーナードとフィリップが対面の椅子に座ると、すぐさまマグルは“静寂の魔道具”を起動させた。これで部屋の外に、会話が漏れることはない。
その起動がされたのを見て、バーナードは深々とため息をついた。額に手をやっている。
「………………参った」
その様子を見て、マグルはクスクスと笑っていた。
「本当、大変だな。国王陛下の信頼篤い騎士団長殿は」
「笑いごとではないぞ。俺は、魔獣を斬れと言われれば、斬りに行く。そういうのは得意だ」
「……まぁ、そうだよね。君は武勇に謳われる騎士だろうけど……」
「団長には出来ないと仰るのですか!!」
キッと睨みつけるフィリップに、マグルは「おおっ、こわ。お前の嫁さんはお前のことに関しては血の気が多すぎるぞ」と呟いていた。
「……だいたい僕、バーナードが出来ないなんて言っていないし」
「……………まぁ、いい。陛下に命ぜられたも同然の話だ。引き受けざるを得ない。やるのが、騎士というものだ」
「相変わらず忠義の篤い騎士だね。バーナード」
マグルは笑いながら、バーナードの前に小さな箱を取り出してコトリと置いた。
「陛下から学園での任務の話は伺っている。“若返りの魔道具”だ。これを使うのは懐かしいだろう」
やはり、それを用意しろという指示が王宮副魔術師長マグルにあったのだろう。
彼は、“若返りの魔道具”を騎士団長の前に用意していた。
「ああ」
中には黒い魔石がはまったピアスが一対入っている。それはマグル作成の魔道具で、使えば任意の年齢にその身を変えることができるのだ。
だが、魔石を相当消費するはずだった。
「改良して、魔石消費は抑え気味にしている。その代わり」
マグルはバーナードの茶色の目を見つめながらこう言った。
「所持者の体内にある魔力の消費で補えるようにしている。バーナード、お前は“淫魔”になったことで、魔力も増えているはずだ」
その言葉にフィリップは驚くが、バーナードは顔色を変えずにうなずいていた。
「ああ」
「ここ最近、お前は自分の魔力量をちゃんと測ったことはあるか?」
「ないが、おそらく増えているのは間違いない。俺は身体強化しか魔法は使っていないが、使っても魔力が減っている様子はないからな」
その言葉にマグルはため息混じりだった。
「せっかく淫魔になったメリットなんだから、もうちょっと自分のことを知ろうとしろよ。淫魔は精力も魔力に変換することができるらしい」
「そうなのか?」
「ああ。だから、お前は精力を得れば得るほど、魔力も得ることが出来る」
それは素晴らしいメリットのように思えて、バーナードは目を輝かせていた。
「そしてヴェルヌ魔法学園に入り込むなら、ちょうどいいから、魔法のことを基礎から勉強してみろ。任務中に魔法のことを勉強できるんだ。ある意味、よかったと思うぞ」
「そうだな」
「じゃあ、早速、調整のためにピアスを付けてもらうか」
そしてマグルは小箱を開けて、ピアスを取り出してバーナードへと渡したのだった。
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