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第十一章 聖王国の神子
第十三話 そして戦いの場へ(上)
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その夜、バーナードは夢の中へと落ちていった。
青い空に、白い尖塔、そして響き渡る鐘の音。
眼下に広がる街並みに、美しい白亜の壮麗な神殿。
再び、マラケシュの夢の中を訪れていた。
小鳥に姿を変えたバーナードは、その日、初めてあの神官の少年への贈り物を持ってきた。
小鳥の姿で運べるか不安であったが、なんとかクチバシでリボンをくわえて持ち上げることができた。
眠る時に、その手に持ったものは夢の中へと運ぶことができるようで、今回試したところ、バーナードは夢の中へと確かにそれを運ぶことができた。
重そうにそれを下げながら、神殿の見晴台へ向かう。
いつものように、きっとマラケシュはそこにいるだろうと考えたのだ。
案の定、彼はそこにいた。
マラケシュは何かを手に持っている。
布でくるまれた何かを大事そうに持ち続けている。
そして、小鳥のバーナードが飛んでくるのを認めた時、マラケシュは必死に叫んだのだ。
「逃げて、逃げて小鳥!! 逃げて」
瞬間、小鳥のバーナードの背後に、四人の男が現れた。
白銀の鎧を身に付けた聖騎士が二人、残り二人は魔術師のようだ。
聖騎士二人が剣を振り上げ、小鳥の姿のバーナードの後ろから切りつけようとする。
「やめて!!!!」
マラケシュが手を前に突き出し、聖騎士ら四人に向けて、光魔法を唱えたのだった。
バーナードと聖騎士らの間に白い壁が生じる。
何らかの防御魔法なのだろう。
振り上げた剣はその光の白い壁に弾かれて、危うく小鳥のバーナードは難を逃れた。
慌てて、マラケシュの元まで飛んで行く。
「……アレはなんだ」
「ごめんなさい、小鳥。僕、お前を聖騎士達に討伐されないように、お願いしたんだ。なのに、彼らは僕の話を聞いてくれなかった」
反対に、討伐してやるという話になったようだ。
バーナードは小さくため息をついた。
「俺は、お前のところの聖騎士に見つかれば、討伐されると話しただろう。俺だけ特別扱いはない」
「でも、ガディスは言ったんだ。人間から魔族になった場合はケースバイケースだって。討伐しないこともあるって」
「……討伐しないこともあるというのは、おそらくかなりのレアケースじゃないか」
マラケシュの光魔法の白い壁を、聖騎士二人が剣で叩き続けている。
やがて光魔法の壁にも細かいヒビが入り始める。
「だから、小鳥、逃げて」
(どうやって聖騎士二人と魔術師二人が夢の中へ入ってくることができているのかわからないが。何らかの術を使って人の夢の中へと入ることができるのか)
小鳥のバーナードは小首を傾げて考えている。
(だが、確かに四対一では、不利だな。逃げるか)
どうやって他人の夢から逃げるのか、いまいちその原理がわかっていないバーナードは、とりあえずこの場から去るしかないと空へと飛びあがった。その時、光魔法の壁が音を立てて砕け散り、魔術師二人が魔法で弓を作り、こちらに向かって連射してくる。
それを器用に避けながら、バーナードは飛んで行く。
「小鳥を攻撃しないで、小鳥は悪い魔族ではない」
「神子様、そいつは悪い魔族です。神子様は誑かされているんです」
魔術師団長レーベンが叫ぶように言う。
(面倒なことになったな……)
「レーベン、網を張れ」
聖騎士の一人に命令され、魔術師二人はすぐさま魔法の術を唱えた。
周囲を網のようなものが、空も含めて張り巡らされる。
巨大な網籠の中に閉じ込められた状態になった。
(聖王国にはこんな魔法もあるのか)
魔族退治を専門にやっているという聖騎士団、魔術師団なら有りえることだった。
逃げることもできないとなれば、戦うしかない。
内心ため息をつきながら、そう思った。
小鳥は地面に舞い降りる。
そして、バーナードは小鳥の姿から人の身に、一瞬でその姿を変えた。
「……小鳥?」
初めてバーナードの姿を見たマラケシュは、ぽかんと口を開けて、突然、目の前に現れた長身の黒髪の男の姿を眺めていた。地面に膝まづいて現れた男は、立ち上がった。
マントを翻し、詰襟の軍衣をまとい、剣を腰に帯びた男は凛々しくも立派な騎士のように見えた。
「……漁師じゃなかったの」
その言葉に、バーナードは小さく笑った。
「悪いな、漁師ではない。騎士だ」
青い空に、白い尖塔、そして響き渡る鐘の音。
眼下に広がる街並みに、美しい白亜の壮麗な神殿。
再び、マラケシュの夢の中を訪れていた。
小鳥に姿を変えたバーナードは、その日、初めてあの神官の少年への贈り物を持ってきた。
小鳥の姿で運べるか不安であったが、なんとかクチバシでリボンをくわえて持ち上げることができた。
眠る時に、その手に持ったものは夢の中へと運ぶことができるようで、今回試したところ、バーナードは夢の中へと確かにそれを運ぶことができた。
重そうにそれを下げながら、神殿の見晴台へ向かう。
いつものように、きっとマラケシュはそこにいるだろうと考えたのだ。
案の定、彼はそこにいた。
マラケシュは何かを手に持っている。
布でくるまれた何かを大事そうに持ち続けている。
そして、小鳥のバーナードが飛んでくるのを認めた時、マラケシュは必死に叫んだのだ。
「逃げて、逃げて小鳥!! 逃げて」
瞬間、小鳥のバーナードの背後に、四人の男が現れた。
白銀の鎧を身に付けた聖騎士が二人、残り二人は魔術師のようだ。
聖騎士二人が剣を振り上げ、小鳥の姿のバーナードの後ろから切りつけようとする。
「やめて!!!!」
マラケシュが手を前に突き出し、聖騎士ら四人に向けて、光魔法を唱えたのだった。
バーナードと聖騎士らの間に白い壁が生じる。
何らかの防御魔法なのだろう。
振り上げた剣はその光の白い壁に弾かれて、危うく小鳥のバーナードは難を逃れた。
慌てて、マラケシュの元まで飛んで行く。
「……アレはなんだ」
「ごめんなさい、小鳥。僕、お前を聖騎士達に討伐されないように、お願いしたんだ。なのに、彼らは僕の話を聞いてくれなかった」
反対に、討伐してやるという話になったようだ。
バーナードは小さくため息をついた。
「俺は、お前のところの聖騎士に見つかれば、討伐されると話しただろう。俺だけ特別扱いはない」
「でも、ガディスは言ったんだ。人間から魔族になった場合はケースバイケースだって。討伐しないこともあるって」
「……討伐しないこともあるというのは、おそらくかなりのレアケースじゃないか」
マラケシュの光魔法の白い壁を、聖騎士二人が剣で叩き続けている。
やがて光魔法の壁にも細かいヒビが入り始める。
「だから、小鳥、逃げて」
(どうやって聖騎士二人と魔術師二人が夢の中へ入ってくることができているのかわからないが。何らかの術を使って人の夢の中へと入ることができるのか)
小鳥のバーナードは小首を傾げて考えている。
(だが、確かに四対一では、不利だな。逃げるか)
どうやって他人の夢から逃げるのか、いまいちその原理がわかっていないバーナードは、とりあえずこの場から去るしかないと空へと飛びあがった。その時、光魔法の壁が音を立てて砕け散り、魔術師二人が魔法で弓を作り、こちらに向かって連射してくる。
それを器用に避けながら、バーナードは飛んで行く。
「小鳥を攻撃しないで、小鳥は悪い魔族ではない」
「神子様、そいつは悪い魔族です。神子様は誑かされているんです」
魔術師団長レーベンが叫ぶように言う。
(面倒なことになったな……)
「レーベン、網を張れ」
聖騎士の一人に命令され、魔術師二人はすぐさま魔法の術を唱えた。
周囲を網のようなものが、空も含めて張り巡らされる。
巨大な網籠の中に閉じ込められた状態になった。
(聖王国にはこんな魔法もあるのか)
魔族退治を専門にやっているという聖騎士団、魔術師団なら有りえることだった。
逃げることもできないとなれば、戦うしかない。
内心ため息をつきながら、そう思った。
小鳥は地面に舞い降りる。
そして、バーナードは小鳥の姿から人の身に、一瞬でその姿を変えた。
「……小鳥?」
初めてバーナードの姿を見たマラケシュは、ぽかんと口を開けて、突然、目の前に現れた長身の黒髪の男の姿を眺めていた。地面に膝まづいて現れた男は、立ち上がった。
マントを翻し、詰襟の軍衣をまとい、剣を腰に帯びた男は凛々しくも立派な騎士のように見えた。
「……漁師じゃなかったの」
その言葉に、バーナードは小さく笑った。
「悪いな、漁師ではない。騎士だ」
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