騎士団長が大変です

曙なつき

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第十一章 聖王国の神子

第八話 新たな性癖の発見

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 赤ん坊の話ばかりするフィリップに、嫌気がさしたのか、バーナードはまったくフィリップの屋敷に寄りつかなくなっていた。
 少し前までは、絶倫すぎるとやはり、寄りつかなくなった時期があった。
 フィリップは悶々としてしまう。
 
 フィリップは、バーナードとの子供が欲しいと願う気持ちは間違えていないと考えている。
 ただ、ちょっとしつこく言いすぎた点は反省すべきかも知れない。

 だから、仕事を終えて帰り支度をし始めるバーナードに向けて、フィリップはうなだれた様子で、声をかけたのだった。

「団長、もう子供のことは言いませんので、私の屋敷に来て下さい」

 しょんぼりとしたそのフィリップの様子に、バーナードはため息をついた。
 彼の金髪の頭に手をやって、掻き混ぜるようにする。

「わかった」



 バーナードがフィリップの屋敷へ足を運ぶのは、実に一週間ぶりであった。
 日中は封印の指輪をつけ、夜には王太子エドワードに淫夢を見せているために、飢えて苦しむことはない。
 だが、それをまったく感じないわけではないのだ。
 やはり、淫魔となった身。衝動的に精力が欲しくてたまらない時もある。

 浴室で身を清めた後、どちらともなく服に手をかけ、もどかしげにそれを脱がせていく。
 息も荒く、唇を重ねていく。

「バーナード、いいですよね」

 がっつきすぎると嫌われる。
 それを知っているフィリップが伺うようにバーナードを見ると、彼は頬を赤く染めながら言った。

「ああ」

 まるで許しを得た犬のように、フィリップは喜び勇んで彼の身にのしかかる。
 そして彼の耳から首筋にかけて、舌で舐めていく。

「くすぐったいぞ、フィリップ」

 笑いながら言うバーナードの胸を舐め、その身体中を延々と、腕も背中も足もフィリップが夢中になって舐めていくことに、少しだけバーナードは戸惑った様子を見せていた。

「……舐めることが好きなのか?」

 そこで、はたとフィリップは動きを止めた。

「…………す……………好きかも……知れません」

 フィリップは自分の新たな性癖に気が付いたように、カーと顔を赤くしていた。

「すみません」

「そうか……舐めるのが趣味なのか」

「すみません!! その、団長は私の伴侶なので、ちゃんと自分のものだという意味で」

 二人の脳裏にマーキングという言葉が浮かんで消えた。

「お前は、ケモミミが好きだったり、舐めるのが好きだったりと、ちょっと性癖を広げすぎじゃないか」

「……………私のことが、嫌いになってしまいましたか」

 どこかすがりつくような目で見つめるフィリップに、バーナードは苦笑いした。

「お前を嫌いになることはない。ただ……」

 その後の言葉は、口に出されなかったが、フィリップはなぜか感じ取っていた。

 お前がどんどん変態になっているような……

「私は変態じゃないです!! 団長、嫌わないでください!!」

「変態だなんて言ってないだろう!!」

「いえ、そう聞こえました!!」

「それは被害妄想だ。俺はそんなことを言っていない」

「そんな、団長、嫌わないでください」

 必死にしがみつくようにぎゅっとバーナードの身を抱きしめる。
 そこでまた、馬鹿力で締め上げられるように感じたバーナードは、うめき声を上げた後、フィリップの背中を叩いた。

「なんでお前、そんなに強く俺を抱くんだ。死ぬだろう!!」

「すみません!! 団長」





 バーナードの身体を無性に舐めたくなるのも、やたら馬鹿力になったことも、おそらく人狼の呪いを受けてのことだろうと、フィリップは考えていた。
 以前になかったことだからだ。
 でも、ケモミミについては、純粋に自分の趣味のような気がしていた。
 性欲も強くなってしまって、団長には白い目で見られている。

 彼と釣り合う身になれたことは、非常に嬉しかった。
 だが、その代償に、何か大切なものを失いつつあるような気がしていた。
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