騎士団長が大変です

曙なつき

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第九章 夢を渡る

第四話 翌朝の反省会

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 朝になった。
 窓の外から鳥のチュンチュンと囀る声がする。
 本来ならば、爽やかな朝と言いたいところだったが、フィリップのその屋敷の寝室には重苦しい空気が立ちこめていた。
 バーナードは頭を押さえながら、起き上がった。

「……………………ひどい目に遭った」

 そう言いながらも、彼の髪はツヤツヤと輝き、肌は張りのあるものになっていた。フィリップの精力をたらふく吸い取ったからだ。
 ただその瞳は、精神的疲労を湛えていた。

「………………………………申し訳ありません、バーナード」

 彼の傍らにはフィリップが横たわり、げっそりとやつれていた。
 バーナードはため息をついた。

「仕方がない。お前も分からなかったんだろう」

「夢の中では、本能のまま行動してしまうようですね。理性が働きませんでした。貴方を目にした瞬間、もう貴方しか目に入らなくて、飛びついてしまいました」

「……恐ろしいことだ」

 フィリップが、「腹上死なんて本望です!!!!」と叫びながら、バーナードを引きずって寝室に運び、寝台の上に放り投げたのだ。
 そんな怪力があることにも驚いた。夢の中で、その夢の主であるフィリップは何でもできるようで、常ならばバーナードを力で押さえつけることも出来ないはずなのに、昨夜は寝台の上で押さえつけられて荒々しく抱かれたのだ。
 逃げようとすれば尻尾を掴まれて引きずり戻される。
 目をギラギラと輝かせて、性欲の権化のようになっていたフィリップ。

「サキュバスが相手の夢を渡ると、こういうことになるんですよ、バーナード。わかりましたか」

 なんとなくわかった気がしたバーナードは弱々しくうなずいた。

「……それと、貴方は私以外の者の夢に渡っては、決していけませんよ」

「ああ、そうだな」

(お前の夢にももう、渡りたくない)と思っていたバーナードだったが、それを口にしないだけの気遣いはあった。
 
 ケモミミ軍服プレイとか、何を考えているのかわからないやつだった。

「特に」

 その時だけ気力をふり絞ったかのように、フィリップはガシリとバーナードの肩を掴んで、その顔を覗き込むようにして言った。

「エドワード王太子殿下の夢の中になど、絶対に渡ってはいけませんよ」

 その瞬間、二人揃ってフラグが立った音を、確かに聞いた気がした。
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