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第八章 王太子の見る夢
第二話 問い詰める
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詰め所に戻ったバーナード騎士団長に対し、フィリップは「今日は私の屋敷にお立ち寄りください」とどこか怒った口調で言った。
それを予期していたバーナードは、ため息混じりで頷いた。
全てをそのまま話してしまえば、フィリップは怒るだろう。
淫夢でとはいえ、伴侶である自分の精力を吸わずして、別の男の精力を吸うとは何事かと。
だが、そうせねばフィリップの身体に害が出てしまう。
バーナードとしては、やむを得ない行為だった。
フィリップの屋敷に到着するなり、フィリップは険しい表情で彼を問い詰めにかかった。
「殿下と何をお話ししていたのですか」
「……淫夢を殿下にも見せていたようなのだ。それで声がかけられた」
「私のほかに、殿下にも見せていたんですか!!」
フィリップは驚いて声を上げた。
自分だけが見せられていたと思ったあの淫らな夢を、王太子にまで見せているとは思いもしなかった。
非難するフィリップの視線に、バーナードは額に手を当てて言った。
「俺は、どうやら淫夢を見せる力を制御できていない」
「……嫌です」
「制御できないと言っただろう」
「私だけにして下さい」
「フィリップ!!」
バーナードの肩を強く掴みつつ、フィリップは言った。
「嫌です。絶対に嫌です。貴方が他の男の精力を口にするなんて、絶対に嫌です。どうか、どうか私だけにして下さい」
「…………制御できないんだ。仕方ない。俺だって本当は!!」
そう言いかけた彼の、その頬をフィリップは両手で包み込む。
「俺だって……の先を言ってください、バーナード」
バーナードは視線を横に逸らし、小さく呟くように言った。
「……お前だけがいい」
「エドワード王太子殿下は、大喜びですよ。きっと彼は非常に淫らな夢を見ているでしょう」
「何故お前にそんなことがわかるんだ」
バーナードの問いかけに、フィリップは一瞬視線を彷徨わせた。
自分がうんと淫らな愉しい夢を見ているから、きっと殿下もそうだろうと思ったのだ。
そして一度、そうした夢を見てしまうと、まるで中毒のようにハマってしまう。
たとえ精力を奪いつくされたとしても、その夢の愉しさは手放せない。
「とにかく、私は殿下に淫夢を見せることも、彼から精力を奪うことも反対です。私が貴方の伴侶なんですから」
「……言っただろう。俺はまだこの力を制御できていないんだ。それに、お前を……害するのは嫌だ」
苦し気にバーナードは眉間に皺を寄せ、絞り出すように言う。
「お前が大事だから」
それには思わずフィリップは笑ってしまった。
「その言い方だと、殿下はいいんですか? 貴方にとって大事ではないんですか」
「殿下は“最強王”の呪い持ちだ。お前とは精力の量の桁が違う。彼からはいくら吸い取っても害がないだろう」
「………………」
「お前が大事だから、俺はお前に手が出せないんだ。わかってくれ、フィリップ」
「………ずるい人だ。そんなことを言われたら」
フィリップはバーナードの頬を両手で包み、優しく角度を変えて唇を重ねた。
「貴方を許すしかないじゃないですか」
フィリップは不満を覚えながらも、バーナードを渋々と許したのだった。
そして自分が未だ、バーナードと釣り合う体になれないことに不満を漏らしていた。
「貴方と釣り合うようになれば、絶対にエドワード王太子の元になんぞ行かせません」
「…………」
それにバーナードは苦笑した。
「俺が直接、殿下の元に渡って精力を吸い上げているわけではない。殿下に夢を見せているだけだ」
「……でも、貴方が他人に“淫夢”を見せて精力を奪いに行っているということは、本当は……貴方は精力が足りないんじゃないですか。サキュバスは、男の精力を奪ってそれを糧にするのですから」
フィリップはバーナードの服の前を開かせていき、唇を、舌をその鍛えられた肌に這わせていく。そのまま手はズボンの前を寛がせる。
そして彼の欲望に触れ、優しく愛撫しながらも続けた。
「俺は確かに……淫魔だが、ある程度は……普通の人間の食事で補えるようだ」
敏感な部分に触れ出したせいで、バーナードは目元を赤く染め、途切れ途切れに言葉を続ける。
「普通の淫魔とは違うと思う。……ああ、フィリップ」
先端の敏感な部分を口に咥えて、舌を這わせていく。彼は手でフィリップの金髪の頭を掴んだ。
ジュブジュブという唾液と混じるようなその水音に、バーナードは羞恥の際にいるように身を震わせ、その気持ち良さにたちどころに果てていた。
精の全てを飲み干した後、フィリップはバーナードを見上げて言った。
「……今思ったんですが、私がこうして貴方のものを飲み干すと、貴方が取り込んだ他の男の精力とのバランスはどうなるんでしょう。精を失うことになるのでしょうか」
大真面目な顔でそんなことを言うフィリップを見て、バーナードは呆れにも似た思いを抱いた。
「…………お前は……」
「そもそも、男でサキュバスってレアなんでしょうかね。殿下の元にいた半魔の少年もサキュバスハーフでしたが、彼もレアだったんでしょうか」
バーナードは深くため息をついた後、フィリップの背に手を回して言った。
「なら、失った精をお前が補給してくれ」
「ええ、バーナード、喜んで貴方に奉仕しますよ」
そして寝台が再び軋み出した。
それを予期していたバーナードは、ため息混じりで頷いた。
全てをそのまま話してしまえば、フィリップは怒るだろう。
淫夢でとはいえ、伴侶である自分の精力を吸わずして、別の男の精力を吸うとは何事かと。
だが、そうせねばフィリップの身体に害が出てしまう。
バーナードとしては、やむを得ない行為だった。
フィリップの屋敷に到着するなり、フィリップは険しい表情で彼を問い詰めにかかった。
「殿下と何をお話ししていたのですか」
「……淫夢を殿下にも見せていたようなのだ。それで声がかけられた」
「私のほかに、殿下にも見せていたんですか!!」
フィリップは驚いて声を上げた。
自分だけが見せられていたと思ったあの淫らな夢を、王太子にまで見せているとは思いもしなかった。
非難するフィリップの視線に、バーナードは額に手を当てて言った。
「俺は、どうやら淫夢を見せる力を制御できていない」
「……嫌です」
「制御できないと言っただろう」
「私だけにして下さい」
「フィリップ!!」
バーナードの肩を強く掴みつつ、フィリップは言った。
「嫌です。絶対に嫌です。貴方が他の男の精力を口にするなんて、絶対に嫌です。どうか、どうか私だけにして下さい」
「…………制御できないんだ。仕方ない。俺だって本当は!!」
そう言いかけた彼の、その頬をフィリップは両手で包み込む。
「俺だって……の先を言ってください、バーナード」
バーナードは視線を横に逸らし、小さく呟くように言った。
「……お前だけがいい」
「エドワード王太子殿下は、大喜びですよ。きっと彼は非常に淫らな夢を見ているでしょう」
「何故お前にそんなことがわかるんだ」
バーナードの問いかけに、フィリップは一瞬視線を彷徨わせた。
自分がうんと淫らな愉しい夢を見ているから、きっと殿下もそうだろうと思ったのだ。
そして一度、そうした夢を見てしまうと、まるで中毒のようにハマってしまう。
たとえ精力を奪いつくされたとしても、その夢の愉しさは手放せない。
「とにかく、私は殿下に淫夢を見せることも、彼から精力を奪うことも反対です。私が貴方の伴侶なんですから」
「……言っただろう。俺はまだこの力を制御できていないんだ。それに、お前を……害するのは嫌だ」
苦し気にバーナードは眉間に皺を寄せ、絞り出すように言う。
「お前が大事だから」
それには思わずフィリップは笑ってしまった。
「その言い方だと、殿下はいいんですか? 貴方にとって大事ではないんですか」
「殿下は“最強王”の呪い持ちだ。お前とは精力の量の桁が違う。彼からはいくら吸い取っても害がないだろう」
「………………」
「お前が大事だから、俺はお前に手が出せないんだ。わかってくれ、フィリップ」
「………ずるい人だ。そんなことを言われたら」
フィリップはバーナードの頬を両手で包み、優しく角度を変えて唇を重ねた。
「貴方を許すしかないじゃないですか」
フィリップは不満を覚えながらも、バーナードを渋々と許したのだった。
そして自分が未だ、バーナードと釣り合う体になれないことに不満を漏らしていた。
「貴方と釣り合うようになれば、絶対にエドワード王太子の元になんぞ行かせません」
「…………」
それにバーナードは苦笑した。
「俺が直接、殿下の元に渡って精力を吸い上げているわけではない。殿下に夢を見せているだけだ」
「……でも、貴方が他人に“淫夢”を見せて精力を奪いに行っているということは、本当は……貴方は精力が足りないんじゃないですか。サキュバスは、男の精力を奪ってそれを糧にするのですから」
フィリップはバーナードの服の前を開かせていき、唇を、舌をその鍛えられた肌に這わせていく。そのまま手はズボンの前を寛がせる。
そして彼の欲望に触れ、優しく愛撫しながらも続けた。
「俺は確かに……淫魔だが、ある程度は……普通の人間の食事で補えるようだ」
敏感な部分に触れ出したせいで、バーナードは目元を赤く染め、途切れ途切れに言葉を続ける。
「普通の淫魔とは違うと思う。……ああ、フィリップ」
先端の敏感な部分を口に咥えて、舌を這わせていく。彼は手でフィリップの金髪の頭を掴んだ。
ジュブジュブという唾液と混じるようなその水音に、バーナードは羞恥の際にいるように身を震わせ、その気持ち良さにたちどころに果てていた。
精の全てを飲み干した後、フィリップはバーナードを見上げて言った。
「……今思ったんですが、私がこうして貴方のものを飲み干すと、貴方が取り込んだ他の男の精力とのバランスはどうなるんでしょう。精を失うことになるのでしょうか」
大真面目な顔でそんなことを言うフィリップを見て、バーナードは呆れにも似た思いを抱いた。
「…………お前は……」
「そもそも、男でサキュバスってレアなんでしょうかね。殿下の元にいた半魔の少年もサキュバスハーフでしたが、彼もレアだったんでしょうか」
バーナードは深くため息をついた後、フィリップの背に手を回して言った。
「なら、失った精をお前が補給してくれ」
「ええ、バーナード、喜んで貴方に奉仕しますよ」
そして寝台が再び軋み出した。
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