騎士団長が大変です

曙なつき

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第七章 加護を外れる

第十五話 後日談

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 後日、セリーヌが妖精達の王国へ渡った話を聞いた。
 セリーヌの父親である教授は、彼女を必死に止めたが、セリーヌは強行したらしい。
 教授は、彼女が人であることを止めて、妖精となること、そして妖精王子と結婚することなどとんでもないと言った。
 そして娘を屋敷の部屋に閉じ込め、冒険者達を雇って警備を尽くした。

 だが、その閉じ込められた部屋から、セリーヌは忽然と姿を消えた。
 彼女の唯一の味方の、妹のカトリーヌはこう言って父親を慰めた。

「姉様はとても幸せだと思います。大好きな妖精の国で、殿下と愛し合っています。だから、大丈夫ですよ」

 空間を裂いて現れた銀の髪に冠を被った美しい王子。小さな妖精達が花を撒き散らし、白い布を手にふわふわと飛び回っている。楽器を手にかき鳴らすもの達までいた。
 伸ばされた王子の手を、セリーヌは迷いもなく取った。
 警備についていた冒険者達は、剣を抜くのも忘れ、その夢のような光景に見入っていた。

「迎えに来たよ、セリーヌ」

 セリーヌの細身を王子は抱きしめ、それから抱き上げた。
 止める間もなく、彼らは消え失せた。
 一瞬のことだった。

 撒き散らされた白い花びらがひらひらと、部屋の床に散らばり落ちていた。



 手塩にかけた娘を、異種族である妖精に奪われることになった、父たる教授の嘆きは深いと聞く。
 だが、どうすればよかったのだろう。
 婚姻を認めて、喜んで送りだせば良かったのか。
 果たして、そんなことができるものなのか。

 でもおそらく、妹のカトリーヌの言うように、セリーヌはあの小さな妖精達の国で、美しい王子と共に今は幸せに暮らしているだろうと思われた。
 その背中に、美しい蝶の翅を宿して。
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