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第六章 王家の剣
第一話 妃の懐妊(上)
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セーラ妃が、エドワード王太子の元に嫁いで一年が経過した。
二人の仲睦まじさは、王国内でよく知られていた。
そして王太子の寵愛を受け続けたセーラ妃は、当然のように王太子の子を懐妊した。
その話を、王立騎士団騎士団長バーナードは喜びをその面に表して聞き、彼の伴侶のフィリップは複雑な表情を見せていた。
「殿下の御子ができたのか。素晴らしいな」
先祖代々、騎士として王家に仕えるバーナードである。主家たる王家が連綿と続いていくことは、彼の存在意義にもかかることなのだろう。素直に喜びを見せている。
かたや、フィリップとその報せを教えた王宮副魔術師長マグルは、微妙な表情を浮かべていた。バーナードが所用で団長室を出た隙に、マグルはフィリップを呼び留め、フィリップが懸念していることを解消すべく告げた。
「大丈夫だ、フィリップ。殿下はセーラ妃のご懐妊を機に、側妃を入れることになっている」
「…………そうですか」
セーラ妃が妊娠中となると、“最強王の呪い”を受けているエドワード王太子の欲の発散が問題になる。よもや、再びバーナードが王宮へ伽に行くことになるのではないかとフィリップは懸念した。
だが、それはないとマグルは答えた。
「セーラ妃がご懐妊した後のことについては、以前から侍従達の間でどう処理すべきか検討が続けられていたようで、殿下のお相手も探されていた」
かたや絶倫の呪いを受ける王子と、かたや淫乱の加護を持つ妃である。懐妊は時間の問題であった。
「さすがに“サキュバスの加護”持ちを見つけることはできなかった。だが、その代わりに」
「その代わりに?」
問いかけるフィリップに、マグルは答えた。
「サキュバスハーフ。いわゆる半魔の少年を迎え入れることになったんだ」
フィリップは驚いた。
王家の寝室に半魔とはいえ、魔に連なる者を入れるというのだ。
「……それは思い切った判断ですね」
「ソレをしなかった場合にどういうことになるのか、フィリップにはわかるよな」
フィリップはうなずいた。
侍従達は間違いなく、バーナードに声をかける。
そして、バーナードは忠節の為に、またその身を王太子に対して捧げるだろう。
それを考えたフィリップの眉間には深い皺が寄り、彼は不機嫌そうにため息をついた。
「とりあえず避けられるんだ。そんな顔をするな」
「その半魔の少年が、殿下に気に入られることを願ってますよ」
「大丈夫だ。淫魔の血を引くんだ。間違いなく、殿下とは相性がいいはずだ」
そうマグルは言い切った。
二人の仲睦まじさは、王国内でよく知られていた。
そして王太子の寵愛を受け続けたセーラ妃は、当然のように王太子の子を懐妊した。
その話を、王立騎士団騎士団長バーナードは喜びをその面に表して聞き、彼の伴侶のフィリップは複雑な表情を見せていた。
「殿下の御子ができたのか。素晴らしいな」
先祖代々、騎士として王家に仕えるバーナードである。主家たる王家が連綿と続いていくことは、彼の存在意義にもかかることなのだろう。素直に喜びを見せている。
かたや、フィリップとその報せを教えた王宮副魔術師長マグルは、微妙な表情を浮かべていた。バーナードが所用で団長室を出た隙に、マグルはフィリップを呼び留め、フィリップが懸念していることを解消すべく告げた。
「大丈夫だ、フィリップ。殿下はセーラ妃のご懐妊を機に、側妃を入れることになっている」
「…………そうですか」
セーラ妃が妊娠中となると、“最強王の呪い”を受けているエドワード王太子の欲の発散が問題になる。よもや、再びバーナードが王宮へ伽に行くことになるのではないかとフィリップは懸念した。
だが、それはないとマグルは答えた。
「セーラ妃がご懐妊した後のことについては、以前から侍従達の間でどう処理すべきか検討が続けられていたようで、殿下のお相手も探されていた」
かたや絶倫の呪いを受ける王子と、かたや淫乱の加護を持つ妃である。懐妊は時間の問題であった。
「さすがに“サキュバスの加護”持ちを見つけることはできなかった。だが、その代わりに」
「その代わりに?」
問いかけるフィリップに、マグルは答えた。
「サキュバスハーフ。いわゆる半魔の少年を迎え入れることになったんだ」
フィリップは驚いた。
王家の寝室に半魔とはいえ、魔に連なる者を入れるというのだ。
「……それは思い切った判断ですね」
「ソレをしなかった場合にどういうことになるのか、フィリップにはわかるよな」
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侍従達は間違いなく、バーナードに声をかける。
そして、バーナードは忠節の為に、またその身を王太子に対して捧げるだろう。
それを考えたフィリップの眉間には深い皺が寄り、彼は不機嫌そうにため息をついた。
「とりあえず避けられるんだ。そんな顔をするな」
「その半魔の少年が、殿下に気に入られることを願ってますよ」
「大丈夫だ。淫魔の血を引くんだ。間違いなく、殿下とは相性がいいはずだ」
そうマグルは言い切った。
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