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【短編】
傷病の騎士の、妻たるものの務め (六)
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第六話 執事の卑怯な攻撃
夕方になった。今日はバーナードの帰宅が遅いらしい。彼はまだ帰ってこなかった。
先にお食事をご用意しますと言われ、またスープとパンとフルーツが運ばれてきた。
一人で黙々と食事を取っている時、部屋に執事のセバスが入ってきた。
彼は何かを手に持っている。
どうやら、記録の魔道具の水晶玉のようだった。
「それは、何ですか」
「お暇でしょうから。旦那様のご幼少の頃の映像記録でもご覧になって頂こうと思いまして」
「!!」
思わずフィリップは叫びそうになった。
(バーナードの子供の頃の映像記録!!)
目を輝かせるフィリップに、セバスは微笑んでいた。
「さぁ、どうぞ。こちらは旦那様が生まれた頃の映像記録ですね」
食事の手を止め、思わずフィリップはその映像を見入ってしまった。
茶色の瞳に黒髪の赤ん坊のバーナード。手足もムチムチして可愛らしい。はいはいしている姿。
高い高いをされ、きゃっきゃと笑い声をあげている。愛くるしかった。
しかし、このように映像記録を残すことためには、非常に高度な魔術が必要であり、魔石の消費も馬鹿にならないはずだった。
「かわいい旦那様の記録は残さなければならないと思って、残しておきました。これは私の私物です」
思わず、フィリップはセバスを凝視していた。
(し……私物!?)
映像で、おしめをした小さなバーナードが、大きな犬におしめを取られそうになって転んで泣いていた。
はらはらとしながらそれを凝視するフィリップの前で、無情にも映像記録の映像がブチンと切られる。
「おっとすみません。あまり長々とお見せすると、奥様のご負担になりますでしょう」
「いえいえ、負担なんてとんでもないです。是非続きを見せてください!!」
(あの犬がおしめを咥えて行って、泣いている団長の姿は可愛くて仕方がなかった。あの後どうなっちゃうんだ)
「私が旦那様に怒られてしまいます。奥様にご無理をさせてしまったと」
そして、セバスはにっこりと笑った。
「ですので、この映像記録はしまいますね」
(あああああああああああああああああああああああああ、見せろよ、この糞ジジイ!!)
(お前、絶対にわかっていてやっているだろう!!)
(こんなにかわいい団長の赤ちゃん姿、ああああああああああああああ、続きが見たい!! 見たい!!)
「……その映像記録は、写しを取らせて頂いてもよろしいでしょうか」
フィリップが懇願するように頼むと、セバスは案の定、首を振った。
「いいえ、とんでもない。爺の趣味で撮ったものですから。お恥ずかしい限りです」
そう言って、セバスは一礼して、記録の魔道具の水晶玉をしっかりと抱いて出ていった。
彼がいなくなると、思わずフィリップは、枕を拳で何度も叩くのであった。
夕方になった。今日はバーナードの帰宅が遅いらしい。彼はまだ帰ってこなかった。
先にお食事をご用意しますと言われ、またスープとパンとフルーツが運ばれてきた。
一人で黙々と食事を取っている時、部屋に執事のセバスが入ってきた。
彼は何かを手に持っている。
どうやら、記録の魔道具の水晶玉のようだった。
「それは、何ですか」
「お暇でしょうから。旦那様のご幼少の頃の映像記録でもご覧になって頂こうと思いまして」
「!!」
思わずフィリップは叫びそうになった。
(バーナードの子供の頃の映像記録!!)
目を輝かせるフィリップに、セバスは微笑んでいた。
「さぁ、どうぞ。こちらは旦那様が生まれた頃の映像記録ですね」
食事の手を止め、思わずフィリップはその映像を見入ってしまった。
茶色の瞳に黒髪の赤ん坊のバーナード。手足もムチムチして可愛らしい。はいはいしている姿。
高い高いをされ、きゃっきゃと笑い声をあげている。愛くるしかった。
しかし、このように映像記録を残すことためには、非常に高度な魔術が必要であり、魔石の消費も馬鹿にならないはずだった。
「かわいい旦那様の記録は残さなければならないと思って、残しておきました。これは私の私物です」
思わず、フィリップはセバスを凝視していた。
(し……私物!?)
映像で、おしめをした小さなバーナードが、大きな犬におしめを取られそうになって転んで泣いていた。
はらはらとしながらそれを凝視するフィリップの前で、無情にも映像記録の映像がブチンと切られる。
「おっとすみません。あまり長々とお見せすると、奥様のご負担になりますでしょう」
「いえいえ、負担なんてとんでもないです。是非続きを見せてください!!」
(あの犬がおしめを咥えて行って、泣いている団長の姿は可愛くて仕方がなかった。あの後どうなっちゃうんだ)
「私が旦那様に怒られてしまいます。奥様にご無理をさせてしまったと」
そして、セバスはにっこりと笑った。
「ですので、この映像記録はしまいますね」
(あああああああああああああああああああああああああ、見せろよ、この糞ジジイ!!)
(お前、絶対にわかっていてやっているだろう!!)
(こんなにかわいい団長の赤ちゃん姿、ああああああああああああああ、続きが見たい!! 見たい!!)
「……その映像記録は、写しを取らせて頂いてもよろしいでしょうか」
フィリップが懇願するように頼むと、セバスは案の定、首を振った。
「いいえ、とんでもない。爺の趣味で撮ったものですから。お恥ずかしい限りです」
そう言って、セバスは一礼して、記録の魔道具の水晶玉をしっかりと抱いて出ていった。
彼がいなくなると、思わずフィリップは、枕を拳で何度も叩くのであった。
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