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【短編】
騎士団長と南の島 (5)
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第五話 睦み合う
“淫魔の王女”の加護を得て以来、何事に対しても敏感に身体を変えられてしまったバーナードは、好きだった酒を嗜めることができなくなった。
宿でも、この島の名酒を勧められたが、残念そうに断わっている。
仕方のないことだとそれについては早々に諦めているようだった。だが、フィリップが酒を飲む姿を少し羨ましそうに眺めていた。
「一口でもダメなんですよね」
「そうだ。前に飲んで昏倒したろう」
そうだった。
強引に口に含ませて、彼に意識を失わさせて屋敷へ連れ込んだこともあった。
今となっては懐かしい思い出だった。
宿の給仕係から、酒を入れたゼリー寄せを勧められて、バーナードはそれを口に含む。
思ったよりもそれが美味しかったようで、お代わりをして食べている。
余り食べ過ぎると、昏倒してしまうのではないかと少しフィリップはハラハラとしていた。
食事を終え、満点の星空の下を二人で連れ立って歩き、コテージのある方へ向かう。
また小舟に乗ろうとすると、案の定、彼は少しよろけていた。
慌ててフィリップがその腕を取る。
「私が漕ぎますよ」
「……ゼリー如きで酔うとはな」
バーナードの顔は少し赤かった。彼は手で額を押さえる。
「海に落ちないでくださいよ」
「そこまで酔っていない」
と言いながらも、彼はどこか陽気に笑い、小舟の席についた。フィリップが櫂を持って漕ぎ出すのを黙って眺めている。
「たまにはこういうのもいいものだな」
水面には頭上の月が白く映っていた。櫂で漕ぐと水面に静かに波紋が広がる。
小舟がコテージにつくと、彼は大きな天蓋付きの寝台に飛び込み、それから手を広げてフィリップが飛び込むのを待った。
フィリップが彼を抱きしめると、また唇を重ねる。角度を変え、舌を絡ませ、夢中になって求めあう。
あのゼリーには媚薬でも少し含まれていたのではないかと思うほど、バーナードの瞳に熱がこもっていた。
珍しく彼の方が催促をしてくる。
「早くしろ……フィリップ」
服を脱ぎ捨てた後、彼のその肌に丁寧に口づけを落としていく。舌で舐め、甘く噛むと、堪え切れないように声をあげていた。
足を肩に乗せ、大きくその身を拓かせて貫こうとすると、普段の彼なら恥ずかしさに、ややも抵抗する様子を見せるが、南の島という解放感のせいか、はたまたあの、酒の含まれているゼリーの成分のせいか、その時は抵抗を見せなかった。
ゆっくりと後孔を貫く。
「あ…………あああ」
「バーナード、気持ちいいですか」
以前口にした媚薬と違い、意識が明朗としているのだろう。酔いに頬を赤らめながらも、彼は小さくうなずいて言った。
「ああ、気持ちがいい」
それにフィリップは微笑んだ。
「よかった」
二人して汗に濡れ、その身を重ね合う快感を夢中になって拾っていた。
最奥まで貫かれると、バーナードはあまりの悦さに、フィリップの身にきつくしがみつく。
「だめだ、もう……おかしくなりそうだ」
大きく軋む寝台の上で、フィリップは彼の身を突き上げる。彼の中が熱く締め上げ、フィリップもその快感にたちどころに彼の中に放つ。
その刺激に彼もまた声を上げていた。
翌朝、寝台で目が覚めた時、バーナードが傍らにいないことに気が付いて、フィリップは名を呼んだ。
「バーナード?」
運動でもしにいっているのだろうかと一瞬考えたが、それは違っていた。
コテージの入口から、バケツと釣り竿を持って現れたバーナードに、フィリップは目を見開いていた。
「起きたのか、フィリップ」
バケツの中ではたくさんの魚がぴちぴちと飛び跳ねていた。
「………………ソレ、どうしたんですか」
そう問いかけるフィリップに、バーナードは何故か照れたように言った。
「朝釣りに行ってきたんだ。すごい釣れたぞ!!」
若干ドヤ顔であった。
昨夜、散々貪り合ったはずなのに、相変わらずのセックスによる体力増強の効果(加護)のためか、彼は完徹でもへっちゃらな様子だった。
あの後に……朝釣り?
え?
本当に?
フィリップは頭を押さえ、思わずハーとため息をついていると、バーナードは笑顔で言った。
「さぁ、朝食に行こう。食べたら、出かけるぞ」
完徹で朝釣りにも行ったはずなのに、彼は元気いっぱいであった。
“淫魔の王女”の加護を得て以来、何事に対しても敏感に身体を変えられてしまったバーナードは、好きだった酒を嗜めることができなくなった。
宿でも、この島の名酒を勧められたが、残念そうに断わっている。
仕方のないことだとそれについては早々に諦めているようだった。だが、フィリップが酒を飲む姿を少し羨ましそうに眺めていた。
「一口でもダメなんですよね」
「そうだ。前に飲んで昏倒したろう」
そうだった。
強引に口に含ませて、彼に意識を失わさせて屋敷へ連れ込んだこともあった。
今となっては懐かしい思い出だった。
宿の給仕係から、酒を入れたゼリー寄せを勧められて、バーナードはそれを口に含む。
思ったよりもそれが美味しかったようで、お代わりをして食べている。
余り食べ過ぎると、昏倒してしまうのではないかと少しフィリップはハラハラとしていた。
食事を終え、満点の星空の下を二人で連れ立って歩き、コテージのある方へ向かう。
また小舟に乗ろうとすると、案の定、彼は少しよろけていた。
慌ててフィリップがその腕を取る。
「私が漕ぎますよ」
「……ゼリー如きで酔うとはな」
バーナードの顔は少し赤かった。彼は手で額を押さえる。
「海に落ちないでくださいよ」
「そこまで酔っていない」
と言いながらも、彼はどこか陽気に笑い、小舟の席についた。フィリップが櫂を持って漕ぎ出すのを黙って眺めている。
「たまにはこういうのもいいものだな」
水面には頭上の月が白く映っていた。櫂で漕ぐと水面に静かに波紋が広がる。
小舟がコテージにつくと、彼は大きな天蓋付きの寝台に飛び込み、それから手を広げてフィリップが飛び込むのを待った。
フィリップが彼を抱きしめると、また唇を重ねる。角度を変え、舌を絡ませ、夢中になって求めあう。
あのゼリーには媚薬でも少し含まれていたのではないかと思うほど、バーナードの瞳に熱がこもっていた。
珍しく彼の方が催促をしてくる。
「早くしろ……フィリップ」
服を脱ぎ捨てた後、彼のその肌に丁寧に口づけを落としていく。舌で舐め、甘く噛むと、堪え切れないように声をあげていた。
足を肩に乗せ、大きくその身を拓かせて貫こうとすると、普段の彼なら恥ずかしさに、ややも抵抗する様子を見せるが、南の島という解放感のせいか、はたまたあの、酒の含まれているゼリーの成分のせいか、その時は抵抗を見せなかった。
ゆっくりと後孔を貫く。
「あ…………あああ」
「バーナード、気持ちいいですか」
以前口にした媚薬と違い、意識が明朗としているのだろう。酔いに頬を赤らめながらも、彼は小さくうなずいて言った。
「ああ、気持ちがいい」
それにフィリップは微笑んだ。
「よかった」
二人して汗に濡れ、その身を重ね合う快感を夢中になって拾っていた。
最奥まで貫かれると、バーナードはあまりの悦さに、フィリップの身にきつくしがみつく。
「だめだ、もう……おかしくなりそうだ」
大きく軋む寝台の上で、フィリップは彼の身を突き上げる。彼の中が熱く締め上げ、フィリップもその快感にたちどころに彼の中に放つ。
その刺激に彼もまた声を上げていた。
翌朝、寝台で目が覚めた時、バーナードが傍らにいないことに気が付いて、フィリップは名を呼んだ。
「バーナード?」
運動でもしにいっているのだろうかと一瞬考えたが、それは違っていた。
コテージの入口から、バケツと釣り竿を持って現れたバーナードに、フィリップは目を見開いていた。
「起きたのか、フィリップ」
バケツの中ではたくさんの魚がぴちぴちと飛び跳ねていた。
「………………ソレ、どうしたんですか」
そう問いかけるフィリップに、バーナードは何故か照れたように言った。
「朝釣りに行ってきたんだ。すごい釣れたぞ!!」
若干ドヤ顔であった。
昨夜、散々貪り合ったはずなのに、相変わらずのセックスによる体力増強の効果(加護)のためか、彼は完徹でもへっちゃらな様子だった。
あの後に……朝釣り?
え?
本当に?
フィリップは頭を押さえ、思わずハーとため息をついていると、バーナードは笑顔で言った。
「さぁ、朝食に行こう。食べたら、出かけるぞ」
完徹で朝釣りにも行ったはずなのに、彼は元気いっぱいであった。
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