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第二章 副騎士団長がおかしいです
第四話 副騎士団長は何か企んでいるようです
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「神官に言われた後、酒は試してみたんですか」
「すでに薬がすごく効きやすくなっている。ハイポーションを飲んだら、古傷もすべて消え失せた。あそこまで効くことは普通ないだろう。酒もおそらく、飲んだ瞬間に昏倒するんじゃないか」
「……試してみましょう」
副騎士団長フィリップはそう持ちかけた。
「試すわけがないだろう!! お前は何を考えている」
「団長を昏倒させたいと思ってます」
「ふざけるな!!」
怒りに満ちた声で叫ぶ騎士団長。すぐさま強引にその唇を重ねた。片手で彼の肩を掴み、もう片手でその後頭部を押さえつける。口に含んだワインを口移しし、舌も入れようとすると、噛みつかれた。
「やめろ、馬鹿!!」
「噛みつくなんてひどいですね」
バーナードの唇から白ワインが零れ落ちる。吐き出そうとするが、少し飲み込んでしまったらしい。
彼は目を押さえた。
「……くそったれ」
唇からほんの数滴移しただけなのに、効果は覿面だった。
彼はその逞しい上体を揺らしはじめ、ぐらりと椅子から落ちそうになった。慌ててそれを抱える。
「団長、本当に酒がダメになったんですね」
「…………フィリップ……この……憶えていろ」
視界が歪む。やがて眼が開けられなくなったようで、彼の瞼が落ちた。
それを見た後、フィリップは店の女主人に勘定を持ってこさせ、会計を済ませた後、呼び寄せた馬車に酔い潰れた騎士団長を運んだのだった。
目が覚めた時、自分にのしかかっていたのは案の定、副騎士団長のフィリップだった。驚くほどの美貌の男の顔が真近にあった。
そして、寝台の上で、自分が一糸も纏わぬ裸の状態であることに、ため息をついた。
「フィリップ、お前はおかしい」
目を覚ました騎士団長バーナードがそう言うと、フィリップは笑った。
「開口一番がそれですか、団長」
フィリップはバーナードの肌に舌を這わしていく。柔らかい舌が這い回るその感触が、ぞくぞくするほど気持ちが良いことに気が付いた。バーナードは眉間に皺を寄せ、声を漏らさぬように耐えた。
神官の言うように、敏感になっているのだ。気を抜けば、自分の口から喘ぐ声が零れそうだった。
「やめろ。こんな男の身体を愛撫して、抱こうとしても楽しくないだろう。お前ほどの奴なら、女ならよりどりみどりのはずだ。女を誘え」
「…………」
フィリップは、バーナードを上から見下ろし、一瞬、泣きそうな顔をした。
「……ダメだったんです」
「…………」
「女を抱こうとしても、ダメだったんです」
バーナードの眉間にはくっきりと深い皺が刻まれた。
「……マジか」
「だから、団長が責任を取ってください」
「……悪いが、それは無しにしてくれ。男が好きになったとしても、別に俺である必要はないだろう」
正論である。
フィリップは、バーナードの身体に抱きついた。切なげな熱い息を吐きながら、触れていく。
的確に、バーナードのイイ所に触れていく彼の手の感触に、バーナードは気が狂いそうなほどの快感を覚えていた。すでに股間の男根は固く張り詰めている。
これはヤバい。
これ以上はマズイ。
「団長でないとダメなんです。もう他の男なんて考えられません」
そんなことを耳元で言われたバーナードは、発狂しそうな気持ちだった。
こいつは何を言っている。
だが、逃げようにも身体に力が入らなかった。
酒の影響かと思ったが、違う。
身体が、男を欲しているのだ。
身の奥に、またあの刺激が欲しいとねだっている。
それに気が付いた時、バーナードは絶望した。
「すでに薬がすごく効きやすくなっている。ハイポーションを飲んだら、古傷もすべて消え失せた。あそこまで効くことは普通ないだろう。酒もおそらく、飲んだ瞬間に昏倒するんじゃないか」
「……試してみましょう」
副騎士団長フィリップはそう持ちかけた。
「試すわけがないだろう!! お前は何を考えている」
「団長を昏倒させたいと思ってます」
「ふざけるな!!」
怒りに満ちた声で叫ぶ騎士団長。すぐさま強引にその唇を重ねた。片手で彼の肩を掴み、もう片手でその後頭部を押さえつける。口に含んだワインを口移しし、舌も入れようとすると、噛みつかれた。
「やめろ、馬鹿!!」
「噛みつくなんてひどいですね」
バーナードの唇から白ワインが零れ落ちる。吐き出そうとするが、少し飲み込んでしまったらしい。
彼は目を押さえた。
「……くそったれ」
唇からほんの数滴移しただけなのに、効果は覿面だった。
彼はその逞しい上体を揺らしはじめ、ぐらりと椅子から落ちそうになった。慌ててそれを抱える。
「団長、本当に酒がダメになったんですね」
「…………フィリップ……この……憶えていろ」
視界が歪む。やがて眼が開けられなくなったようで、彼の瞼が落ちた。
それを見た後、フィリップは店の女主人に勘定を持ってこさせ、会計を済ませた後、呼び寄せた馬車に酔い潰れた騎士団長を運んだのだった。
目が覚めた時、自分にのしかかっていたのは案の定、副騎士団長のフィリップだった。驚くほどの美貌の男の顔が真近にあった。
そして、寝台の上で、自分が一糸も纏わぬ裸の状態であることに、ため息をついた。
「フィリップ、お前はおかしい」
目を覚ました騎士団長バーナードがそう言うと、フィリップは笑った。
「開口一番がそれですか、団長」
フィリップはバーナードの肌に舌を這わしていく。柔らかい舌が這い回るその感触が、ぞくぞくするほど気持ちが良いことに気が付いた。バーナードは眉間に皺を寄せ、声を漏らさぬように耐えた。
神官の言うように、敏感になっているのだ。気を抜けば、自分の口から喘ぐ声が零れそうだった。
「やめろ。こんな男の身体を愛撫して、抱こうとしても楽しくないだろう。お前ほどの奴なら、女ならよりどりみどりのはずだ。女を誘え」
「…………」
フィリップは、バーナードを上から見下ろし、一瞬、泣きそうな顔をした。
「……ダメだったんです」
「…………」
「女を抱こうとしても、ダメだったんです」
バーナードの眉間にはくっきりと深い皺が刻まれた。
「……マジか」
「だから、団長が責任を取ってください」
「……悪いが、それは無しにしてくれ。男が好きになったとしても、別に俺である必要はないだろう」
正論である。
フィリップは、バーナードの身体に抱きついた。切なげな熱い息を吐きながら、触れていく。
的確に、バーナードのイイ所に触れていく彼の手の感触に、バーナードは気が狂いそうなほどの快感を覚えていた。すでに股間の男根は固く張り詰めている。
これはヤバい。
これ以上はマズイ。
「団長でないとダメなんです。もう他の男なんて考えられません」
そんなことを耳元で言われたバーナードは、発狂しそうな気持ちだった。
こいつは何を言っている。
だが、逃げようにも身体に力が入らなかった。
酒の影響かと思ったが、違う。
身体が、男を欲しているのだ。
身の奥に、またあの刺激が欲しいとねだっている。
それに気が付いた時、バーナードは絶望した。
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