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第一章 騎士団長が大変です
第三話 襲いかかる騎士団長
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「……バーナード……団長?」
彼はハァハァと荒く息を吐き続けている。
そのまま彼は、フィリップのそばまで突進してきた。
危険を感じたフィリップが後ずさると、彼は足を使ってフィリップを蹴り倒し、その上に跨った。
体格の良いバーナードの体重がかかり、フィリップは顔をしかめつつ、正気を取り戻してもらいたくて、彼の名を何度も叫んだ。
「団長!! 目を覚ましてください、バーナード団長」
「……くそっ、無理だ。こんなの耐えられない」
茶色の目からぽたりと涙が零れる。正気と狂気の狭間にいるようで、彼は苦痛を吐露していた。
「……団長、大丈夫ですか」
「くそっ、くそっ、だめだ。ああ、もうくそ」
日頃、汚い言葉で悪態をつくことのないバーナードである。相当な苦痛なのだろう。
そんな彼をじっと見上げて、フィリップは言った。
「……私は、団長なら抱かれてもいいです」
その言葉に、バーナードは思い切り叫んだ。
「くそったれ!! そんなことを言うな。耐えきれなくなる」
「男同士のやり方は、知っています」
ぎょっとしてバーナードは自分が組み伏せているフィリップを見つめた。
なんでそんなことを知っているんだといわんばかりの視線である。
「こうした外見なので、若い頃から誘われていました。ああ、勘違いしないでください。好んでしたことは一度もありません」
フィリップがその美しい外見のせいで、子供の頃から苦労していた話は聞いていた。
あまりにもひどい目にも遭ったことがあるせいで、一時期バーナードが彼を庇護していたこともあった。
バーナードは眉をぎゅっと寄せた。
「俺が取り憑かれたのはサキュバスだ」
「……?」
「抱かれるのは俺の方になるんだ。くそっ、耐えきれない、こんなこと!!」
バーナードは叫ぶ。
それにフィリップは動きを止めた。
「私が………………団長を抱くんですか」
想像したこともない事態だった。
この目の前の雄々しくも凛々しいバーナード騎士団長を抱く。剣豪の称号を持ち、誰よりも強く、勇敢で騎士の中の騎士と称される男を抱く。逞しい筋肉の持ち主のこの男を、抱く?
一瞬考えこんだ後、すぐにフィリップは言った。
「大丈夫です。団長なら私、イケそうです」
意気込んで言うフィリップの言葉に、バーナードは首を振った。絶望的な眼差しで副騎士団長を見遣った。
「……やめてくれ。俺が耐えられない。もう言うな」
フィリップは自分の上に跨るその男の太腿にそっと手を這わせた。びくんと身体を震わせるバーナードを見つめる。フィリップの青い瞳に欲の色があるのを、バーナードは初めて認めた。
「団長を抱きたいです」
「言うな!! もう聞きたくない」
「団長なら、抱けるんですよ。本当に」
自分の上に跨っていた彼を、今度はぐるりと下に押し倒し、フィリップは自分の方が彼の上に跨ったのだ。
「サキュバスは男の精を欲しがる。それが彼女らの生きる糧だそうです。だから、団長も今は私の精が欲しいはずだ。いや、欲しくてたまらないはずだ」
「……フィリップ」
「私の精をとれば、楽になりますよ、団長」
それは、よく染みわたる毒のような言葉だった。
彼はハァハァと荒く息を吐き続けている。
そのまま彼は、フィリップのそばまで突進してきた。
危険を感じたフィリップが後ずさると、彼は足を使ってフィリップを蹴り倒し、その上に跨った。
体格の良いバーナードの体重がかかり、フィリップは顔をしかめつつ、正気を取り戻してもらいたくて、彼の名を何度も叫んだ。
「団長!! 目を覚ましてください、バーナード団長」
「……くそっ、無理だ。こんなの耐えられない」
茶色の目からぽたりと涙が零れる。正気と狂気の狭間にいるようで、彼は苦痛を吐露していた。
「……団長、大丈夫ですか」
「くそっ、くそっ、だめだ。ああ、もうくそ」
日頃、汚い言葉で悪態をつくことのないバーナードである。相当な苦痛なのだろう。
そんな彼をじっと見上げて、フィリップは言った。
「……私は、団長なら抱かれてもいいです」
その言葉に、バーナードは思い切り叫んだ。
「くそったれ!! そんなことを言うな。耐えきれなくなる」
「男同士のやり方は、知っています」
ぎょっとしてバーナードは自分が組み伏せているフィリップを見つめた。
なんでそんなことを知っているんだといわんばかりの視線である。
「こうした外見なので、若い頃から誘われていました。ああ、勘違いしないでください。好んでしたことは一度もありません」
フィリップがその美しい外見のせいで、子供の頃から苦労していた話は聞いていた。
あまりにもひどい目にも遭ったことがあるせいで、一時期バーナードが彼を庇護していたこともあった。
バーナードは眉をぎゅっと寄せた。
「俺が取り憑かれたのはサキュバスだ」
「……?」
「抱かれるのは俺の方になるんだ。くそっ、耐えきれない、こんなこと!!」
バーナードは叫ぶ。
それにフィリップは動きを止めた。
「私が………………団長を抱くんですか」
想像したこともない事態だった。
この目の前の雄々しくも凛々しいバーナード騎士団長を抱く。剣豪の称号を持ち、誰よりも強く、勇敢で騎士の中の騎士と称される男を抱く。逞しい筋肉の持ち主のこの男を、抱く?
一瞬考えこんだ後、すぐにフィリップは言った。
「大丈夫です。団長なら私、イケそうです」
意気込んで言うフィリップの言葉に、バーナードは首を振った。絶望的な眼差しで副騎士団長を見遣った。
「……やめてくれ。俺が耐えられない。もう言うな」
フィリップは自分の上に跨るその男の太腿にそっと手を這わせた。びくんと身体を震わせるバーナードを見つめる。フィリップの青い瞳に欲の色があるのを、バーナードは初めて認めた。
「団長を抱きたいです」
「言うな!! もう聞きたくない」
「団長なら、抱けるんですよ。本当に」
自分の上に跨っていた彼を、今度はぐるりと下に押し倒し、フィリップは自分の方が彼の上に跨ったのだ。
「サキュバスは男の精を欲しがる。それが彼女らの生きる糧だそうです。だから、団長も今は私の精が欲しいはずだ。いや、欲しくてたまらないはずだ」
「……フィリップ」
「私の精をとれば、楽になりますよ、団長」
それは、よく染みわたる毒のような言葉だった。
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