上 下
57 / 60
第4章 ちびっこ怪獣三匹、仲間と協力して戦利品を吟味する

13

しおりを挟む
 生活魔法が魔法を使う入り口だとユーゴは言うが、魔力はあっても必ず魔法が使えるわけではないのではないか。
 そんな疑問が頭を掠めていた金堂だったが。

「あー、金堂はアレだ。見えてるトコだけじゃなくてさ、『見えないところも、まるっと全部きれいにしたい』でやってみ?」

「まるっと全部……? まるっと……おぉ!?」

 半信半疑で光太の言葉通りやってみれば、薄汚れ、くたびれていた採取用の布袋が新品同様の色味を取り戻したことに喜びの声をあげる。

「な? な? 魔力がどうとか考えないで、どういう風になって欲しいかを考えて、能力ちからを使う時みたいにやればいいんだって!」

「ホントぉ?」

 力説する光太を、カエデが疑わしそうな目で見る。
 コズエとふたり、せっせと練習してみたものの、一度としてまともに発動しなかったのだ。
 そんな簡単な方法でうまくいくとは思えないカエデである。

「いや。どうやら本当だ。コウちゃんの言う通りやったら、失敗がなくなった」

 ケースケが、物は試しと光太の言う通りにやってみて、軽く頷く。
 光太の言う通り、能力ちからを使う感覚で生活魔法を使えば、思った通りの魔法が発動する。
 魔力がどうの、効果がどうのと細かく考えすぎると、ちょっと余計なことが頭をよぎっただけで、うまく発動できなくなってしまうのだ。

 あれこれ深く考えるのではなく、望みをそのまま魔力に託せば、魔法がちゃんと発動してくれる。
 曖昧にではなく具体的に。
 なにをどうしたいかをしっかり定める。
 ただそれだけでよかったのだ。

「とりあえずやってみろって」

「まあ、やるだけならタダだからやってみるけどお」

「あ、じゃあコズエちゃん。木のカップでやってみよう?」

 光太にうながされ、コズエとカエデが自分用に確保した木のカップを取り出す。
 コズエとカエデが選んだカップは、木目がキレイな、取手付きのものだ。
 なるべく目立った汚れのないモノを探して選んだが、お古なだけあって、どうしてもシミやくすみがこびりついている。
 後でユーゴに頼んで浄化をかけてもらうつもりでいたふたりは、それぞれがカップを手に取り、生活魔法を発動させる。

「ぴかぴかの新品みたいにキレイになぁれ」

「まっさらみたいにキレイになれ!」

 望みはわかりやすく手短に。
 言葉にすればよりわかりやすく、雑念も入りにくい。

 ふたりは、手に持ったカップに集中して魔力を動かし--……。

「「できたあ!」」

 手の中のカップが削りたての木の質感を取り戻したのを見て、歓声をあげる。

「え、ウソ。光太スゴイよ!」

「光太くん感謝だよう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おかたづけこびとのミサちゃん

みのる
児童書・童話
とあるお片付けの大好きなこびとさんのお話です。

ヴァンパイアハーフにまもられて

クナリ
児童書・童話
中学二年の凛は、文芸部に所属している。 ある日、夜道を歩いていた凛は、この世ならぬ領域に踏み込んでしまい、化け物に襲われてしまう。 そこを助けてくれたのは、ツクヨミと名乗る少年だった。 ツクヨミに従うカラス、ツクヨミの「妹」だという幽霊、そして凛たちに危害を加えようとする敵の怪異たち。 ある日突然少女が非日常の世界に入り込んだ、ホラーファンタジーです。

とあるぬいぐるみのいきかた

みのる
児童書・童話
どっかで聞いたような(?)ぬいぐるみのあゆみです。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜

うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】 「……襲われてる! 助けなきゃ!」  錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。  人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。 「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」  少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。 「……この手紙、私宛てなの?」  少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。  ――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。  新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。 「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」  見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。 《この小説の見どころ》 ①可愛いらしい登場人物 見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎ ②ほのぼのほんわか世界観 可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。 ③時々スパイスきいてます! ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。 ④魅力ある錬成アイテム 錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。 ◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。 ◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 ◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。 ◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。

少年王と時空の扉

みっち~6画
児童書・童話
エジプト展を訪れた帰り道。エレベーターを抜けると、そこは砂の海。不思議なメダルをめぐる隼斗の冒険は、小学5年のかけがえのない夏の日に。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

処理中です...