ちびっこ怪獣三匹、異世界に降り立つ~異世界転移は課外活動に入りますか?~

ふゆき

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第4章 ちびっこ怪獣三匹、仲間と協力して戦利品を吟味する

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 すっかり汚れの落ちたマントの中から自分にあったモノを探しはじめた女の子たちの背中を見ながら、ユーゴは軽く肩を竦める。

 水は生活魔法でなんとかなる。
 食器も調理道具も手に入った。
 『神の目』があれば、食べられるモノかどうかわかる。
 なんなら、ウエストポーチの鑑定機能を使ってもいい。

 あとは、この周辺に食料となるモノがあるかどうかだが--……。
 トレントを倒してから、小鳥や小動物の姿をちらほら見かけるようになっている。
 探せば果物かなにかは見つかりそうだった。

 ならば、全員が最低でも生活魔法くらいは使いこなせるようになるまで、しっかり練習をした方がいいかもしれない。

 まずはみんなと相談してみないことにははじまらないが、安全を確保しようと思うなら、用心に用心を重ねても足りないくらいだ。
 能力ちからを使えるようになっただけで満足していてはダメなのだ。
 トレントとの戦いだって、ユーゴ以外にも魔法が使える人間がいれば、もっと安全に戦えた。

 トレントは木の魔物だ。火に弱いのは、『神の目』を頼るまでもなくわかったことだ。
 火の魔法を打ち込めば、もっと楽に倒せたとは思う。

 けれど、木が密集した森の中で火の魔法を使う勇気が、ユーゴにはなかった。
 他の木に燃え移ったら。
 仲間の誰かが火であぶられたら。
 トレントにとらわれている光太にまで火が届いてしまったら。

 ユーゴだけでは、どうしようもなかったからだ。

 欲を言うなら、全員が。
 全員が無理なら、せめてもうひとり。
 魔法を使えるようになってくれれば、安全確保が、いまよりずっと楽になる。

 素質だけなら、全員が持っているのだ。
 精霊たちは、はじめの文字の能力ちからを強化するために魔力を求め、魔力があればこの世界では魔法が使える。

 せめて全員が生活魔法をマスターして、魔法を使う基礎を育ててからの方が、なにをするにも安心できる--と。

「わかったぁ! 能力ちからの時と一緒だ。『水が飲みたい』って願えばコップ一杯の水が出るだろ? んで、『手を洗いたい』って願えば、手を洗えるだけの水の玉が出てくんの!」

 ユーゴが今後の方針を考えている横で、光太が空中にいくつもの水球を浮かべ、嬉しそうに手を叩く。

「で、『きれいにしたい』って願えば浄化ができる!」

「え~? さっきからやってっけど、全然うまくいかねえよ?」

 マントはユーゴが全部きれいにしてしまったので、食器や野営道具を練習台にして、せっせと浄化をかけていた金堂が、疑わしそうな目を光太に向ける。
 生活魔法の使い方はわかるのに、何度やっても部分的にしかきれいにならないのだ。
 ちゃんと使えているのに何故か効果はいまいちで、そろそろ生活魔法の練習に飽きてきている金堂である。
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