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第3章 ちびっこ怪獣三匹、仲間と共に|能力《ちから》の検証をする
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いつの間にやらカエデの気配遮断でもって枝や根っこの攻撃をかいくぐってきたコズエが、至近距離から魔力の矢を何本もトレントの本体に叩き込む。
魔力によって作られた矢は、込めた魔力によって威力や射程距離が変わるらしく、小さな矢が、巨大なトレントの本体を着実に削り取っていく。
嫌がるようにトレントが枝や根っこを振り回して抵抗してもどこ吹く風。
コズエは矢を放つとすぐに、カエデの気配遮断の範囲内へと下がってしまう。
まさにヒットアンドアウェイ。
蝶のように舞い、蜂のように刺すというヤツだ。
カエデはカエデで心得たもので、コズエが下がりやすいよう、お互いの距離が離れすぎないよう、とことこコズエの後をついていく。
と、いうか。トレントから隠すかのように、積極的にコズエの存在を消しに行っている。
そうやってふたりがトレントの気を引けば、木本先生がメイスによる打撃を容赦なく連続で叩き込む。
惜しむらくは、どちらも小柄なせいで破壊力が小さいことだろうか。
「すまん。助かった!」
女性陣が活躍している間に金堂に助け起こされた大内先生が、大剣を振りかぶりながら声をあげる。
小回りのきく他のメンバーに比べれば、大柄な上武器も大きい大内先生は、どうしても動きが遅くなる。
だがその分、溜めに溜めた力の爆発力は凄まじいものがある。
小柄な女性陣がトレントを翻弄し、金堂につゆ払いを任せた大内先生が、溜めに溜めた『斬撃』を放てばどうなるか。
「「大内先生、やっちゃえ!」」
大剣を振り抜く動作に入った大内先生に気づいたコズエとカエデが、バックステップで場所を譲る。
あとはもう、怒涛のごとき勢いだった。
大内先生が大剣を振るえば間髪を入れず木本先生がメイスを叩き込んで素早く下がる。
すぐさま、入れ替わるようにして金堂が片手剣で切り込んで行き、カエデとコズエがちまちまと削る。
誰がなにを言うまでもなく、自然と役割分担ができていた。
目まぐるしく立ち位置を入れ替わり、枝や根っこの攻撃は、お互いがお互いをかばって攻撃の合間合間に払い落とす。
トレントが反撃をあきらめて再生に専念しだすほどの勢いで、休むことなく攻め立てる。
だが、あと少し。
どうしても、決定打に欠けていた。
斬り倒せば倒せると教えられていても、トレントの再生能力は衰えることなく自身を再生し続けている。
「コウちゃん、ケースケ。狙いは中央上部のど真ん中。魔石を取り出せば、トレントの再生は止まるみたい」
「あいあい!」
「了解だ!」
このままだと、削っても削っても再生し続けるトレントと、どちらの体力が先に尽きるかの勝負になる。
そんな考えがちらりと五人の頭をかすめた瞬間。
落ち着き払ったユーゴの声がして、一陣の風が五人の間を吹き抜けた。
槍を手に『神速』を発動させた光太と、大盾を構え、トレント目掛けて体当たりを仕掛けたケースケだ。
どうやらユーゴとケースケは、無事に光太を回収できたらしい。
ケースケが体当たりで傾いていたトレントを押し倒すのと同時。
とん、と身軽に地を蹴った光太が、ユーゴの指示した場所を槍で貫き通す。
軽々とこなされた一連の動作が終わるのと、トレントが全身を震わせ、声なき悲鳴をあげたのと、はたしてどちらが早かったのか。
ドォン! と轟音をたてて、トレントが根元からへし折れる。
あれほど苦労させられたトレントだが、戦闘の幕切れは、実にあっけないモノだった。
魔力によって作られた矢は、込めた魔力によって威力や射程距離が変わるらしく、小さな矢が、巨大なトレントの本体を着実に削り取っていく。
嫌がるようにトレントが枝や根っこを振り回して抵抗してもどこ吹く風。
コズエは矢を放つとすぐに、カエデの気配遮断の範囲内へと下がってしまう。
まさにヒットアンドアウェイ。
蝶のように舞い、蜂のように刺すというヤツだ。
カエデはカエデで心得たもので、コズエが下がりやすいよう、お互いの距離が離れすぎないよう、とことこコズエの後をついていく。
と、いうか。トレントから隠すかのように、積極的にコズエの存在を消しに行っている。
そうやってふたりがトレントの気を引けば、木本先生がメイスによる打撃を容赦なく連続で叩き込む。
惜しむらくは、どちらも小柄なせいで破壊力が小さいことだろうか。
「すまん。助かった!」
女性陣が活躍している間に金堂に助け起こされた大内先生が、大剣を振りかぶりながら声をあげる。
小回りのきく他のメンバーに比べれば、大柄な上武器も大きい大内先生は、どうしても動きが遅くなる。
だがその分、溜めに溜めた力の爆発力は凄まじいものがある。
小柄な女性陣がトレントを翻弄し、金堂につゆ払いを任せた大内先生が、溜めに溜めた『斬撃』を放てばどうなるか。
「「大内先生、やっちゃえ!」」
大剣を振り抜く動作に入った大内先生に気づいたコズエとカエデが、バックステップで場所を譲る。
あとはもう、怒涛のごとき勢いだった。
大内先生が大剣を振るえば間髪を入れず木本先生がメイスを叩き込んで素早く下がる。
すぐさま、入れ替わるようにして金堂が片手剣で切り込んで行き、カエデとコズエがちまちまと削る。
誰がなにを言うまでもなく、自然と役割分担ができていた。
目まぐるしく立ち位置を入れ替わり、枝や根っこの攻撃は、お互いがお互いをかばって攻撃の合間合間に払い落とす。
トレントが反撃をあきらめて再生に専念しだすほどの勢いで、休むことなく攻め立てる。
だが、あと少し。
どうしても、決定打に欠けていた。
斬り倒せば倒せると教えられていても、トレントの再生能力は衰えることなく自身を再生し続けている。
「コウちゃん、ケースケ。狙いは中央上部のど真ん中。魔石を取り出せば、トレントの再生は止まるみたい」
「あいあい!」
「了解だ!」
このままだと、削っても削っても再生し続けるトレントと、どちらの体力が先に尽きるかの勝負になる。
そんな考えがちらりと五人の頭をかすめた瞬間。
落ち着き払ったユーゴの声がして、一陣の風が五人の間を吹き抜けた。
槍を手に『神速』を発動させた光太と、大盾を構え、トレント目掛けて体当たりを仕掛けたケースケだ。
どうやらユーゴとケースケは、無事に光太を回収できたらしい。
ケースケが体当たりで傾いていたトレントを押し倒すのと同時。
とん、と身軽に地を蹴った光太が、ユーゴの指示した場所を槍で貫き通す。
軽々とこなされた一連の動作が終わるのと、トレントが全身を震わせ、声なき悲鳴をあげたのと、はたしてどちらが早かったのか。
ドォン! と轟音をたてて、トレントが根元からへし折れる。
あれほど苦労させられたトレントだが、戦闘の幕切れは、実にあっけないモノだった。
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