ちびっこ怪獣三匹、異世界に降り立つ~異世界転移は課外活動に入りますか?~

ふゆき

文字の大きさ
上 下
41 / 60
第3章 ちびっこ怪獣三匹、仲間と共に|能力《ちから》の検証をする

10

しおりを挟む
 いくつかの枝や根っこが、カエデの手を逃れてユーゴに向かう。
 しかしながらカエデは、慌てることなく手の届く範囲のモノを、着実に切り落とすことに集中する。

 だって、コズエが手伝ってくれると言ったのだ。
 コズエは、一度やると口に出したことは、必ずやりとげてみせる。
 そのコズエが手伝うと言ってくれたなら、カエデはいま自分にできることを、精一杯やるだけでいい。
 いつもと同じ。
 カエデひとりで無理ならコズエが。コズエがひとりで無理ならカエデが。
 お互いがお互いのフォローをすれば、どんなことだってやりきれる。

 それに--。

「カエデちゃん、もっとこっちへくれてもいいよ!」

 気配を薄めて動き回るカエデを器用に避けてコズエの放った矢が、トレントの枝や根っこを次から次へと粉砕している。
 カエデが無理をする必要なんて、どこにもない。

「ありがとう、コズエちゃん!」

 的確なフォローをしてくれるコズエを信じ、カエデはユーゴたちの背中を守ることに集中する。
 コズエの放った矢が、間違えて自分に刺さるかも、なんて考えない。
 コズエがカエデを傷付けるような真似をするはずがないし、能力ちからを自分のモノにしたいまならわかる。
 精霊のくれた能力ちからとは、そういうモノだ。
 最初の文字の能力ちからには、絶対的な行使力がある。
 コズエの腕前を心配するひまがあるなら、一本でも多くの枝や根っこを切り落とす方がいいに決まってる。

 光太の側で様子を確めているユーゴは、光太に意識を向けている分、どうしたって死角ができる。
 ユーゴの指示に従って、光太を助けようとしゃがんでいるケースケもだ。

 トレント本体への攻撃は木本先生と大内先生が、光太の近くの空間を守るのは金堂が担当するなら。
 カエデとコズエの役目は、そんなみんなを絡めとろうと攻撃してくる枝や根っこを打ち払うことだろう。

「お互い、無理はなしだよ!」

 そう言って、コズエは無造作に矢を放つ。
 コズエの武器は短弓だ。
 他のみんなのように敵に近づかなくても、離れた場所から攻撃ができる。
 気配探知で周囲を把握しながら、コズエは慎重に、けれど素早く矢を放つ。

 コズエの能力ちからは『必中』。
 目標としたものに、必ず命中させられる能力ちからだ。
 急所を狙えば急所に当たり、どんな小さな的でも、狙い定めれば撃ち抜ける。
 動きまくっている的だって、狙って撃てば必ず当たる。

 そんなコズエに与えられた武器が、短弓。
 しかも、魔力を矢に変えて放つ魔弓だ。
 最初の文字の精霊は、撃っても撃ってもなくならない矢をと望んでたくさんの魔力を集めていたらしく、コズエの魔力は豊富にある。
 カエデが無理をしなくとも、コズエと力を合わせれば、じゅうぶんみんなの死角をフォローできた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

こちら御神楽学園心霊部!

緒方あきら
児童書・童話
取りつかれ体質の主人公、月城灯里が霊に憑かれた事を切っ掛けに心霊部に入部する。そこに数々の心霊体験が舞い込んでくる。事件を解決するごとに部員との絆は深まっていく。けれど、彼らにやってくる心霊事件は身の毛がよだつ恐ろしいものばかりで――。 灯里は取りつかれ体質で、事あるごとに幽霊に取りつかれる。 それがきっかけで学校の心霊部に入部する事になったが、いくつもの事件がやってきて――。 。 部屋に異音がなり、主人公を怯えさせる【トッテさん】。 前世から続く呪いにより死に導かれる生徒を救うが、彼にあげたお札は一週間でボロボロになってしまう【前世の名前】。 通ってはいけない道を通り、自分の影を失い、荒れた祠を修復し祈りを捧げて解決を試みる【竹林の道】。 どこまでもついて来る影が、家まで辿り着いたと安心した主人公の耳元に突然囁きかけてさっていく【楽しかった?】。 封印されていたものを解き放つと、それは江戸時代に封じられた幽霊。彼は門吉と名乗り主人公たちは土地神にするべく扱う【首無し地蔵】。 決して話してはいけない怪談を話してしまい、クラスメイトの背中に危険な影が現れ、咄嗟にこの話は嘘だったと弁明し霊を払う【嘘つき先生】。 事故死してさ迷う亡霊と出くわしてしまう。気付かぬふりをしてやり過ごすがすれ違い様に「見えてるくせに」と囁かれ襲われる【交差点】。 ひたすら振返らせようとする霊、駅まで着いたがトンネルを走る窓が鏡のようになり憑りついた霊の禍々しい姿を見る事になる【うしろ】。 都市伝説の噂を元に、エレベーターで消えてしまった生徒。記憶からさえもその存在を消す神隠し。心霊部は総出で生徒の救出を行った【異世界エレベーター】。 延々と名前を問う不気味な声【名前】。 10の怪異譚からなる心霊ホラー。心霊部の活躍は続いていく。 

【完結】知られてはいけない

ひなこ
児童書・童話
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。 他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。 登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。 勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。 一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか? 心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。 <第2回きずな児童書大賞にて奨励賞を受賞しました>

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

氷鬼司のあやかし退治

桜桃-サクランボ-
児童書・童話
 日々、あやかしに追いかけられてしまう女子中学生、神崎詩織(かんざきしおり)。  氷鬼家の跡取りであり、天才と周りが認めているほどの実力がある男子中学生の氷鬼司(ひょうきつかさ)は、まだ、詩織が小さかった頃、あやかしに追いかけられていた時、顔に狐の面をつけ助けた。  これからは僕が君を守るよと、その時に約束する。  二人は一年くらいで別れることになってしまったが、二人が中学生になり再開。だが、詩織は自身を助けてくれた男の子が司とは知らない。  それでも、司はあやかしに追いかけられ続けている詩織を守る。  そんな時、カラス天狗が現れ、二人は命の危険にさらされてしまった。  狐面を付けた司を見た詩織は、過去の男の子の面影と重なる。  過去の約束は、二人をつなぎ止める素敵な約束。この約束が果たされた時、二人の想いはきっとつながる。  一人ぼっちだった詩織と、他人に興味なく冷たいと言われている司が繰り広げる、和風現代ファンタジーここに開幕!!

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

処理中です...