上 下
40 / 60
第3章 ちびっこ怪獣三匹、仲間と共に|能力《ちから》の検証をする

9

しおりを挟む
 光太は、槍を構えたまま、巨木の中に突っ込んでいる。
 その体勢のまま巨木の再生に巻き込まれたのなら、もう一度『神速』を発動できれば、巨木を貫くことも不可能ではないはずだ。

 なにせ、先ほどの突撃で、光太は巨木を半ばへし折ってしまっている。
 突っ込んだのが普通の巨木であれば、光太は勢いのまま突き抜け、地面に転がっていたはずである。
 いまはトレントの枝や根っこによる再生に巻き込まれて身動きが取れなくなっているが、『神速』を発動できるなら。
 その勢いで、再度巨木をへし折ることも難しくはないだろう。

 ほんの少しの、考えるような間の後。バタバタと、光太の右足が激しく動く。
 足場さえしっかりしていればなんとかなる。
 たぶんおそらく、そんな意思表示だ。

「ケースケ、いける?」

「おうとも。誰か、場所を変わってくれ!」

「任せろ! おんなじ盾と武器の両手持ちだ。オレが変わる!!」

 盾で弾いて斧で粉砕するケースケの動きを真似て、腕につけるタイプの丸盾で防ぎつつ片手剣で切り落としていた金堂が、するりと場所を入れ替わる。

 金堂の最初の文字の能力ちからは『直感』だった。
 感覚によって物事を捉える能力ちから
 危険を感じ取る危険察知がいち早く発動したのは、金堂が無意識下で危険を感じ取ろうとしていたからだ。

 危険を察知するとはすなわち、敵の攻撃が次にどうくるかが、なんとなくわかるということでもある。

 恵まれた体格と能力ちからに裏付けされたケースケの働きと、『直感』に基づいて危険を回避する金堂の働きは、ほぼほぼ同じ。
 みんなの協力を得てケースケが作り出した空間を、金堂は危なげなく保ってみせた。

「金堂くんが抜けた場所にはワタシが行くね!」

「ならアタシも手伝う!」

 金堂が抜けてユーゴへの攻撃が通りだしたのを見て、カエデとコズエが前へと躍り出る。

 カエデの最初の文字の能力ちからは『しのぶ』。
 動きを目立たなくしたり、隠れたり、人目を避けたり、気配を消したりできる能力ちからだ。

 全員を対象とした気配遮断が先もって発動したのは、カエデが『怖いモノに見つからなければいいのに』と願ったから。
 だが本来は、自らの気配を消し、人目を避けて動ける能力ちからだ。

 自らの意思でスゥッと気配を消してトレントから存在を隠したカエデは、両手に持った短剣で、スパスパとうごめく枝や根っこを切り落としてゆく。
 しかしながら体力的な限界か。はたまたその能力ちからの特質なのか。
 カエデの動きは男の子たちに比べるとずいぶんと遅い。
 金堂のように、ユーゴの死角となる枝や根っこの全てを切り落とすまでには至らなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

誤字脱字作文

天才けんぽん
児童書・童話
まつがい文章です。創造しながら呼んでください

|共同住宅《アパート》『フェアリーゴッドマザーハウス』の不可思議な日常茶飯事

ふゆき
児童書・童話
 今年、小学六年生になったばかりの|金山《かなやま》|廉太郎《れんたろう》は、|共同住宅《アパート》『フェアリーゴッドマザーハウス』の一室で、ひとり暮らしをしている。  廉太郎が学校へ行っている間に大家さんが|掃除《そうじ》や|洗濯《せんたく》をしてくれたり、食堂があって食事付きだったりするけれど。  同じ|共同住宅《アパート》に|親戚《しんせき》のオジサンが住んでいたりもするけれど。  夜、ひとりで寝ているからぎりぎりひとり暮らしだ。  去年の夏休みが終わる少し前、廉太郎は両親が離婚したことで行き先をなくし、オジサンに引き取られてこの|共同住宅《アパート》へ引っ越してきた。  とんがり屋根の塔と、レンガの壁。|装飾《そうしょく》の|施《ほどこ》された白い窓枠と玄関ポーチのある、おしゃれで素敵な|共同住宅《アパート》へと。  そして、廉太郎の不可思議で騒々しい、新たな日常が幕をあけるーー……。

妖精の約束

鹿野 秋乃
児童書・童話
 冬の夜。眠れない少年に母が語り聞かせた物語は、妖精の郷を救った王子の冒険だった。昔どこかで誰かに聞いたかもしれないおとぎ話。図書館の隅で読んだかも知れない童話。大人になって、ふと思い出す。そんな懐かしい、お菓子のようなお話。

シロとクロのはなし

ぽんちゃん
児童書・童話
お母さん猫とはぐれてしまったシロとクロ。2人はある地域のボス猫、トラさんに拾われる。 コレは半分ホントで、半分ウソのお話し。

【小説版】怪獣の人~かいじゅうのひと~

TEKKON
児童書・童話
「朝、起きたら男は怪獣になっていた…!」 男は一体どうなってしまうのか?お気軽にお楽しみください。 ※ こちらは同タイトルのノベルゲームで   一番評判の良いシナリオを多少修正して   小説版にしております。    興味持たれた人はノベルゲームコレクションへ! 「怪獣の人」 https://novelgame.jp/games/show/4948 総選択肢:5、エンディング数:5 総文字数:約13000字 最長シナリオ:約8500字 最短シナリオ:約3000字

「私は○○です」?!

咲駆良
児童書・童話
マイペースながらも、仕事はきっちりやって曲がったことは大の苦手な主人公。 一方、主人公の親友は周りの人間を纏めるしっかり者。 偶々、そんな主人公が遭遇しちゃった異世界って?! そして、親友はどうなっちゃうの?! これは、ペガサスが神獣の一種とされる異世界で、主人公が様々な困難を乗り越えていこうとする(だろう)物語です。 ※まだ書き始めですが、最後は「○○○だった主人公?!」みたいなハッピーエンドにしたいと考えています。 ※都合によりゆっくり更新になってしまうかもしれませんが、これからどうぞよろしくお願いいたします。

メシマズ勇者の給食係

yolu
児童書・童話
中学一年生・拓人(たくと)は、祖母と二人暮らしをしていた。 日々の生活はほぼ拓人がこなし、特に得意な家事は料理。一度見たレシピは忘れないのが、拓人の特技でもある。 そんな生活のなか、祖母が急逝してしまう。 失意のどん底で、雨の道路を踏み外し、トラックにはねられたと思ったが、目覚めた場所は、なんと異世界! ──拓人の料理が救うのは、仲間と、……異世界も!?

まほう使いの家事手伝い

トド
児童書・童話
十才の女の子であるアミィには、将来、おヨメさんになりたいと思う人がいる。 けれどそれは、アゼルと言う名前のとても情けない男の人。 アゼルは今日もお仕事をしては、そこの店主のおばあさんにしかられてばかり。 ……ですが、アゼルには秘密があったのです。 ※可能な限り、毎朝7時に更新する予定です。

処理中です...