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第3章 ちびっこ怪獣三匹、仲間と共に|能力《ちから》の検証をする

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「後藤くん、手伝うわ!」

 ユーゴの助言を受け、すぐさま能力ちからを自分のモノにしてのけた木本先生が、鎚矛つちほこを構え、ケースケの横に滑り込む。
 鎚矛--メイスは殴打武器だ。

「どっせぇえいッ!」

 木本先生は、乙女らしからぬ掛け声とともにメイスを振り抜き、光太を絡めとろうとしている枝や根っこを次から次へと粉砕していく。
 負けじとケースケも斧をふるい、ユーゴもまた、杖--魔杖というらしい--を使い、自分たちをも絡めとろうと伸びてくる枝や根っこを打ち払う。

「悠悟のお陰で能力ちからの使い方はバッチリだ。オレも手伝うぜ!」

「ワタシも手伝う~」

「アタシもッ」

「先生もだ」

 そうして、残りのメンバーが、それぞれの武器を手に少し遅れて駆けつけてくれば、あっという間に光太を絡めとっていた枝や根っこが取り除かれてゆく。

「ユーゴ!」

 光太のすぐ側まで近づけるだけの空間を確保したケースケが、短く叫ぶ。

「わかってる! コウちゃん、聞こえる? 聞こえてたら、いったん暴れるのを止めて、じっとして!」

 光太の周囲からうごめく触手めいた枝や根っこを遠ざけられても、肝心の光太は、がっちりと巨木の幹にはまってしまっている状態だ。
 槍で突き抜いた際に周囲を吹き飛ばしてできた大穴にはまっているのだから、光太の周りには多少の空間があってもよさそうなものなのにそれがない。
 つまり、枝や根っこで固く編み上げられたように見える幹もまた、じわりじわりとうごめいて、光太を取り込もうとしているということだ。
 光太がじたばたともがいているのも、だんだんと自分の周りの空間がなくなってきているせいもあるのだろう。

「いい? 一回しか言わないからよく聞いて。『神の眼』とかいう能力ちからによると、コウちゃんが突っ込んだのは、木に化けてたトレントらしい。切り倒せばやっつけられるみたいだけど、コウちゃんがはさまってるとちょっと危ないんだよね。たがら先にコウちゃんを出したいんだ」

 ぴたり、ともがくのを止めた光太に向けて、ユーゴはやや早口で話しかける。
 ケースケの斧をはじめ、金堂の片手剣、大内先生の大剣など、木を切り倒す道具ならばある。
 だが、光太がはさまったままでは、下手をすれば切り倒した巨木の重みで光太を押し潰してしまいかねない。

「たぶん、ちょっと足が浮いてて地面が蹴れないせいでうまく能力ちからを使えないんでしょ? ケースケの盾を足場にして押し上げてもらうから、コウちゃんは『神速』でおもいっきり前に踏み出して。できる? できそうなら、右足だけ動かして。無理そうなら左足」
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